ネタバレになります。選択肢は私の選んだものであり、最終結果はわかりません。



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降りしきる雨にも似た拍手の後、演奏が始まる。


(さすが響さんの地元ってだけあるな。これだけ大きなコンサートホールなのに、観客がこんなにいっぱいで)


誰もがうっとりした表情で、音の向こうに情景を見ている。

聴覚だけでなく、心まで揺さぶる演奏に惹かれて仕方ない。


「本当にキレイ……」


(なんて言うのかな。雨が降って水が流れるような、土がぬかるむような……。昨日の話通り、確かに響さんの演奏って自然の雰囲気があるかも。例え音が小さくても圧倒されるっていうか)


「すごい、クライマックスに向けて音がどんどん早くなってる……」


(舞台上の響さんの動きも激しさを増してる。広い舞台上にピアノ一台と響さんだけなのに、あんなに存在感があるなんて)


そして音が途切れ……。

一瞬の耳鳴りのような静寂の後、再び大きな拍手が会場を満たした。



☆☆☆☆☆☆



客1「いやあ、さすが椎名響。あんな人ごっついねぇ」


客2「ほんとほんと。聴いてるだけなのに涙出ったもんねぇ」


(こうして聞いてるといい感想ばっかり。ホームだから当たり前と言えば当たり前かもだけど、やっぱりすごいな。普段の憎まれ口たたいてる姿も、あれはあれで好きだけど。やっぱり演奏中の響さんは格好いいよね)


???「お客様、コンサートは終了しましたので、そろそろ」


「あ、すみませ……あれ?」


響「場内整理の人間だと思ったか?」


「ひ、響さん!」


響「ドンくさいな。いつまでもこんな所にいるから、無駄に探しただろ」


「探してくれてたんですか?」


響「別に。時間が余ってただけだ」


「ふふ、すみません。なんかコンサートの余韻に浸っていたくて」


響「余韻? 桂浜でも見えたか?」


「水の雰囲気と、夜の雰囲気がしました。やっぱり月の名所パワーですかね」


響「さあな。ほら行くぞ。別に感想なんていらないから」


「いらないんですか?」


響「お前のはな。良かったのかどうなのか、顔を見ればわかる」


「なるほど……あ、一つ言い忘れてたんですけど」


響「なんだ?」


「今日の響さん、格好よかったですよ。ちょっと惚れ直しました」


響「……なに言ってんだ、バカ」


「ふふっ」



☆☆☆☆☆☆



「あ、いたいた。すみませーん、タクシー!」


響「片手挙げれば済むんだから、あんまり大声出すなよ。恥ずかしいヤツだな」


「なんかノリで」


響「ほら停まったぞ。乗れ」



☆☆☆☆☆☆



「すみません、お願いします」


運転手「はい、どうぞ」


「宿泊先のホテルまでお願いしたいんです。場所はですね……」


運転手「あれ? その声もしかして」


「あっ、あなたは!?」


運転手「ああ、やっぱりそうだったのか! 昨日のお客さんですよね。すごい偶然だなぁ」


「私も驚きました。考えてみると、とんでもない確率ですよね……」


運転手「ってことは、そちらが昨日行ってたお連れ様で……あっ」


響「……」


「そうなんです。今日は彼のコンサートで……あれ?」


運転手「……」


響「……」


(な、なんで? どうして響さんと運転手さんが見つめ合ったまま硬直してるの?)


響「お前……もしかして仁か?」


運転手「それじゃ、お前は響?」


響「そんな……久しぶりやき全然……」


「やき……」


響「あ、いや! 久しぶりだから、全然わからなかった」


運転手「なんだよ、別になまっててもいいだろ」


響「うるさい。そういう仁こそ標準語だろうが」


運転手「接客業だからな」


(呆気に取られて頭が回らなかったけど、この2人知り合いなんだ)


「響さん、あの……」


響「悪い、勝手に盛り上がって。こいつは峰岸仁(みねぎし じん)、俺の幼なじみだ。ほらNYで話したろ」


「あ!」


(カセットテープの、響さんが病院で知り合った友達! 本当に再会できちゃったんだ!)


仁「どうも改めまして。響の幼なじみの峰岸仁です」


「丁寧にどうも。私は南月詩菜と申します」


仁「詩菜さんか。名前似合ってるね。可愛いし」


響「仁、接客業はどこ行った」


仁「美人がいたら口説くのが礼儀だろ」


響「お前はどこぞのイタリア人か」


「あははっ、おもしろいですね。峰岸さんって」


仁「仁でいいって」


響「良くない。あのな、こいつは……」


仁「しかし、子どもの頃でもあれだけ性格の難しかった響に彼女がいるとはな。しかも優しくて超いい子」


響「お前は気づいた上であえて口説いたのか……」


仁「詩菜さん、響に困らされてない?こいつひねくれてるだろ?」


響「接客業!」


仁「はいはい、だったら仕事じゃなけりゃいいんだろ。そうだ、この後はヒマ?」


「時間はありますよね。響さん、せっかくですし峰岸さんと話して来たらどうですか?」


響「……だったらお前も来い」


「え、でも」


仁「詩菜さんもおいでよ。響に詩菜さんのつけてくれたボタン見せびらかすから」


響「仁、お前な……」


仁「多分詩菜さん1人にするのがイヤなんだよ。でも響、素直じゃないからさ」


響「近づきすぎだ」


仁「ね?」


「ふふ、わかりました。それじゃおジャマしようかな」


(なんだかんだ言ってるけど、響さん楽しそう。やっぱり久しぶりに会えて嬉しいんだよね)



