ネタバレになります。選択肢は私の選んだものであり、最終結果はわかりません。
降りしきる雨にも似た拍手の後、演奏が始まる。
(さすが響さんの地元ってだけあるな。これだけ大きなコンサートホールなのに、観客がこんなにいっぱいで)
誰もがうっとりした表情で、音の向こうに情景を見ている。
聴覚だけでなく、心まで揺さぶる演奏に惹かれて仕方ない。
「本当にキレイ……」
(なんて言うのかな。雨が降って水が流れるような、土がぬかるむような……。昨日の話通り、確かに響さんの演奏って自然の雰囲気があるかも。例え音が小さくても圧倒されるっていうか)
「すごい、クライマックスに向けて音がどんどん早くなってる……」
(舞台上の響さんの動きも激しさを増してる。広い舞台上にピアノ一台と響さんだけなのに、あんなに存在感があるなんて)
そして音が途切れ……。
一瞬の耳鳴りのような静寂の後、再び大きな拍手が会場を満たした。
☆☆☆☆☆☆
客1「いやあ、さすが椎名響。あんな人ごっついねぇ」
客2「ほんとほんと。聴いてるだけなのに涙出ったもんねぇ」
(こうして聞いてるといい感想ばっかり。ホームだから当たり前と言えば当たり前かもだけど、やっぱりすごいな。普段の憎まれ口たたいてる姿も、あれはあれで好きだけど。やっぱり演奏中の響さんは格好いいよね)
???「お客様、コンサートは終了しましたので、そろそろ」
「あ、すみませ……あれ?」
響「場内整理の人間だと思ったか?」
「ひ、響さん!」
響「ドンくさいな。いつまでもこんな所にいるから、無駄に探しただろ」
「探してくれてたんですか?」
響「別に。時間が余ってただけだ」
「ふふ、すみません。なんかコンサートの余韻に浸っていたくて」
響「余韻? 桂浜でも見えたか?」
「水の雰囲気と、夜の雰囲気がしました。やっぱり月の名所パワーですかね」
響「さあな。ほら行くぞ。別に感想なんていらないから」
「いらないんですか?」
響「お前のはな。良かったのかどうなのか、顔を見ればわかる」
「なるほど……あ、一つ言い忘れてたんですけど」
響「なんだ?」
「今日の響さん、格好よかったですよ。ちょっと惚れ直しました」
響「……なに言ってんだ、バカ」
「ふふっ」
☆☆☆☆☆☆
「あ、いたいた。すみませーん、タクシー!」
響「片手挙げれば済むんだから、あんまり大声出すなよ。恥ずかしいヤツだな」
「なんかノリで」
響「ほら停まったぞ。乗れ」
☆☆☆☆☆☆
「すみません、お願いします」
運転手「はい、どうぞ」
「宿泊先のホテルまでお願いしたいんです。場所はですね……」
運転手「あれ? その声もしかして」
「あっ、あなたは!?」
運転手「ああ、やっぱりそうだったのか! 昨日のお客さんですよね。すごい偶然だなぁ」
「私も驚きました。考えてみると、とんでもない確率ですよね……」
運転手「ってことは、そちらが昨日行ってたお連れ様で……あっ」
響「……」
「そうなんです。今日は彼のコンサートで……あれ?」
運転手「……」
響「……」
(な、なんで? どうして響さんと運転手さんが見つめ合ったまま硬直してるの?)
響「お前……もしかして仁か?」
運転手「それじゃ、お前は響?」
響「そんな……久しぶりやき全然……」
「やき……」
響「あ、いや! 久しぶりだから、全然わからなかった」
運転手「なんだよ、別になまっててもいいだろ」
響「うるさい。そういう仁こそ標準語だろうが」
運転手「接客業だからな」
(呆気に取られて頭が回らなかったけど、この2人知り合いなんだ)
「響さん、あの……」
響「悪い、勝手に盛り上がって。こいつは峰岸仁(みねぎし じん)、俺の幼なじみだ。ほらNYで話したろ」
「あ!」
(カセットテープの、響さんが病院で知り合った友達! 本当に再会できちゃったんだ!)
