「ウィキッド 下」 | ちび子

ちび子

本好き猫 ちび子

この本を途中まで読んでふと松本サリン事件を思い出した。史上初の化学兵器テロと云われた地下鉄サリン事件の前に起こった事件だ。あれは一被害者が実名で容疑者として報道され、TVのニュースは連日その被害状況を流し、「最悪の殺人者」並の内容を視聴者に押し付けた。何のこっちゃない、翌年には冤罪と発表されたが、TVでは手のひら返しで報道を取りやめたからその後どんな事があったかこっちは知らない。

         

オズの西の魔女っつったらそれこそ「悪い魔女」である。「ウィキッド」グレゴリー・マグワイア著のこの話は、上巻に続き西の魔女と云われたエルファバの話だ。緑色の肌を持って生れつき、人々から奇異の目で見られ、牧師の父には罪の子として扱われ、本人の知ったこっちゃないところできっと悪い子だろうと烙印を押されている。

主人公エルファバは良い子ちゃんである。一貫して平等と平和を求めている。見た目や状況で悪い魔女であると決めつけられるが、それを逆手にとっても皆を助けようとしている。いやあ、何だろうなぁ。中年猫から云わせてもらえば、エルファバ、もうちょっと人を頼っても良いんじゃないか? と思うんだよな。基本はオズの物語なので途中からドロシーも出て来るし、となると西の魔女の行く末も見えて来るんだが、それでも皆を助ける為に翻弄する姿が痛々しく感じる。

人間一人を悪だと決めつけるんなんぞ簡単だな。エルファバは使える手なら何でも使おうと策略したが、それは彼女が正義感溢れて強靭だったからだろう。いくら本人が何を思っていたとしてもだ。いやいや、集団心理、おっかねえ。

俺ぁのらりくらりすり抜けて、責任逃れしつつ面白おかしく暮らしてぇなぁ。