☆☆☆☆☆☆



「いいですよね、こういうワイワイした雰囲気の居酒屋って」


仁「観光客より地元の客のが多いのにうるさくて。酒飲みばっかりだから」


響「……」


「響さん、どうかしたんですか?」


響「いや」


仁「響は坊っちゃん出だからな。成人してからも有名ピアニストだし、こういう庶民的な空気に慣れないんだろ」


響「俺が坊っちゃん出なら、お前だって同じようなものだろ」


仁「俺は違うって~」


響「は? でもお前……」


「まあまあ2人とも。それより2人の出会いの話でも聞かせてくださいよ」


仁「なにも変わったことはないよ。俺と響が同じ病院に入院してて、同い年だし仲良くなったってだけ。お互いピアノが好きでさ」


「ちょっとだけお聞きしましたよ。仲が良かったんですね」


仁「はは、詩菜さんとの仲には負けるけどね。ピアノバカの響が彼女といる光景を見る日が来るとは思わなかったよ」


響「ピアノバカ……まあ確かに、その話ばかりしてたけどな。仁の腕に追いつきたくて必死だったんだ。こいつは本当に上手くて、神童なんて呼ばれてたんだ」


「神童! すごいですね!」


仁「神童も20歳過ぎればただの人って言うだろ。凱旋公演やってる椎名響とは違うさ」


響「それじゃお前、もう弾かないのか?」


仁「まあな。鍵盤よりハンドル触った方が稼げるんだから仕方ない」


響「そうなのか……」


「そういえば響さん、お2人が出会った病院で慰問コンサートするんですよ」


仁「へえ、あそこですか! いいな!そうだ、病院と言えば、詩菜さんに当時のおもしろエピソードを利かせてあげよう」


「おもしろエピソード?」


仁「色々あるけどなにがいい? 『響の初恋』、『響VSおっさん』、『響とゲーム』」


響「勝手に三本立てみたいにするな!」


A・響の初恋←選択

B・響VSおっさん

C・響とゲーム


「じゃー…初恋?」


仁「やっぱり女の子だね。恋人の初恋が気になるか」


響「本人の許可なく、なにを勝手に話そうとしてるんだ」


「ダメですか? 楽しそうなのに」


響「じゃあお前は、自分の初恋話を恋人に語ってきかせたいのか。悪趣味だろ」


「えー、聞きたかったな……」


響「うるさい」


仁「はは、悪い悪い。もう言わないから怒るなよ」


(響さんの子ども時代か。生意気で可愛い感じかな。想像したらなんだかちょっとほっこりしちゃった)


仁「ってわけで、今度は詩菜さんと響の馴れ初めを聞きたいな」


響「絶対話さない」


仁「じゃあ個人的なことを聞こうかな。電話番号とか」


「えっ」


響「仁」


仁「冗談だって、じょーだん。友達の彼女に変なことはしないよ。ボタンつけてもらうのが精々だって」


「ふふ、もうダメですよ。引っ掛けないように気をつけますしね」


仁「あれ、結構ガードしっかりしてるなぁ」


響「……」


「響さん?」


響「いや、なんでもない」


(今、なんかマジメな顔してた? それとも気のせいかな?)



☆☆☆☆☆☆



「はあ、楽しかった。いいお酒の席でしたね」


響「ああ……」


「それに、まさか私を乗せてくれた運転手さんが響さんの幼なじみだったなんて。やっぱり響さんは、峰岸さんと再会する運命だったんですよ」


響「……」


「なに考えてるんですか。居酒屋にいる時からちょいちょいそんな顔してましたよね」


響「気づいてたのか」


「そりゃ……」


響「彼女歴半年?」


「それはもういいですって」


響「それよりお前、いい度胸だな。恋人の目の前で他の男にニコニコして」


「え!? あれくらい普通じゃないですか!?」


響「お前のニコニコ、結構厄介なんだぞ。警戒心が湧いてこなくて、つい気を許す」


「響さんもそうでした?」


響「教えない」


「うわっ」


ベッドに座っていた響さんが、私の手をつかみ勢いよく引く。

2人で倒れ込むとそのまま抱きしめられた。


(どうしたんだろう。めずらしいな、響さんがこういうの)


