UP(ウッタ・プラデッシュ州)第2の都市、カンプール(Kanpur)のメトロ建設にあたり、第三軌条方式を使うべきかとの議論が出ています。

 

 

  鉄道の集電方式

通常、電車は線路の上に電線(架線)があり、そこからパンタグラフというパーツで電気を取り、モーターを回して走ります。これを架空電車線と言います。

写真の様に電車の上に電線があり、パンタグラフというパーツを電線に当てて集電します。

この架空電車線方式は

メリット

・多くの鉄道で使われている標準的なシステムで、既存鉄道への相互乗り入れが容易

・高圧電流が高いところを流れるため、安全性が高く踏切を設置することもできる。

 

デメリット

・地下鉄の場合、トンネル断面が大きくなり建設費が高騰

 

一方、第三軌条方式というのは、電車が走るレールの横に電気を流すレール(第三軌条)を設置し、そこから電気を取ります。

写真の丸の内線は電車の上に電線はなく、代わりに2つの線路の間にあるサードレール(第三軌条)に電気が流れています。

第三軌条方式の場合

メリット

・地下鉄の場合、トンネル断面が小さくなるため建設費が安くなる。

 

デメリット

・既存の鉄道路線との乗り入れ不可

・高圧電流が地面近くを流れるため、地下鉄か高架線にする必要があり、地上を走る路線では使えない。踏切の設置も不可能です。

 

こうした特性のため、日本ではほとんどの鉄道は架空電車線を採用しており、東京の地下鉄銀座線、丸の内線などごく少数の路線で第三軌条が採用されています。

東京でも郊外の私鉄や国鉄(現JR)と直通する路線では架空電車線が使われています。

 

このように、地下鉄ではメリットがありますが、既存の鉄道への連絡、また、地平を走る路線は出来ません(高架線にする必要がある)

 

  インドのメトロに望ましい方式

インドで新規に作られるメトロについては、最初から地下鉄か高架線であり、インド国鉄との相互乗り入れもしていないことから、第三軌条でも問題ないと思われます。むしろ、地下鉄部分での建設費が安くなるため、第三軌条方式が望ましいとも考えられます。

 

しかし、現在は市内中心部のみで運行されているメトロも、将来的に郊外へ延びる可能性もあります。その場合、架空線方式にすることで高架線ではなく、地平線を走らせるオプションも出来ます。

郊外に路線を伸ばす場合、必ずしも建設費の高い高架線や地下鉄にしなくても、地平駅にすることで階段が無くなり、バリアフリー対応も低コストになる、バスやタクシーとの連絡も水平移動で容易になります。

 

↓の写真は富山県のポートラム岩瀬浜駅ですが、市内から来る電車とバスが平行移動で簡単に乗り換えできるようになっています。エレベータ、エスカレータも不要で維持コストも安いです。

岩瀬浜駅(Wikipedia より)

 

 

同様の例は欧州でも広がっており、中には路面電車が国鉄や地下鉄に乗り入れるなど、既存の設備を使いながらネットワークを拡充しています。

 

このように将来のネットワークを考えて、既存鉄道との互換性、地平を走ることが出来るオプションを維持するために、第三軌条方式については慎重にしてほしいと思います。

 

これに限りませんが、急速に進むインドのメトロや鉄道路線の整備について、総合交通という観点を持ってくれることを願います。