仁「どうも改めまして。響の幼なじみの峰岸仁です」
「丁寧にどうも。私は南月詩菜と申します」
仁「詩菜さんか。名前似合ってるね。可愛いし」
響「仁、接客業はどこ行った」
仁「美人がいたら口説くのが礼儀だろ」
響「お前はどこぞのイタリア人か」
「あははっ、おもしろいですね。峰岸さんって」
仁「仁でいいって」
響「良くない。あのな、こいつは……」
仁「しかし、子どもの頃でもあれだけ性格の難しかった響に彼女がいるとはな。しかも優しくて超いい子」
響「お前は気づいた上であえて口説いたのか……」
仁「詩菜さん、響に困らされてない?こいつひねくれてるだろ?」
響「接客業!」
仁「はいはい、だったら仕事じゃなけりゃいいんだろ。そうだ、この後はヒマ?」
「時間はありますよね。響さん、せっかくですし峰岸さんと話して来たらどうですか?」
響「……だったらお前も来い」
「え、でも」
仁「詩菜さんもおいでよ。響に詩菜さんのつけてくれたボタン見せびらかすから」
響「仁、お前な……」
仁「多分詩菜さん1人にするのがイヤなんだよ。でも響、素直じゃないからさ」
響「近づきすぎだ」
仁「ね?」
「ふふ、わかりました。それじゃおジャマしようかな」
(なんだかんだ言ってるけど、響さん楽しそう。やっぱり久しぶりに会えて嬉しいんだよね)
☆☆☆☆☆☆
「いいですよね、こういうワイワイした雰囲気の居酒屋って」
仁「観光客より地元の客のが多いのにうるさくて。酒飲みばっかりだから」
響「……」
「響さん、どうかしたんですか?」
響「いや」
仁「響は坊っちゃん出だからな。成人してからも有名ピアニストだし、こういう庶民的な空気に慣れないんだろ」
響「俺が坊っちゃん出なら、お前だって同じようなものだろ」
仁「俺は違うって~」
響「は? でもお前……」
「まあまあ2人とも。それより2人の出会いの話でも聞かせてくださいよ」
仁「なにも変わったことはないよ。俺と響が同じ病院に入院してて、同い年だし仲良くなったってだけ。お互いピアノが好きでさ」
「ちょっとだけお聞きしましたよ。仲が良かったんですね」
仁「はは、詩菜さんとの仲には負けるけどね。ピアノバカの響が彼女といる光景を見る日が来るとは思わなかったよ」
響「ピアノバカ……まあ確かに、その話ばかりしてたけどな。仁の腕に追いつきたくて必死だったんだ。こいつは本当に上手くて、神童なんて呼ばれてたんだ」
「神童! すごいですね!」
仁「神童も20歳過ぎればただの人って言うだろ。凱旋公演やってる椎名響とは違うさ」
響「それじゃお前、もう弾かないのか?」
仁「まあな。鍵盤よりハンドル触った方が稼げるんだから仕方ない」
響「そうなのか……」
「そういえば響さん、お2人が出会った病院で慰問コンサートするんですよ」
仁「へえ、あそこですか! いいな!そうだ、病院と言えば、詩菜さんに当時のおもしろエピソードを利かせてあげよう」
「おもしろエピソード?」
仁「色々あるけどなにがいい? 『響の初恋』、『響VSおっさん』、『響とゲーム』」
響「勝手に三本立てみたいにするな!」
A・響の初恋←選択
B・響VSおっさん
C・響とゲーム
「じゃー…初恋?」
仁「やっぱり女の子だね。恋人の初恋が気になるか」
響「本人の許可なく、なにを勝手に話そうとしてるんだ」
「ダメですか? 楽しそうなのに」
響「じゃあお前は、自分の初恋話を恋人に語ってきかせたいのか。悪趣味だろ」
「えー、聞きたかったな……」
響「うるさい」
仁「はは、悪い悪い。もう言わないから怒るなよ」
(響さんの子ども時代か。生意気で可愛い感じかな。想像したらなんだかちょっとほっこりしちゃった)
仁「ってわけで、今度は詩菜さんと響の馴れ初めを聞きたいな」
響「絶対話さない」
仁「じゃあ個人的なことを聞こうかな。電話番号とか」
「えっ」
響「仁」
仁「冗談だって、じょーだん。友達の彼女に変なことはしないよ。ボタンつけてもらうのが精々だって」
「ふふ、もうダメですよ。引っ掛けないように気をつけますしね」
仁「あれ、結構ガードしっかりしてるなぁ」
響「……」
「響さん?」
響「いや、なんでもない」
(今、なんかマジメな顔してた? それとも気のせいかな?)