A・頭をなでる←選択

B・相談に乗る

C・笑わせる


「よしよし」


響「……俺は犬か猫か」


「違いますけど、なんか悩んでるみたいな顔してません?」


響「……」


「外れてました?」


響「本当、お前って変なところが鋭いよな。生意気」


「ひ、一言余計ですよ。それに今日の話を聞く限り、生意気なのは響さんでしょう」


響「子ども時代か?」


「まあ、生意気だけど可愛いってやつでしょうけどね。そうだ、写真とか見せてくださいよ」


響「お前の写真10枚につき1枚見せてやるよ」


「えー!? なんですかそれ、不公平!」


響「残念だったな。世の中とはえてして不公平なものなんだ」


(もう! でも少しは元気になってくれたかな)


だけどそう思ったのも束の間。

またすぐに、響さんの表情がかげる。


響「お前さ、なにか感じたか。仁のこと」


「感じるって?」


響「いや……やっぱりなんでもない。俺の気のせいかもしれないし。そうじゃなくても、昔との違いなんて、会ったことないお前にはわからないよな」


「響さん?」


響「全部忘れろ。なんでもないから」


「わっ」


☆スチル☆押し倒しスチルがキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!


ギュッと抱きしめられ、そのまま2人でベッドに転がる。

私の髪に顔を埋め、響さんは少し明るく言った。


響「今夜はこのまま、お前を抱き枕にして寝るか」


「抱き枕……」


響「そうすれば、多分安眠だろ」


「じゃあ響さんは、私の抱き枕ですか?」


響「バカ、枕はお前だけ。俺は人間」


「えー!? 私、無機物なんですか!?」


響「えーじゃない」


有無を言わさず抱きしめられ、ちょっと息苦しい。


(でもそれ以上に嬉しいんだから、私も大概だよね……)



~続く~




メール


タイトル・抱き心地


お前の抱き心地はなんかに似ている…

なんだったか…

昔食べた…そう…


マシュマロだ。


最大級の褒め言葉だろ。







感想で~す♪

まずは私の推測をつらつら書きますので、イヤな方は急いでバックして下さいね。

 ↓

 ↓

 ↓

運転手はやっぱり響の友達だったね!! これは納得したんだけど、今回の続編って絶対響の友達との絡みなんだろうね~。

というか、響じゃないけど、私も仁のことは気になるんだよ。

仁の家柄をごまかしたこと。タクシー運転手をしていること。ピアノをやめたこと。きっと全部がつながってるんだろうね。

後は、態度がわざとらしくはじけてたかな~と思った。これは考え過ぎなのかもしれないけど。無理してるような気がしたんだよね。取り繕ってるというか、上辺だけって感じがした。まあ単なるカンなんだけどね。

さらに、気になるのが、響の凱旋公演って大々的に宣伝するよね。久しぶりに会う幼なじみなら私は公演に行くと思うんだよね。病院で慰問コンサートやるのも知らないなんて…。なんか響に本当は会いたくなかったんじゃないか。または成功してる響に嫉妬してそうな感じがする。


と、推測をかな~り書いてしまいましたが、まああくまで私の推測なので、全然違う方向だったら、最後には笑ってごまかそうと思います(^▽^;)






ネタバレになります。選択肢は私の選んだものであり、最終結果はわかりません。



3人ママの慌ただしさ~自閉症児たちのママが乙女ゲーやってます-kokuchi_hibiki_zokuhen_480.jpg


数日後。

私と響さんは、お互い仕事のため日本の高知県にやってきていた。


響「高知といえば?」


「坂本龍馬!」


響「即答だな。やっぱりさっき龍馬像を見てきたのが大きいか」


「やっぱり生で見るといいですね。侍の佇まいに洋風の靴。まさしく龍馬って感じです」


久しぶりの日本の景色を堪能しながら雑談に花が咲く。

初めての高知は、響さんのおかげで楽しいことだらけだ。


(いつも以上に饒舌なところを見ると、響さんも久しぶりの故郷が嬉しいんだろうな)


響「そうそう。この桂浜にあるのが龍馬なら、向こうの室戸岬には中岡慎太郎の像がある。この二つはほとんど向かい合ってると言うな。実際は噛み合ってないんだが」


「中岡慎太郎って、確か龍馬が近江屋で暗.殺された時に一緒に……」


響「そう、その中岡だ。龍馬ととても懇意だったと、小説やドラマなんかでは描かれてるな」


「事実がどうだったかはともかく、粋な計らいですね。二つの像を向かい合わせるってのは」


響「俺もそう思う」


桂浜の海に寄せては返す波音が響く。

穏やかに吹き抜ける潮風がくすぐったかった。


(遠くで輝く紺碧の水面とか、やわらかい空の色とか……。なんかいいなぁ)


