インド国鉄が150本の民間列車が始まるという記事が出ました。これはいったいどういうことなのでしょうか?

 

https://economictimes.indiatimes.com/industry/transportation/railways/there-will-be-150-private-trains-to-start-with-railway-board-chairman-vinod-kumar-yadav/articleshow/71237366.cms

 

 

日本では明治以来国策で鉄道網が全国に張り巡らされ、戦後は日本国有鉄道(通称国鉄)という国直轄の組織で運営されていました。しかし、巨額の赤字を抱えることとなり、1987年に民営化がなされました。それがいまのJR各社です。

 

一方、インドは民営化はされておらず、線路も車両も国営機関であるIndian Railway(インド国鉄)が所有・運営しています。

今回のニュースは、現在建設中の首都デリーとムンバイ、およびデリー・コルカタ間の貨物専用鉄道において、貨物列車の運営を行う業者を探すということになります。

インド国鉄Wiki

https://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Railways

 

 

ここで、日本の鉄道貨物輸送と比較してみましょう。

日本では、JR東日本など旅客会社が線路、旅客列車を保有し旅客鉄道事業を運営しています。貨物輸送を行うJR貨物は、JR東日本など旅客会社に線路使用料を払い、自社で所有する貨物列車(機関車・貨車)を運行します。列車ダイヤは旅客会社主導で決められているようですが、旅客列車の合間や夜間に貨物列車が走っています。

現在の主力であるコンテナ貨物列車は、JR貨物がコンテナ(箱単位)で貨物駅から貨物駅までの輸送を引き受けます。顧客は日本通運など大手物流会社や大手メーカーなどです。コンテナはJR貨物が提供しますが、毎日利用する大手運送会社・宅配会社などは、専用のコンテナを用意して貨物駅に持ち込むこともあります。これを私有コンテナといいます。ヤマト運輸の宅急便、西濃運輸のカンガルー便など、おなじみのロゴがついています。

 

 

インドでは、旅客列車も貨物列車もインド国鉄が保有しています。運営主体が同じなので、日本のJR旅客会社とJR貨物のような線路使用契約などはありません。

一括運営なので効率的なようですが、実際のところ、旅客・貨物とも慢性的な輸送力不足となっており、旅客列車の指定席も人気のあるルートは2か月前に満席になることも多いです。また、実際のダイヤについて、インド国鉄はよく遅れるわけですが、運転指令では、特急列車を優先に急行列車、重要物資貨物列車(軍需、エネルギーなど)、普通列車、その他貨物列車の順に優先的に走行させるため、一般の商業貨物を積んだ貨物列車はよく遅れます。というかいつつくかわかりません。

 

そんな状況を打破すべく、インド政府は日本のODAを得て貨物専用線路を作ることになりました。第一陣はデリー・ムンバイ間とコルカタ間です。これは2021年に一部開業する予定ですが、これで大幅な輸送力増強が図られるわけですが、ここの線路を民間に開放し、民間の物流会社、あるいは製造業者が独自に貨物列車(機関車・客車)を用意し、インド国鉄に線路使用料を払って独自の列車を運営するというものです。

上に書いた日本での私有コンテナよりもっと踏み込んで、列車丸ごと私有列車を走らせるというものです。日本でいえば、日本通運やヤマト運輸、あるいはパナソニックが専用の機関車・貨車を作り、JR各社に使用料を払って独自の貨物列車を走らせるようなものをイメージしていただけるといいと思います。

 

日本とはいろいろな面で異なるインドの鉄道貨物事情、今後もいろいろな側面から分析し、ご紹介していきたいと思います。