前回からの続きです。

3 無駄に巨大だが魅力に欠ける駅

 メトロの路線はたいてい主要道路の上に高架線を作る形で建設されています。これは、私有地の用地買収が必要ないのと、主要道路=人の集まっている場所ともいえるので合理的ともいえます。

その代わりといっては何ですが、道路上に切符売り場などコンコース、ホーム、屋根をつけるため巨大になりがちです。ターミナル駅でもないのに、こんなに大きく作る必要などないと思うし、あるいはせっかく大きく作るならエキナカではないけど商業施設をいれるなど活性化してみてはいいのではと思いますが、公営事業者ゆえか、あまりそうしたことに関心はないようです。(最近、デリーメトロにはお店が入るようになってきました)

写真はバンガロールメトロで2年前に延長開業した路線の郊外の終点駅ですが、その大きさがなんとなくわかります。

 

とくに、インド独特の問題ですが、メンテナンスが悪く、廃墟同然になってしまうことも多いです。下の写真はチェンナイの郊外路線(メトロとは違うが同じような機能を持つ路線)の写真です。開業から10年で廃墟のようになってしまっています。そもそも、純粋な通勤路線で特急列車などは知らないようなこの路線の中間駅がこんな巨大なのも疑問です。無駄に長い階段や通路を歩かされているみたいな感じがします。

単なる通勤電車の途中駅なのに、異様に巨大で豪華だがメンテされず朽ち果てているメトロ駅

 

4 駅中心に作られているように見えない街づくり

これも主観が入りますが、オフィス街、住宅地、ショッピングモール、こういったものの建設に、メトロ路線とリンクしているのかどうかちょっと疑問符を感じるところがあります。

写真のように、駅と駅の間にモールが建っていたり、完全にメトロを無視したものがあったり、あるいはせっかく駅前にモールがあっても、通路で結ぶなどの細かいことはできていないです。

もっとも、駅と微妙に離れているオフィスや商業施設を結ぶのに、人力車が走っているのもインドらしいといえますが、

メトロ(左)の駅間にできた総合ショッピングモール、もはや電車は関係ないという感じ、一方、駅周辺の移動で重宝する人力車

 

先日旅行したクアラルンプールやシンガポールでは、同じく道路上に作られたメトロでも、しっかりと商業施設や住宅施設と駅の連絡できています。もう一歩、学ぶところがあるような気がします。

 

 

 結局、メトロやインド国鉄という公営事業体の限界が見えているような気がします。日本では、民営化したJR各社(若い方は日本国有鉄道と言われてもわからないかと思いますが)、や民鉄(私鉄)が運営している、鉄道を軸とした営利事業体、つまり、鉄道でも利益を出すけど、自社の鉄道を軸に沿線で不動産、観光、小売店など商業施設、最近では駅前保育所からグッズの販売まで、ありとあらゆる事業を行っているビジネスモデルが行われています。

 そもそも、鉄道という公共性の高い事業は、それだけで利益を出すことは難しいです。巨額な資本を投じ、減価償却費から線路・設備・車両のメンテナンス、乗車率の有無にかかわらず発生する人件費、それでいて、一人当たり数十円から数百円の運賃を徴収するだけです。実際、日本の私鉄企業は鉄道の売り上げは全体の半分以下で、鉄道以外のところで利益を出しているビジネスモデルもあるということです。ただ、沿線価値を上げるためには鉄道そのものもよいサービスを提供しています。

一方、公共企業体であるメトロは、やはり営利企業である私鉄に比べると、サービス向上のインセンティブは起きないような気がします。

日本では、営利企業であるJRや私鉄が鉄道と関連事業で地域経済に多く貢献しています。そのため、鉄道のサービス、鉄道とリンクした商業開発で多くの実績・ノウハウがあります。

ODAでメトロの建設に協力することで、地域交通の改善に大きく貢献していますが、次のステップとしてこうした営利事業鉄道のノウハウを展開できれば理想ですが、日本の鉄道会社も貴重なノウハウを簡単に渡したくないだろうし、インド公共事業体はサービス改善のインセンティブはない。そして、日本の鉄道会社が行っているサービスがインドでそのまま受け入れられるとは思えない。簡単にはいかないと思います。

こうしたところも、考えていきたいと思います。