「キレイなところですね、ここって」


響「そりゃ桂浜は頭一つぬきでた景勝地だからな」


「こんな素敵な場所で育ったんですね、響さんは」


響「突然どうした?」


「だから響さんの曲はキレイなのかなと思って」


響「桂浜みたいな印象を受けるってことか?」


「うまく言えないですけど。すごく惹きつけられるってことかな」


響「……そうか」


(海みたいに、鋭さも穏やかさも兼ね備えてるというか。うまく言えないけどね)


響「俺さ、コンサートの前はこういう場所によく来るんだ」


「海ですか?」


響「というか、自然の多い場所だな。海とか川とか森とか、大樹のある場所とか。自然を取り込むと力をもらえる気がするだろ」


「じゃあ、今回の凱旋公演は桂浜の力を貰うんですね」


響「そうだな。あとは、お前かな」


「えっ……」


そっと指が絡まり、距離が近づく。

海風に冷えた手に、響さんの体温が心地いい。


A・手を握り返す←選択

B・パワー注入

C・少し照れる


響「笑うな。勝ち誇った顔で手を握るな」


「なんだか嬉しくて。私は響さんの力になれてるんでしょうか」


響「なってるだろ。詩菜って、無駄に存在感あるからな」


「えーと、それって褒めてます?」


響「さあな。どうだろう」


「さあなって……あ」


(手を握り返したら、もっとぎゅっと握られた……? 言葉は素直じゃないけど、こういう瞬間になんとなくわかっちゃうんだよね。響さんの気持ち)


「明日の公演、応援してますからね」


響「ああ、見てろ。お前が度肝抜かすような演奏してやるよ」


「私のために弾いてくれるんですか?」


響「それは調子に乗り過ぎだ」


「あははっ、すみません」


響「そういえばさ、この桂浜は、本当は月の名所なんだよ」


「あ、それ知ってます。よさこいで唄われてますよね。『月の名所は桂浜』って」


響「情緒溢れて見事なものだぞ。俺は詩は書かないが、それでもなにか書きたくなるというか」


「響さんの場合は弾きたくなる、じゃないですか?」


響「かもな。詩菜にしてはうまいことを言う」


(詩菜にしては、って。なんか一言余計なんだよね)


響「……いつか、機会があれば見に来るか。中秋の名月の頃にでも」


「えっ」


響「ふん、イヤなら俺一人で来るからいい」


「ちょ、待ってください! イヤだなんて一言も言ってませんよ、一緒に来ますから!」


響「慌てすぎだ、お前は」


「響さんが悪いんですよ。拗ねたフリなんて意地が悪いなぁ」


響「そう、俺は意地が悪いんだ。というわけで、昼食に美味い店に連れて行こうと思っていたが、これは中止にするか」


「えっ、ウソ!?」


響「残念だったな」


「あ、ちょっと! 待ってくださいよ!」



☆☆☆☆☆☆



「美味しい……!!」


響さんの案内で入ったお店で、新鮮なカツオ料理に舌鼓を打つ。


(美味しいだろうとは思ったけど、本当に想像以上に美味しい)


響「気に入ったか?」


「私が今まで食べてたカツオはなんだったのかって気分になるレベルです」


響「大げさだな」


「本当ですよ。四国で特集組むから、高知の記事には絶対カツオのことを書かなくちゃ」


響「まあ、時期によっては刺身の方がいいとかもあるだろうが、まずはタタキだな」


「美味しいお店の見分け方とかは?」


響「もちろん例外もあるだろうが……でも大体美味しいと思う。求めるレベルにもよるけど」


「参考になります。えーと、おさらいすると、赤み好きなら初鰹でトロ好きなら戻り鰹がいいと」


響「……」


「……あれ、なんかおかしかったですか? すごくニコニコしてこっち見てますけど」


響「お前の目の錯覚だろ。かわいそうに、もう目の衰えが来てるのか」


「違いますから! 響さんってすぐそういうことを……」


響「俺が機嫌良さそうに見えるとしたら、それは……」


店員「お待たせいたしました、タレタタキでございます」


響「ああ、こっちです」


(さっきなんて言いかけたんだろう。聞いてみたい気もするけど……)


響「塩だけじゃなくてタレも食えよ。ここのタレ、少しとろみがあるんだけどこれが美味いんだ」


「あ、はい」


(今はいいのかな。せっかく機嫌がいいんだしね)



☆☆☆☆☆☆



響「じゃあ俺はそろそろリハと打ち合わせがあるから行くけど。1人で平気か」


「大丈夫ですよ。ここは日本だし」


響「まあNYに比べたら格段に治安はいいけど、それでも心配なんだよ」


「響さん……」


響「お前、たまにとんでもなくおっちょこちょいでそそっかしいだろ」


「そ、そういう意味ですか。ちょっと嬉しかったのに」


響「むしろそれ以外にない」


「バッサリ……」


響「っと悪い、そろそろ行くよ。夜にホテルでな」


「はい、気をつけてくださいね!」


(さてと。1人になっちゃったし、私も仕事の続きをしようかな)


「自分の足で高知観光をして、良さそうなところをピックアップして……でも徒歩ってのもね。ちょっと高くつくけど、タクシー移動にしようかな」


(タクシー乗り場はあそこか。ちょうど一台停まってるみたい。NYのタクシーは自動ドアじゃないもんね。ここは日本だから、久々にあれが見れるんだ)


「あれ、開かない? っていうか運転手さん寝てる? あ、あの~」


運転手「……」


「すみません、お願いしたいんですけど」


運転手「……」


「あの、すみませんがっ!」


運転手「えっ!? はい、なに!?」


顔出た! 響の昔の友達かな?


