インドの貨物回廊の最新情報についてお伝えします。よろしければ前回の方もぜひご覧ください。
最終的に6路線が計画されている貨物回廊ですが、現在、東回廊と西回廊の建設が進められています。今回はこの両路線についてみていきたいと思います。
<東回廊>
東回廊はデリーの北パンジャブ州の工業都市ルディアナからデリーの郊外を通って進行方向を東に向けて、聖地バラナシを経てコルカタに至る約1900㎞にわたるルートです。
首都圏と最大人口を有するUP州を横断して東部最大都市で港町のコルカタを結ぶ重要路線です。また途中駅で後述のムンバイへ至る西部回廊と接続します。
この区間は在来線に並行して複々線を作るような感じで建設が進められています。
↓は筆者がデリー発バラナシ行の列車から撮影したものです。奥の複線が建設中の回廊で、まだ架線が張られていませんでした。
現在、途中のBhaupur – Khurja間、およそ350㎞で暫定的に開業しており、貨物列車が運行されています。
ちょっと見づらい図ですが、首都デリーの郊外から南東に降りたカンプールという都市の郊外まで結ばれています。
中途半端感が否めませんが、電化方式もレール幅も在来線と同じなので、部分開業であっても在来線と直通して活用することが出来ます。
全線開業は2022年の予定で、完成するとコルカタ東部最大の都市コルカタの路線で客貨分離による輸送力増強と、設備が古く大型コンテナ船が入港できないコルカタ港の整備が進めば、鉄道とリンクした輸送品質の改善が期待されています。
<西回廊>
首都デリーと西部最大の都市であり、インド最大の国際的貿易港のムンバイを結ぶもので、都市間の物流のみならず、海運貨物の内陸部への輸送という使命も負っています。
この区間の特徴は、海上コンテナを2段積みにして輸送することが出来ることです。2段積みのコンテナ車はアメリカでは30年ほど前から行われていますが、いずれもディーゼル機関車によるもので、電化鉄道としては初めてです。
↓の記事にあるように、先日、全行程1500㎞のうち300㎞ほどが部分開通しました。部分開業の始発駅レワリは、デリーから70㎞ほど郊外で、日本企業の工業団地があるニムラナ、バワルへも比較的近い場所にあります。
部分開業のために港までつながってないので、2段積みをフル活用することは無いでしょうが、2023年の全線開業の暁には、消費財の輸出入や工業団地で使う原材料など多くのデリー首都圏とムンバイ港との物流が鉄道にシフトする見込みです。
なお、記事にあるように、線路敷設や信号システムで日本企業が参加しています。
<貨物専用鉄道への期待>
東回廊1900㎞、西回廊1500㎞といえば、日本で言うとそれぞれ、札幌-大阪間、札幌-北九州間の距離になります。現状では輸送力不足の鉄道とトラック輸送が主流のこの区間で、鉄道貨物の輸送力増強・スピードアップが行われることで、以下のようなことが期待されます。
・輸送コスト低下
貨物量のキャパシティが増えることで、単位輸送当りのコスト低下が期待されます。
・定時性の改善
現状は在来線を何度となく急行列車に抜かれ、いつ目的地に着くかわからない貨物列車ですが、専用線を走ることでスピードアップと到着時間が読めるようになることが期待されます。
・海上輸送との連携
港のそばまで線路を通すことにより、海上輸送のコンテナがそのまま内陸まで輸送できます。既に、内陸部の税関で通関を行う保税輸送も行われてますが、輸送力増強でスムーズに行われるようになると期待されています。
・ドライバー不足対策
日本列島を縦断するくらいの距離だと、トラックドライバーも2人交代で片道2-4日となります。毎日運行の定期便であれば多くのトラックとドライバーを確保する必要があります。
人口の若いインドとはいえ、長期間家に帰れない、休みが不規則なドライバーの仕事は敬遠されています。長距離輸送の鉄道シフトはドライバー不足対策にもなります。
一方、まだ詳細は出ていないですが、現場サイドからは以下のような施策がとられるとさらに使いやすくなると思います。
・貨物列車ダイヤの策定
現状は貨物が集まったら出発するという、ダイヤの無い状態ですが、キチンと貨物列車のダイヤを作り、列車毎に何時に出発、何時に到着という時刻表を作ると、利用者にとって定時性・速達性のアピールが出来ると思われます。
・途中駅での荷役
起点・終点の間だけでなく、途中の貨物駅で荷積み・荷下ろしを容易にできるようにしてほしい。日本のJR貨物が行っている専用コンテナによる着発荷役線方式など工夫が必要だと思われます。
一気にコンテナ化は難しいにしても、何かしら途中駅での利便性向上策を考えて欲しい。
いずれにせよ、国家的プロジェクトの貨物専用線(貨物回廊)計画、予定通り建設が進み、早期の開通を願っています。