アルテミス(アテネ)と運命を司るニケ


月。狩猟の女神アルテミスは、月の女神。月光。アルテミスは、太陽神アポロンの双子の妹。

太陽。アポロンは詩歌 音楽 予言 弓術 医術を司る。太陽神と同一視されたのは後世。
前5世紀頃から太陽神ヘリオスと同一視。
デルフォイの神殿で与えられる神託は、古代ギリシアの人々の生き方を、ユダヤ人やイスラム教徒にとっての聖書のように左右した。

全能の天空神 ゼウスと、オリュンポス12神より一世代古い神であるティタニス(巨人族の6女神の一柱)のレトの息子と娘は、ゼウスの正妻ヘラの嫉妬によって出産する場所を見つけられず、世界中を彷徨った挙げ句、地中海にある小さな浮島だったデロス島に辿り着き、9日9夜の陣痛に耐えて双生児として生まれた。
デロス島は出産場所を提供した功績によって、海底に繋がれ、デルフォイに比肩するアポロン崇拝の聖地とされるようになったと言う。
※???
(ひょっこりひょうたん島だったってこと?)

アポロンは、常に昼が続き夜になることのない極北で暮らすヒュペルボレオイ人(Hyperboreoi)の国へ行き1年間の逗留後にデルフォイで大地神ガイアの神託を守護する悪竜ピュトン(ガイアの子供)を、母親のレトに仇為した者として退治し、神憑りする巫女ピュティアの口から告げられる神託を自分だけのものとした。
絶世の美男子とされ、弓矢と竪琴を携え、予言とともに音楽 医術 牧畜なども司り、病の矢を放ち、人や家畜を殺す疫病神としての一面も示す。神アポロンの子供を妊娠した後、人であるイスキュスと結婚したコロニスに、死を与えてから悔いたアポロンは、コロニスの裏切りを告げてきた烏の羽根を黒に染め、コロニスの遺体から赤子を取り出して半人半馬のケンタウロス族の賢者である不死者のケイロンに預けて養育させて、医聖アスクレピオスとした。

ローマのアポロは、ギリシアから移入した神。

紀元前後に実在したティアナのアポロニオスの名前は太陽神アポロンに由来している。

気になるのは、ゼウスとレトの浮島での出産。
自凝島で国産みした伊邪那岐伊邪那美のよう。
「高天原(たかまがはら)」を、アフリカやユーラシアを含んだ大陸のことだとするなら、日本列島へと続く「天の浮き橋(あまのうきはし)」は、山東半島や遼東半島、朝鮮半島やと言った半島や樺太島が橋頭堡と言えるだろうけれど、その場合には、壱岐島と対馬とが「自凝島(おのころじま)」に立てた「天御柱(あまのみはしら)」と言うことになるだろうか?

ゼウスは正妻のヘラから逃れるようにして美女の元に身を運び、ゼウスから恩寵を受けた美女たちもヘラから逃れるようにして子供を産む。
まるで、二つの柱の間で戯れるかのように。
昔、地中海と外洋(大西洋)の出入り口には、英雄ヘラクレスが近道をする為に立てたと言う2本の柱「ヘラクレスの柱」があったとされる。
柱を立てたのは英雄ヘラクレス。12の功業を成し遂げる為の近道として、アトラス山(元の巨人アトラス)をヨーロッパ側から地中海側へと砕き落とし、西の果てにあると言う海中の島へ渡りやすくしたと言う。
それによってジブラルタル海峡が形成された。
(北岸はイギリス軍、南岸はスペイン軍が駐屯し、海底トンネルの開削計画が進行している)
現在のアトラス山脈はアフリカ大陸にある。

同じ向きで回り続けるヘラは、結婚生活を守護する女神とされるが、アレス(戦争の神 マルス) ヘファイストス(火と鍛冶 発明の神 足に障害を持ち外見は醜い 美の女神アフロディテの夫) へべ(青春の女神 神酒ネクタルの元給仕役 ヘラクレスの神妻 ローマでは青年の守護女神ユウェンタスと同一視され元服の儀を執り行う) エイレイテュイア(ヘラやアルテミス ユノやルキナと同一視される)の母親。
天空神ゼウスの妻であるが、太陽に留まらない普遍の存在者ゼウスに対して、月経や月光 誕生や出産の女神とされる。
※ルキナはディアナを添え名とする

同じ向きでは、子供を産めず、産めたとしても性質に偏重のある者や障害者 あるいは遺伝的形質の濃い者が生まれている。

双子である筈のアポロンやアルテミスの物語に悲恋が多いのは、二人が共に自らの神格に縛られて強制的に異性装的な成り代わりを務めなければならない現状を承けてのことではないか?