☆☆☆☆☆☆
「はあ、楽しかった。いいお酒の席でしたね」
響「ああ……」
「それに、まさか私を乗せてくれた運転手さんが響さんの幼なじみだったなんて。やっぱり響さんは、峰岸さんと再会する運命だったんですよ」
響「……」
「なに考えてるんですか。居酒屋にいる時からちょいちょいそんな顔してましたよね」
響「気づいてたのか」
「そりゃ……」
響「彼女歴半年?」
「それはもういいですって」
響「それよりお前、いい度胸だな。恋人の目の前で他の男にニコニコして」
「え!? あれくらい普通じゃないですか!?」
響「お前のニコニコ、結構厄介なんだぞ。警戒心が湧いてこなくて、つい気を許す」
「響さんもそうでした?」
響「教えない」
「うわっ」
ベッドに座っていた響さんが、私の手をつかみ勢いよく引く。
2人で倒れ込むとそのまま抱きしめられた。
(どうしたんだろう。めずらしいな、響さんがこういうの)
A・頭をなでる←選択
B・相談に乗る
C・笑わせる
「よしよし」
響「……俺は犬か猫か」
「違いますけど、なんか悩んでるみたいな顔してません?」
響「……」
「外れてました?」
響「本当、お前って変なところが鋭いよな。生意気」
「ひ、一言余計ですよ。それに今日の話を聞く限り、生意気なのは響さんでしょう」
響「子ども時代か?」
「まあ、生意気だけど可愛いってやつでしょうけどね。そうだ、写真とか見せてくださいよ」
響「お前の写真10枚につき1枚見せてやるよ」
「えー!? なんですかそれ、不公平!」
響「残念だったな。世の中とはえてして不公平なものなんだ」
(もう! でも少しは元気になってくれたかな)
だけどそう思ったのも束の間。
またすぐに、響さんの表情がかげる。
響「お前さ、なにか感じたか。仁のこと」
「感じるって?」
響「いや……やっぱりなんでもない。俺の気のせいかもしれないし。そうじゃなくても、昔との違いなんて、会ったことないお前にはわからないよな」
「響さん?」
響「全部忘れろ。なんでもないから」
「わっ」
☆スチル☆押し倒しスチルがキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
ギュッと抱きしめられ、そのまま2人でベッドに転がる。
私の髪に顔を埋め、響さんは少し明るく言った。
響「今夜はこのまま、お前を抱き枕にして寝るか」
「抱き枕……」
響「そうすれば、多分安眠だろ」
「じゃあ響さんは、私の抱き枕ですか?」
響「バカ、枕はお前だけ。俺は人間」
「えー!? 私、無機物なんですか!?」
響「えーじゃない」
有無を言わさず抱きしめられ、ちょっと息苦しい。
(でもそれ以上に嬉しいんだから、私も大概だよね……)
~続く~
メール
タイトル・抱き心地
お前の抱き心地はなんかに似ている…
なんだったか…
昔食べた…そう…
マシュマロだ。
最大級の褒め言葉だろ。
響
感想で~す♪
まずは私の推測をつらつら書きますので、イヤな方は急いでバックして下さいね。
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運転手はやっぱり響の友達だったね!! これは納得したんだけど、今回の続編って絶対響の友達との絡みなんだろうね~。
というか、響じゃないけど、私も仁のことは気になるんだよ。
仁の家柄をごまかしたこと。タクシー運転手をしていること。ピアノをやめたこと。きっと全部がつながってるんだろうね。
後は、態度がわざとらしくはじけてたかな~と思った。これは考え過ぎなのかもしれないけど。無理してるような気がしたんだよね。取り繕ってるというか、上辺だけって感じがした。まあ単なるカンなんだけどね。
さらに、気になるのが、響の凱旋公演って大々的に宣伝するよね。久しぶりに会う幼なじみなら私は公演に行くと思うんだよね。病院で慰問コンサートやるのも知らないなんて…。なんか響に本当は会いたくなかったんじゃないか。または成功してる響に嫉妬してそうな感じがする。
と、推測をかな~り書いてしまいましたが、まああくまで私の推測なので、全然違う方向だったら、最後には笑ってごまかそうと思います(^▽^;)