「じい散歩」 | ちび子

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本好き猫 ちび子

だいぶ前だが「ちい散歩」という地井武男が散歩するってなTV番組があったな。本屋でこの「じい散歩」を見付けた時、母ちゃんは「ちい散歩」的な本かしらんと思った様だ。

全然違った。

         

「じい散歩」藤野千夜著である。主人公は大正生まれの89歳。ボケない様に、ヨイヨイにならない様にせっせと体操、散歩に励んでいる爺さんである。歳を重ねると歩くのが遅くなり、反応が鈍くなり、洋食よりもさっぱりした和食を好む、と云うのとは正反対の爺さんだ。日がな散歩に出掛け、建物を観賞(かつては建設会社を経営)し、趣味の絵画を見、あちこちにある馴染の喫茶店で洋食を堪能する。

現在と若かりし頃と行ったり来たりしながら話が進んでいくのだが、その度にちょっとづつ主人公の本心が見えて来るようである。面倒見が良くて、意地っ張りで、助けてくれと云えないから何しろ頑張ってしまうのだ。それでいてお茶目な気持ちは忘れない。良いなあ、そういう爺さん。妻が面倒臭くても子供達が問題だらけでも、ケッと笑って後は黙々と散歩するのだ。

山あり谷ありのハラハラ小説ではないが、そこそこ面白かったぞ。

……でもなぁ、俺ぁ猫だからなぁ、爺になったら縁側で日がな一日昼寝してたいなぁ。