月は、太陽の光を受けて輝く。
先にある筈の、言ってしまえば真実の光は、太陽の光であって、月光は後から来る眩惑の光。

運命を司る女神 ニケは、アルテミスよりも先に行くが、それは太陽の光ではなく、月の光。

月の本体である星という実体がアルテミスで、
神託を手に入れたアポロンは、実体に加えて、印象としての総体をも自らのものとしようと努めるが、運命の女神であるニケは、後ろ髪を引かれても留まることを知らず走り続けて、長い前髪に隠された顔を見せることは決してない。

まるで、無数の蛇を頭に戴くメドューサの顔にあった見る者を石に変えた輝く瞳のように。
英雄ペルセウスによって殺害されたポセイドンの妃メドューサの瞳(宝石)の一つは、アテネの山羊皮の盾「イージス」の中央に嵌め込まれ、もう一つはゼウスに捧げられたと言う。
殺害された時に妊婦であった彼女からは、クリュサオル(黄金の剣)と天馬ペガサスが生じた。
この話は、古代ギリシア人以前の先住者の供物を伴う祭祀の姿を伝えたものと思われる。
頭髪は蛇(髪の毛を編み込む習慣)で、翼(盥舟)と真鍮の爪(磯鐫)を持つゴルゴン(海女)。
三姉妹の美しい末娘は海神ポセイドンの妃だが定命で、2人の姉は醜いが不死者だと言う。
何か、宗像三女神を思わせる話。
恐らくは、乙女を捧げる古代祭祀を、移住者の古代ギリシア人が忌避して、天空神ゼウスと処女女神アテネの祭祀を強要したことで、騒動が起こったものと思われる。
ゼウスに捧げる黄金の剣とアテネに捧げる駿馬を新たな供物とさせたのだろう。
怒った先住者がアテネ神殿(機織小屋)に潜んで強姦に及び、屋根を破壊、馬の死骸を置く。
そうすることで、天罰と言う総意を伝えた。

英雄譚はすべて同様の話に思われる。
例えばアラクネ(アルケニー)の話は機織の女神アテネ(ギリシア女性)と、先住民の女性間での競い合いの結果、織機や織物だけでなく織り手の娘も、手足に障害が残るほどの手酷い集団的暴行を受け、蜘蛛のような四つん這いでしか動けないような仕打ちを受けたのかも知れない。

要するに、ニケ(運命の女神)は「首」なのだ。
「道」と言う漢字の字源は、敵地において、敵の大将首を手に掲げて前を空けさせる行為から来ている。
古代人は、胴体と首とが切り離されると転生出来ないので、繋ぎ合わせて復活の儀式を挙げる為に、隠された胴体の場所を聞き出す迄は礼を尽くさなければならなかった。

だからこそ、巨人族との戦い(ティタノマキア)では、ゼウスの戦車の馭者を務め、ローマ神話でも太陽神マルス(アレス)の馭者を務める。
アルテミスの随神なのも、同じ理由なのだ。
アルテミスこそが、太陽神アポロンであり、その威光の象徴である太陽光や月光、そして予言を伝える神託の正体は、キツツキであるところの運命の女神ニケ。そう言うことになる。

他に、古朝鮮の建国神話に重なるものとして、ローマ建国者のレムルスとレムスの兄弟の母親レア・シルウィア(ウェスタの巫女)やアイネイアスの伝説が知られる。

個人的には、アイネイアス(トロイア王家の傍系)の話の、都市ラウィニウム建設に出てくるエトルリアには、興味がある。

兎に角として、ギリシア・ロー神話は、日本の建国神話にも一枚噛んでいる。

ローマ建国神話中の「鳥占」なんて、「鷽替神事」そのものじゃないだろうか?

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 参照
Wikipedia
カシオ電子辞書