小さなスナック -2ページ目

小さなスナック

宿題が終わらない

いつからマイルス・デイヴィスが
「凄い」と思って「かっこいい」と思えて
いつからマイルスを知ったのだろうかと考えても
思い出せないし、
子供の時、意味も分からず観ていた「死刑台のエレベーター」からか、
中上健次や村上龍の初期作品中にマイルスが登場していたからか、
当時の付き合っていた彼が死ぬほどマイルス好きだったからか。
実際、マイルスの何が凄くて何がかっこいいのか よくわからなかった。
ジャズを聴きながらパンクも聴き、
ついでにトム・ウェイツやルー・リードが描くモノクロなストリート感が好きで、
ロサンゼルスにいた頃にはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンと2PACとNasの
言葉の持つ意味とメディアや政治との闘いのパワーに圧倒され、
ついでにシェリル・クロウを心のロール・モデルにしつつ。
そんなんばっかり聴いていた20代を過ごしながら。

 

3年前のミズーリ州ファーガソンの暴動映像がきっかけで
『#Black Lives Matter』(黒人の命も白人と同様に大切)が溢れ、
改めてhiphopを聴き始めた頃に、 

ドン・チードルがマイルス役で主演・脚本・監督・製作をする記事を読み、
去年、ようやく出来上がった『Miles Ahead』のファーストトレイラーを目の当たりにした時、
マイルスがギャングスタのよう描かれていたのには、
思わず、ニヤけてしまっていた。
ヘロインはやめたけど鎮痛剤代わりのコカインはやめれず、
ドラッグ欲しさに金策に走り、
ドラッグ同意語の酒も女もやめない。
レコード会社とマスターテープの権利の奪い合いに命をかけ殴り銃で脅し撃つ。
警官の嫌がらせで拘置所に入れられる。

 

90年代のヒップホップの世界観、ギャングスタでしょう、どう見ても。

もっと言うならば、そもそものアメリカ国内の抱える問題の多さを

チードル流に描き、

そして今もたいして変わらない、白人警官による黒人への暴行事件。

 

あえてインディペンディント作品としてアカデミーを無視し
スポンサー企業をつけずクラウド・ファンティングで製作費をかき集め
チードルが低予算で作り上げ、
ギャングスタとして描いたマイルスの空白の5年間。

 

なぜ、Nasやラキムが、ケンドリック・ラマーが
Jazzが好きでマイルスが好きなのか。
なぜ、Def Jam協力のもとマイルスが
ヒップホップのアルバムを制作したかったのか。
なぜ、ケンドリックのグラミー受賞時に
ドン・チードルが紹介したのか。
なぜ、マイルスがプリンスとジョイントをしたのか。
なぜ、プリンスやボブ・ディランやエルトン・ジョン、マッカートニー、ルー・リードが
hiphop好きなのか
なぜ、デ・ニーロやアル・パチーノやデニス・ホッパー多数の俳優たちが
ラッパー達に敬意を表するのか。
なぜ、若手ジャズミュージシャン達、グラスパー、カマシ・ワシントン、
テラス・マーティン、クリス・ディブ等が
ラッパー達のレコーディングやツアーに参加するのか。
なぜ、マイルスがオバマ大統領に抱きついたまま離れなかった
シシリー・タイソン(2016年の大統領自由勲章受賞者)と
結婚したのか。
なぜ、世界中(※注釈:この世界には日本は入っていません)に
hiphopが駆け巡っているのか。

 

アフリカンアメリカンの心の痛みや怒りを楽器で表現し(Jazz)、
アフリカンアメリカンの過酷な日常をリリックに乗せ(RAP)
ここ3年近くほぼhiphopしか聴かなくなってようやくわかった事は
Jazzからhiphopへと Jazzの受け手はhiphopだったという事。

 

映画『Miles Ahead』を”黒人の少年ジャンプ”と表した
菊池成孔だけど、全くその通りで

jazzとは?のウザいウンチクが一切無しの
マイルスを”どーうしようねーな このクレイジーおっさん野郎”的な
マイルス役のドン・チードルが素敵過ぎる。
最初から最後まで少年ジャンプじゃ申し訳ないと思ったのか、
ラストはマイルス(チードル)の架空共演シーンに
ようやく やっぱりマイルスかっこいいよね~~~ な場面。
本物のグラスパー、ハービー、ウェイン、
なんとギターにブルースのゲイリー・クラークJrですもん。

もっと言うならばケヨン・ハロルドのトランペットは悶絶好み。

 

で、エンドタイトルで流れたのはラッパーのファラオ・モンチ。
結局、hiphopでキメた『Miles Ahead』が素敵。

Black lives matter as a matter of fact.

(実際のところ、黒人の命だって白人の命と同じように大切なんだ)

 

これから4年間は(多分。でも2年で頓挫可能性あり)

レイシスト達が政権の実権を握ったアメリカ合衆国内で

hiphopとJazzのファイトバックにエールを送っているかのような

『Miles Ahead』が素敵だ。

 

セロニアス・モンクを久しぶりに聴いたら

もはやラップ音にしか聴こえず、

ラキムを聴けばjazzにしか聴こえず。