「わ!?」


(な、なに今の!? ボタンが飛んで来た!?)


運転手「あちゃー、飛び起きて引っ掛けたか……。すみませんね、お客さん」


「いえ、私こそ驚かせちゃったみたいで。これボタンです」


運転手「はは、みっともないとこ見られちゃいましたね。とりあえず乗ってください」


「あ、はい」



☆☆☆☆☆☆



運転手「へえ、それじゃ雑誌の取材旅行ですか。ずっとお1人で?」


「いえ、さっきまでは連れがいたんですけど」


運転手「今は単独行動中ってことか。取材ならタクシー移動は正解かもしれませんね」


「はあ……」


(さっきのボタン、ジャケットの袖口のだよね? 申し訳ないことしちゃったな)


「あの、良ければですけど、ジャケットのボタンつけさせてくれませんか」


運転手「え!? そりゃ助かりますけど、でも……」


「おイヤでなければ是非。なんだか申し訳なくて」


運転手「それじゃお願いしちゃおうかな。家事は得意な方なんですけど、裁縫の類は苦手で」


「失礼しますね……」


運転手「お客さん、雑誌の編集さんですよね。観光スポットを取材するつもりで?」


「はい。いい場所があればいいんですけど」


運転手「だったら俺、いい場所知ってます。穴場に案内しますよ」


「本当ですか?」


運転手「ええ。居眠りのお詫びと、ジャケットのお礼ってことで」


(タクシーの運転手さんなら、この辺りにも詳しいだろうし、なんだかラッキーだったかも)



☆☆☆☆☆☆



「色々取材できて良かった。やっぱり地元の人に聞くのが正解だよね」


(夜景もキレイそうだったし、さっきのお寺なんかは秋の紅葉が見事だっていうし)


運転手「ああ、来た来た」


「あ、さっきの! まさか待っててくれたんですか?」


運転手「この辺はタクシー通らないし、帰りが大変だろう思いまして。お節介だったらすみません」


「とんでもないです。ありがとうございます」


(親切な人もいるんだなぁ。ちょうど困ってたし助かっちゃうな)


運転手「それじゃどうぞ、乗ってください。あとこれ」


「名刺?」


運転手「うち個人タクシーなんで、稼ぎたいし、また取材したりするなら、呼んでもらえると嬉しいかなと思いまして」


「ふふ、なるほど。ちゃっかりしてますね」


運転手「はは、お客さんが美人だからですよ」


(うーん、商売上手な運転手さんだ。でもおかげでバッチリ取材できたよね)



☆☆☆☆☆☆



「というわけで、物凄く商売上手な運転手さんだったんです」


響「それでノコノコ名刺なんかもらってきたってわけか」


「そうだけど、見ます?」


響「誰が見るか。心配してたら案の定これだ」


「えーと……」


響「そうか、失念してた。言葉が100パーセント通じる分、日本の方がある意味厄介なのか」


(うーん、これはもしかしてヤキモチ?)


A・妬いてます?←選択

B・響さん一筋ですよ

C・営業に本気にならないで


「もしかして妬いてるんですか、響さん」


響「…………妬いてない」


「今、随分ためて言いましたけど」


響「うるさい。誰がお前相手に妬いたりするか。うぬぼれも大概にしろ」


「ふーん、そうですか。それじゃ貰った名刺は一応取っておこうかな」


響「お前……」


「ふふっ」


響「おもしろがってるだろ」


「すみません。だって今の響さん、ちょっと可愛くて」


響「よし、わかった。お前とはもう口をきかない」


「冗談ですよ。怒らないでください、響さん。今日の後半は1人で周りましたけど、また案内してくださいね?」


響「……時間があったらな」


「そうでした。明日の本番、がんばってください」


響「お前に応援されるまでもないけどな。まあ、見てろ」


(相変わらず素直じゃなけど……でも調子は良さそうだよね。楽しみだな)



~続く~




メール


タイトル・さっきのは


何度も言うが、別に嫉妬とかじゃないからな。

お前は自覚がないんだろうが、どっか危なっかしいんだ。

なにかあってからでは遅いぞっていうのを伝えたくてだな…

しつこく言うが「嫉妬」なんかじゃないんだからな!






感想で~す♪

あまくなーーーーーーーーい!!!!!

