「十手笛おみく捕物帳」 | ちび子

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田中啓文著「十手笛おみく捕物帳」である。

        

この本に関してぶつくさ文句を云う事はない。舞台は大坂、目明しの父親の後を継ぎ、十手持ちになったおみく15歳の話である。お江戸の者には岡っ引きの方が耳心地が良いんだが、ま、上方の話なので仕方がない。

冒頭から上方漫才である。台詞の応酬で話がぐんぐん進み、それもまた乗り突っ込みでこちとら頭がぐわんぐわんである。内容自体もスピード感があるので、えんたーていめんととしては最高である。あまり深く考えてはいけない。どちらかと云えば何でもアリ的な感じだなってのは否めない。FT要素も若干入ってるし、ミステリ要素もあるし、まあ、笑いあり涙(?)ありってな路線だな。

本当に、本当に深く考えてはいけないのだ。これは田中啓文の世界であり、時代物が好きな奴にも嫌いな奴にも受け入れられるってなもんだ。登場人物の掘り下げも浅く、文末に「つづく」とあったので、こりゃ2巻3巻と続いていくんだろう。これからいろんな人物のサイドストーリー的なものががっつり読めるのに違いあるまい。

(表紙のおみくは黒襟で太鼓帯と帯締めなので、時代としては1804年頃以降の筈である。序に後ろに居る狩衣の男性は垣内光左衛門。烏帽子で髪を結っていないというのであればこれから出陣の仕度をする場面なのだろう。……んな事考えないで表紙を描いたんだとは思うんだがな)(だからこりゃ楽しい話なんだから、時代がいつだろうと構わないのだ)