前回、インド国鉄の貨物列車は、スピードアップよりも定時性、というより、まず貨物列車もきちんとしたダイヤで走ることから始めるべき。と書きましたが、そんなインドでも少しづつ荷主のニーズを考えた高速かつ定時性の高い輸送を行うべくチャレンジが始まっています。

 

そのうちの1つ、Roadrailer という列車が首都デリーと南部チェンナイの間で運行されています。

これは、インドの財閥の一つであるKirloskar グループと南インド鉄道(国鉄の南インド管理局)が共同で始めたもので、写真の様に専用のトレーラーの荷台をそのまま貨車に乗せ、終点ではトレーラーのヘッド(けん引する車)につなげてそのままお届け先へ向かうことが出来るというものです。

 

↓は日本の貨物列車の主流であるコンテナ輸送ですが、このコンテナは貨車からトラックへ容易に乗せ換えることが出来るため、貨物の出荷元に空コンテナを積んだトラックが向かい、荷物を入れる→貨物駅へコンテナを輸送→鉄道輸送→着駅からコンテナごと客先へ、というドアツードアの輸送が可能です。

貨物列車の途中駅でコンテナを下ろすときも、列車が貨物駅に止まっている間にフォークリフトで降ろすことが出来ます。

 

インドの貨物列車は、↓の写真のように貨車に直接荷物を積み込む形になっています。これだと、貨物駅でこの貨車に荷物を載せる必要があり、さらに途中駅で一部の貨物を下ろすのも時間がかかる。さらに、行先が違う貨車を連結して途中駅で切り離しなどということもやっており、所要時間がとてもかかるうえ到着日時が読めないというデメリットがあります。

そのため、インドではいつ届くかわからない鉄道より自動車輸送の方が遥かに信頼度が高くなっています。

 

 

インドにもコンテナ輸送はあるのですが、日本の様に鉄道会社(JR貨物)が主導してコンテナ化を進めるのではなく、一部運送会社が自前でコンテナを使い専用列車を走らせているという状態で、あまり普及しているとはいいがたい状況です。

 

ロードレイラーはそうした背景の中で生まれたもので、インド主要財閥系企業がインド国鉄と組んで専用貨車を編成し、デリー・チェンナイ間(2200㎞)でコンテナ輸送に負けない定時性・速達性を売りにしているということです。

運行開始から2年経ち、首都近郊の工業団地で専用トレーラーを見かけることもありますが、残念ながら本数が増えたり他路線への進出という動きはありません。

 

 

 

ロードレイラーの挑戦はインドの鉄道貨物輸送を改善を促すためにとても貴重で重要なものであったと思います。

しかし、一方で本数や路線が拡大しないところを見ると、やはり構造的な問題、すなわち圧倒的な輸送力不足、速度差の大きい旅客と貨物など、インフラ面での制限はそう簡単に変わるものではないと思われます。

 

広い国土に長大な路線網を持つインド、一気に変わることは難しいです。現在、貨物専用線の建設が進んでいますが、同時に出来るところから改善していく取り組みにも注目していきたいと思います。