これ、とても興味深い記事。
ノートに書くことの大切さをわかりやすく説明してます。
教育評論家の親野さんだから、子供に伝える時の注意点まで書いてらっしゃる
道を究めた人は「自分ノート」に何を書いたか
東洋経済
18.3.20
親野 智可等 : 教育評論家
http://toyokeizai.net/articles/-/212804
オリンピックのフィギュアスケートで2連覇を果たした羽生結弦選手。彼がトップアスリートになれた要因はいろいろあると思いますが、私が注目しているのは彼が子どもの頃から書き続けているノートです。
(中略)
テレビのインタビューでは、「調子が悪くて何が何だかわからなくなったときに、昔の自分の言葉とかを見て頑張っています」と答えています。中でもいちばん読み返すのが、「絶対に 勝ってやる」という言葉だそうです。これは、大きな太い文字でノートの1ページ全面を使って書いてあり、「2012,10,26」という日付もついています。
そして、インタビューの中で、「2012年に負けて、悔しくて悔しくてしょうがなくて書いた。クソって思って、思いきって書き殴ってます」と答えています。彼は、この言葉を読み返すたびに負けたときの悔しさを思い出し、モチベーションのアップに役立てていたのだと思います。
(中略)
最後になりますが、ノートで道を究めた人たちについて、もう一つ気づいたことがあります。それは、彼らの言葉には強さと深みがあるということです。つまり、彼らはみんな言葉の表現力に長けていて、その話や文章は非常に印象的で説得力があるのです。それもやはり、常にノートに向かって自分との対話を続けてきた結果だといえます。
インタビューの中でも印象深い名言がどんどん出てきますし、引退後に解説の仕事をしても余人には思いも及ばないような深みのある内容を巧みな表現で話してくれます。野村元監督の解説の深さには定評がありますし、名著『勝負のこころ』をはじめとする大山康晴の人生論や仕事論は今も数多くの読者を持っています。
最後に、羽生結弦選手の名言を紹介します。
「自分が負ける勝つではなく、高みに立とうとしていることが大事」
「火山で言えばマグマが溜まるコアの部分を作っている。コアがしっかりあるから吹き出せる」
もう一つ。
こちらはアエラ。
2018年3月26日号より
野口美恵さんの記事。
羽生結弦が明かす言葉のメソッド「大きなことを言ってグワッ」
AERA dot.
「いまはメディアに注目されているからこそ、アスリートとして『勝ちたい』という言葉を言わないといけないと感じています。考えただけじゃ、人間の脳って忘れる。でも口に出すことで、言霊じゃないけれど心に残って、絶対にやってやると思える。言葉にすれば、負けたときに屈辱も味わえるし、達成した時の喜びはまた違います。大きなことを言って、そこにグワッとぶつかるというやり方です」
あの強さは、「感覚=身体性」と「理性=言語」がシームレスにつながっていることからきているのではないでしょうか。頭の中が「モヤモヤ」していると集中力が妨げられます。「モヤモヤ」は考えていることを言葉にできていない状態。言語化できるまで考え抜かれていないから邪念が生まれ、心身のコンディションが不安定になる。
「言語化」とは言ってみれば、無意識を意識化することで、それができれば、昨日やったことは今日もできる。「体が覚えている」などと言う人は、頭では完全に理解できていないのでしょう。羽生選手は、自らの身体経験を客観視し、理解できているのだと思います。失敗や悔しいという気持ちについて言及するコメントも、自分が身をもって体験したことを客観視できているから出てくるのでしょう。
もう一つ、羽生選手の言葉から強く感じるのは「セルフリーダーシップ効果」です。
いわゆるリーダーは、他者を率いたり鼓舞したりするために言葉を使います。大事なのは「具体的で解像度の高いビジョン」の設定。まるで未来を見てきたかのような明確なビジョンが、周囲の賛同と行動を引き起こすからです。
「4回転ジャンプをマスターして日本男子初の金メダリストになりたい」
「王者になる。まずそう口に出して、自分の言葉にガーッと追いつけばいい」
といった羽生選手の言葉はまさに解像度が高く、自らを鼓舞し高みへと昇っていけた一因ではないかと考えられます。
世の中は語彙(ごい)力ブームですが、私が大事だと思っているのは、語彙力や伝え方などの表面的なものではなく、自分の中から感情として湧き出てくる「内なる言葉」です。言葉は思考の上澄みにすぎません。思考を磨かなければ言葉の成長は難しい。
「メンタルが強い」とよく言われますが、はたしてそうでしょうか。とても繊細な感性を持ったアスリートのようにも見えます。内に秘めた思いが強く、弱さや弱点を乗り越えるために、まさに言葉を武器にしてきた人なのではないでしょうか。