南インドの主要都市、チェンナイ、バンガロール、そしてマイソールに至る高速鉄道の入札が始まると言うニュースがでました。
今日はこの区間の高速鉄道(新幹線)について考えてみたいと思います。
記事にあるNational High-Speed Rail Corporation Limited (NHSRCL)とは、インド政府主導で高速鉄道、すなわち新幹線を建設する事業主体です。現在、日本のODAによる技術・資金協力により北西部のムンバイ-アーメダバード間で新幹線をベースにした高速鉄道を建設中です。2年前、当時の安倍総理が起工式に参加したニュースは日本でも流れました。
インド政府は次期高速鉄道建設候補地に南インドも含まれています。ここで、各都市についてみてみましょう。(詳しい場所は↓の地図をご覧ください)
<沿線都市の概要>
チェンナイ:都市圏人口867万人、インド東側の海の玄関口であり、東・東南アジア、北米西海岸からの航路が到着します。工業都市でもあり、自動車、二輪車、家電、スマートフォンなどの工場があります。
バンガロール:都市圏人口1016万人、高原地帯にあって一年中気候が快適でインドの軽井沢ともいわれる場所です。インフォシス、ウィプロなどインド大手IT企業の本社があるほか、中国から移管されてきたiPhone工場もあり、研究開発・生産の両面でインドIT産業の拠点であり、また郊外にトヨタの工場もあります。
バンガロール駅(著者撮影)
マイソール:かつてインド中南部で隆盛を極めたマイソール藩王国の中心都市で、マイソールパレスは南インド観光の重要スポットである。製造業誘致にも積極的で、二輪車、商用車など自動車関連が多いです。
<この区間の交通状況>
観光地マイソールはともかく、チェンナイとバンガロールは南インドの代表的な都市であり、この区間は旅客・貨物とも流動が多いです。
旅客輸送では
航空便が15-20往復程度(コロナ前はこれ以上)
バスが無数
鉄道5往復(コロナ前は15往復程度)
また、チェンナイ港で荷下ろしした海上コンテナを1日1~2本の貨物列車で内陸のバンガロールに輸送しています。
この区間の距離は350km程度、飛行機は45分で結ぶが両空港とも市内から遠く、とくにバンガロールは鉄道など軌道交通がなく、バスかタクシーで市内まで1時間を要します。
バスは6時間半~8時間、在来線急行は6時間前後となっている。新幹線が出来れば、東京名古屋間と同じなので1時間半程度で結ばれます。
<高速鉄道(新幹線)建設の効果>
1 鉄道の高速化とシェア上昇
この区間は飛行機の高速性を活かせる距離ではないが、在来線・バスでは半日潰れてしまう距離だ。しかし新幹線が出来ればこの区間の航空便のシェアは一気に鉄道にシフトすると思われる。これによりCO2の削減、チェンナイ、バンガロール両空港の混雑緩和に寄与するでしょう。
2 輸送力増強
現状の在来線は一応複線電化されているものの、急行列車と貨物列車が多く、沿線の地域輸送やバンガロール近郊の都市圏輸送ではほとんど機能していない。チェンナイ側は途中まで線路別複々線(複線が2線ならんで4本の線路がある)になっており、通勤電車用の線路では近距離電車が走っています。
高速鉄道が開通することで、貨物輸送の増加や地域輸送への鉄道の活用も見込まれます。
3 地域発展
港湾、工業都市チェンナイ、IT・学術都市バンガロール、新興工業地帯そして古都で観光資源の多いマイソール、このそれぞれ個性の異なる3か所が高速鉄道という太い線で結ばれることは、南インドの発展にも寄与するものと思われます。
インドというと首都デリーや金融都市ムンバイなど有名な都市に目が行きがちですが、南インドも産業の発展と多くの人口を抱える都市があり、高速鉄道など交通インフラの充実が望まれていると思います。