2005年に放映された、長瀬智也と岡田准一主演のドラマ「タイガー&ドラゴン」。
話がつまらないと周囲から評判のヤクザである主人公が、
ひょんな事から借金取立て先の落語家の師匠に弟子入りして、
拙いながらも自己流でアレンジした話を披露していくというお話。
劇中ではさまざまな古典落語が取り上げられ、
その面白さに当時落語に興味を持った人も多かったと思います。
僕もこのドラマを通して、ある1つの演目がとても気に入りました。
今でも、最初から最後まで通して覚えていて、人に話せます。
その演目とは「猫の皿」。
ある道具屋の男が、掘り出し物の骨董品を求めて旅をしていました。
だけど、良い品は中々見つからない……。
疲れ果てた男は道中に見つけた茶屋に立ち寄って、休憩を取る事にしたのです。
茶を飲み団子を食べていると、店内をうろつく猫に目が留まりました。
猫は自由きままに歩き回り、やがて餌に喰らい尽きます。
ところが、その猫の餌が入っている皿を良く見ると……とんでもない価値の逸品じゃありませんか。
300両はくだらない。
店の主人はこの皿の価値がわかっていないようだなと思った道具屋の男は、
どうにかしてこの掘り出し物を手に入れようと画策するのです。
男は、主人にこの猫を3両で売ってくれと申し出ました。
ところが主人はこんな汚い猫に3両も……? と不信がってしまいます。
子供も居ない家で、猫でもと思って飼ってみたがつい昨日逃げられちまったんだ。
連れて帰れば女房も喜ぶはずだ、と男は芝居を打ちます。
それに納得し、渋々主人は承諾しました。
男はすかさず、猫は食いなれた皿じゃねえと餌は食べないだろう、
だからこの皿もついでに頂くよ、と本題をふっかけます。
すると主人は、店の奥からひとつの皿を持ってきて、
それでしたらこちらの皿で十分でございます。普段からこれでも食べていますので、と男に手渡しました。
男は、いやいやこっちの汚い皿で結構だと食い下がります。
そんな値打ちも無い皿を渡されたらたまったものではないので必死です。
慌てる男に、主人は言います。
汚い皿といいますが、それは高麗の梅鉢という逸品でして、300両は下らない品なんでございます、と。
男は慌てて、それは知らなかった! と取り繕い、
悔しがりながらも、じゃあどうしてそんな皿で猫に餌なんかやってやがったんだと尋ねます。
すると主人は……
「いやいや、それが面白い話で……
この皿で餌をやっておりますと、時々猫が3両で売れるんでございます」
と、綺麗に落ちをつけて演目はおしまい。
突飛なオチという訳でもなく、まぁ予想通り……という感じではありますが、
おそらくドラマで見た役者さんの演技も伴って、ものすごく面白く感じました。
文章だけでは伝わり切らないかもしれません。
ドラマの中では、師匠役の高座にはたくさんの常連さんが集まっていて、
話が始まると「お、あの話だねぇ」とニヤリとします。
現実ではどうなのかわかりませんが、
話の内容もさる事ながら、落語家さんそれぞれの「話し方・演じ方」を楽しんでいるからこそ、
オチを知っている話でも面白く感じられるんでしょう。
物語の面白さはオチにこそある、と考えていますが、
こういった「結末を知っていても、何度見ても面白く感じる」というのも、
エンターテインメントには必要な要素なのかもしれません。