なに、このエサを止められた犬の気分は!! ホテル戻ってきて、バスロープ姿の響にすっごく期待してたのに(。>0<。)

なんか物足りない……(/TДT)/

……いやいや! まだ2話だし~。残り8話もあるんだから、これからに期待しますo(^▽^)o



ネタバレになります。選択肢は私の選んだものであり、最終結果はわかりません。




3人ママの慌ただしさ~自閉症児たちのママが乙女ゲーやってます-kokuchi_hibiki_zokuhen_480.jpg




響さんと付き合い始めて約半年…

今日はめずらしくお互い休みだったので、私は久々に響さんの部屋に来ていた。


「あっ、なにこれ。ちょっと、響さん」


響「キーキーわめくな。子猿かお前は」


「人をお猿呼ばわりしないでください。それよりこれはなんですか。冷蔵庫の中身がひどいじゃないですか」


響「ひどいって?」


「ミネラルウォーターと調味料少々。あとお酒だけ」


響「……」


「さては響さん、ここしばらくの間、ろくな物を食べてなかったんでしょう」


響「別に」


「別にじゃありませんよ。っていうか目をそらさないでください」


響「仕事が立て込んだんだ。悠長に買い物するヒマなんてあるわけないだろ。大体、食事は外でちゃんととってた」


「そりゃ絶食してるとは思いませんけど、ずっとそれじゃ身体壊しちゃいますよ。こんなことなら、私を呼んでくれればよかったのに……」


響「へえ、甲斐甲斐しくおさんどんしたかったってわけか。案外しおらしい所もあるんじゃないか」


「べ、別に甲斐甲斐しくとかそういうつもりじゃ…!」


響「おー、赤い赤い。子猿説に真実味が増すな」


(な…!? もう、頭にきた!)


「じゃあ響さんはお猿と付き合ってるんですね! 響さんってそういう趣味だったんですねかー、変わってますね」


響「なるほど、そう来るか」


「ダテに半年も彼女やってませんからね」


響「ドヤ顔するな。おもしろいから」


「ぐ……」


(口では勝てない、かも)


響「……ふう」


「響さん?」


響「お前のうるさい声が頭の中でガンガンに反響しててな。悪いが少し静かにしてくれ」


「す…すみません。でもそこまで大声で話してました?」


響「お前の声だと三割増しくらいで拾うんだよ、俺の耳」


「それはもしかして、私を好きだからっていう……」


響「都合よく解釈することにかけては、お前の右に出る者はいないだろうな」


(相変わらずツンツンしてるなぁ。さすがに少しは慣れたけど。だけどマジメな話、ちょっと心配だな。少し顔色が悪いし)


「そういえば今日は一日、ため息も多かったような気がするし」


響「は?」


「響さん、本気で具合が悪いんじゃないですか? 今日はご飯食べました?」


響「メシ炊きを申し出てみたり心配してみたり、今日はやけにサービス抜群だな。さては俺に後ろ暗い所でもあるのか」


「素直に心配してるのにこの言われようってないですよ」


響「冗談だ」


「もう……」


響「それに、俺がひねくれてることなんて百も承知だろ。彼女歴半年はダテじゃないんじゃないのか」


「私はマジメに心配してるんです。ちゃんと答えてくださいよ、じゃないと……」


響「どうするって?」


「今日からは、カレーの付け合わせをらっきょうじゃなくて福神漬にします」


響「な、なんて卑怯な!」


卑怯なんだо(ж>▽<)y ☆


「話す気になりました?」


響「ああ。なったから、その手の脅迫はやめろ。……確かに体調はよくないけど、徹夜が続いて疲れが出てるだけだ」


「やっぱり。それで、ご飯も適当に済ませてたんですね」


響「仕方ないだろ。そんなヒマもなかったんだから」


「だから、そういう時は私を頼ってくださいよ」


響「お前も働いてるのに? その上ウチの家事までやれと?」


「え……」


響「そういうアンフェアなのは好きじゃない」


「響さんって変なとこ生真面目というか堅いというか融通がきかないというか。アンフェアとか、そんなんじゃないですよ。響さんがつらい時に助けたいと思うのは当然です」


響「俺は別に思わないけどな。お前が腹減らしてたら隣で笑う」


「えー!?」


響「……冗談だ。なんでも信じるな。お前は」


(本当、素直じゃないなぁ)


