拝啓 寒風が心身共に突き刺さる季節。


大分、間が空いてしまったようだ。貴君は元気にしていたかい?久方となると少々気恥ずかしさがあるけれど、気にせず筆を書き進めていく所存だ。決して飽きた訳ではないのでそこは何卒ご承知を。



連日の寒さは何だ。1月、2月になると毎年毎年繰り返す「今年 異様に寒くない?」。この文言だったら連続大賞を受賞する自信がある。そして「毎年言ってるよねー」なんて事も毎年言っている気がするし、毎年言ってるよねという事に対し毎年言ってるなーという事も、毎年言っている気がする。自分でもよく分からなくなってしまった。まあ要するに懲りずに同じことを言ってるなという事だ。あれだけルーティンが嫌いと新天地が欲しいと嘆いている生物なのに不思議な生態だ。


私は安定が欲しいのか先の見えない言うなれば刺激が欲しいのか、それともずっとこのように逡巡している気分に浸かりたいだけなのか良く分からないが、自己満足で生きるぐらいが程々に良い気がする。丁度良い、理想、頂点やそれ以上は碌な道が無い。手に届かない、想像を膨らます、頭の中であーだ、こーだ、あれが欲しい、あれは嫌と想いを回転させている内が夢を見れているのかもしれない。叶えてしまった時点で終わりだから。走ってる内が吉。まあこれもただの後ろ向きな予防線か。


文章自体が逡巡してきた。まあとかく答えは分からん。まだ生きているということだ。


そう、先程の自己満足で思い出したが作品というのは究極の自己満足なんじゃないだろうかと思う。作品内のルールを決めてしまい、そこから逸脱しない限りは現実からどれだけ関係なくても世界が動く。(最近はそこを混同している愚か者が多い気がするが無視していく)謂わば作者の自己満足を描いている。それだけ。そこに居合わせた私の様な観客が勝手に何か感じ、批評する。冷静に考えると中々無粋というか自分勝手な行為だなとも感じる。まあそこが良い所でもあると思うが。勝手に入って好きな時に出ていけるし、また来たくなったら自分の都合で帰って来ていいのだ。作品は作者にとっては自身を固めたご都合主義と言えるし、観客にとっては無勝手に出入り出来る遊び場とも言えるのかもしれない。なるたけそれらで自分の体のピースを埋めてみたらとんだ人間が生まれるかもしれないけど、ある種夢に満ちた人間だ。今で言うオタクに近いやもしれん。つまり夢を追う男が好きな女性はオタクを恋人にすれば、お互いの夢が叶い御の字の関係が生まれる。是非オススメする。特に頭がポワワンと薔薇が浮んでいる方には。



とまあこんな気持ちの悪い(今、読み返しても気持ちの悪い)何が言いたいかも分からん文章になってしまったのは「2001年 宇宙の旅」というSF映画の金字塔と言われる謂わばSF映画の始祖とされる映画を観たからなのだ。
壮大に壮大を重ねた音楽、美麗すぎてでんぐり返しを起こしてしまいそうな映像美とあまりに行間を含みすぎた台詞料。私には広大が天を貫いており、正に理解の宇宙旅行をしていた様な気分だった。約150分私はとんでもない自己満足を見せられたのだ。今すぐ解放してくれ。私はそこに留まるのなら部屋で籠城を決め込んでいた方がマシである。
貴君も壮大な自己満足の旅行に出かけたい時はこの映画をオススメする。


その後の銭湯の開放感に酔いしれながらこの手紙を終了する。少々長くなってしまい申し訳無い。今度は細やかで簡潔に紳士らしく文を届けるつもりだ。また何処で。


敬具  辛抱強い貴君へ


自己満足に揺れる男