「だけど、こうして思い返してみると、仕事明けの響さんっていつも弱ってますよね」


響「弱ってる?」


「こう、陽の光を浴びただけで肺になりそうな雰囲気がありますよ」


響「俺はヴァンパイアか」


「実は身体弱かったりするんですか?」


響「昔はな。大人になってマシになったけど、子どもの頃は病弱で、しょっちゅう入退院を繰り返してた」


A・繊細なんですね

B・口は達者なのに……

C・今は大丈夫なんですか?←選択


「大変だったんですね。今はもう大丈夫なんですか?」


響「しょっちゅう入院してるように見えるのか?」


「見えないですけど……ちょっとホッとしました」


響「…すぐに体調を崩すヤツはゴメンだとか?」


「そうじゃなくて、響さんが健康体になって良かったって言ってるんです」


響「……」


「ウソじゃありませんよ?」


響「そんなこと、誰より一番わかってる。詩菜は顔に出るからな。彼氏歴半年もダテじゃないだろ?」


「ふふ、そうかもしれません」


(だけど、なるほどね。子ども時代みたいに入退院を繰り返すってことはなくなっても、余波は残ってるのかも。それに子どもの頃に病院で過ごしてばかりじゃ、寂しかったかもしれないな……)


響「なんだよ、その顔。一丁前に心配してるのか」


「ちょっ、顔をつぶさないでくださひほ!」


響「変な顔」


「誰のせいでこんな顔だと……」


半分怒ってそう言った言葉が途切れる。

気づいた時には、ギュッと抱きしめられていたから。


響「そんな簡単に倒れないから、心配するな」


「は、はい……」


(なんか、こうやって抱き寄せられてると未だに緊張する。普段がツンケンしてるからかな)


響さんの腕の中でおとなしくしていると、不意に、彼の視線が一点に注がれていることに気づく。


(響さんが見てるのって、棚の上に置いてあるカセットテープ?)


「あのテープ、思い出の品かなにかなんですか?」


響「ああ。入退院ばっかりしてた頃に、病院で知り合った友達とのな」


「そうだったんですか。ずっと不思議だったんです。なんというか、部屋の雰囲気に馴染んでない気がして」


(でも浮いてるとかじゃないんだよね。古びたテープだけど、大切にしてる感じがするからかな)


響「あのテープは、その友達に貰ったものなんだ」


「ボイスレター?」


響「いや、曲だ。そいつが作曲した曲」


「へえ、子どもの頃から作曲活動ですか。天才っているんですねぇ」


(こういうのも類は友を呼ぶって言うのかな。すごい人の周りにはすごい人が集まるというか)


響さんがテープを静かにセットして再生ボタン押す。

少し古びた、だけどやわらかなメロディが流れた。


「ジャズっぽい雰囲気ですね。キレイな曲……」


響「あいつ、今頃どうしてるんだろうな」


「会いたいですか?」


響「そりゃ会えるならな。昔は俺よりうまくてさ、負けるもんかって何度思ったことか」


「響さんより……すごいんですね」


響「でもこっちの世界で名前聞かないし、今はなにやってるのかわからない。元気ならいいが」


(響さん優しい顔してる。この曲もすごく素敵だし、きっと良い友達だったんだろうな)


「会えるといいですね」


響「え?」


「ほら、もうすぐ日本に戻るじゃないですか。高知での凱旋公演」


響「そんなに都合よくいくとは思わないけどな」


「私は、案外会えるんじゃないかと思いますけど」


響「……究極に楽観的だな」


「ふふ」


響「でも、そうだな。会えらたいいと思うよ。そういえば、俺が世話になってた病院に慰問コンサートをしに行くし」


「それって、その友達と出会った病院ですか?」


響「そう。今こうしていられるのも、先生方のおかげだから」


「出会った病院で慰問コンサートか。会えそうな雰囲気出てきましたね」


響「お気楽」


「前向きと言ってください……あっ」


(そういえば、全然考えてなかったけど、響さんの友達って男? 女? じょ、女性だった場合、物凄く美人になってたりしたらどうしよう)


私も女性かもって思ってました(><;)


「しかも響さんと同じ音楽畑の人間なわけで……趣味もバッチリで……」


響「なにをいきなりブツブツやってるんだ。念仏でも唱えてるのか」


「ち、違います」


響「詩菜?」


(響さんが楽しそうで私まで嬉しかったのに、こんな些細なことでモヤモヤしちゃうなんて。ダメダメ。各省の持てないことで不安になるなんて無意味だよね、うん!)


「私は響さんを信じてますからね」


響「唐突になにを言い出すかと思ったら。ついに壊れたのか、頭が」


「例え子どもの頃の友達がとびきりの美女になってたとしても、コロッといったりはしないと……」


響「待て、なんの話だ。美女とかコロッといくとか」


「だからその、響さんのお友達の話です」


響「俺の友達は男だ」


まずは一安心(;´▽`A``


「えっ」


響「どう育ったかは知らないが、さすがに美女にはなってないだろ」


「……」


響「で、俺の友達がなんだって? 誰がなににコロッといくって?」


「あはは……ちょっと先走っちゃったというか」


響「むしろ逆走する勢いだろ。ちょっとは落ち着け、バカ」


「いたっ」


響「お前みたいのを猪突猛進というんだな。猿は返上してイノシシにするか?」


「人間がいいです……」


響「ふっ」


(意地悪そうに笑うし。でも、こういう笑顔も好きなんだよね。惚れたもん負けだ……)


「あ、そういえば私も近々日本に戻るんですよ」


響「え?」


「日本の観光地の特集を組むんです。四国に取材旅行ってとこですね」


響「まさか俺の凱旋公演と同じ時期とか言うんじゃないよな?」


「そのまさかなんですよ。すごい偶然ですよね」


いえいえ、制作元の策略で…゚・゚*・(゚O゚(☆○=(`◇´*)o


響「はあ……しばらくは静かに過ごせると思ったんだがな……」


A・コンサート応援しに行きます

B・デートしましょうね!

C・響さんとは会いませんよ←選択


「別に会ってくれなんて言いませんよ。安心して下さい」


響「えっ」


「凱旋公演に慰問コンサート。おまけに高知は響さんの地元だし、きっと色々と忙しいでしょう」


響「それはそうだが、しかし」


「というわけなので、現地で会うことはあるかもしれませんけど、別に一緒に行動することは無……」


響「ストップ! お前は俺と高知観光。今決めた。決定した」


「いいんですか?」


響「お前を1人で放っておくと、ろくなことはならなそうだからな」


「ふふっ」


(相変わらず素直じゃないなぁ)


響「にしても日本か……」


「やっぱり緊張します?」


響「まさか。余裕だ、これくらい」


「ふふ、はいはい」


響「バカにしてるだろ」


「してませんって……ちょ、くすぐったい!」


響「一緒に日本に戻る前に、少しこらしめておくべきだな」


「ははは! もう無理です、ギブ!」


じゃれあいながらソファの上でもみくちゃになる。

笑いすぎてぐったりした頃、そっと手を握られた。


響「仕方ないから公演のチケット用意してやるよ。あと、高知の観光案内もな」


「仕方ないからですか?」


響「そう、仕方ないからだ」


「ふふ」


そうは言いつつも、握られた手は離れない。

暖かい体温になんだか胸が和んだ。


(響さんと一緒に日本か。仕事で戻るわけだから浮かれてばかりもいられないけど、やっぱり楽しみだな……)



~続く~




メール


タイトル・こんなに早く


お前と高知に行くことになるとは、予想外だった。

いずれは、連れて行こうと思っていたが、嬉しい誤算ということにしておいてやる。

お互い仕事で、あまり時間がないと思うが、それなりに楽しめる旅にするぞ。






感想で~す♪

お久しぶりで~す(*゜▽゜ノノ゛☆ 本当にかな~り久しぶりの更新になってしまいました(~_~;)

元気に過ごしてはおりました♪ 人様のブログを読み逃げすること毎日( ̄▽+ ̄*) 乙ゲーもやったりやらなかったりではありますが萌えもきちんとしておりました(≧▽≦)

……が! レポする時間がまったくなかったんです!!

新学期が始まってからというもの、昼間は長男の療育施設にいて、夜は疲れて早々に眠くなり…。子どもが起きてるとレポできないし、子どもたちが寝たら私も眠くなるしで気がつけば5月!! ちなみに怪盗の4月の番外編手つかずでございます((>д<))

相も変わらずバタバタではありますが、なんとか響の続編に手をつけることができました\(^_^)/

また更新が不定期になるかもしれませんが、がんばってやりきりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

…そして、流輝の女神編や京橋さんの続々編は様子見つつ更新再開できればと思っております。

あ!! 桐沢さんの続々編レポ読んで終わってる∑ヾ( ̄0 ̄;ノ

ネタバレになります。



3人ママの慌ただしさ~自閉症児たちのママが乙女ゲーやってます-2013_home_480.jpg



昨晩、仕事の付き合い飲みで酔っ払って帰って来た流輝さんを介抱し、私はそのまま流輝さんの部屋で寝てしまった。


「ん……朝?」


時計を見ると、もう8時を指している。


「えっ! もう、こんな時間!?」


そろそろ流輝さんを起こさないと遅刻してしまう。


「流輝さん、起きてください」


流輝「……うん?」


「起きてくださーい! 遅刻しちゃいますよー」


流輝さんが寝ぼけ眼でジッと私を見てきた。


流輝「あれ? なんでお前がいるんだ?」


「流輝さん、昨日酔っ払っちゃって、私が介抱したんですよ」


流輝「そうだっけ?」


(流輝さん、すっかり忘れちゃってる)


「流輝さんが、私の服を掴んで離さなかったんです!」


流輝「ああ、そっか、悪かったな」


「それより、そろそろ支度しないと遅刻しちゃいますよ?」


流輝「まだ眠い」


「もー、流輝さんってば!」


流輝さんをベッドから引きはがそうとした時、突然グイッと腰に抱きつかれた。


「! 流輝さん!?」


流輝「……気持ちいい」


「!」


流輝「お前の体つきっていやらしくてオレ好みなんだよな」


「いっ、いきなりなんですか!?」


(いやらしいって……)


照れて離れようとする私を、流輝さんは許してくれない。


流輝「お前ってよく食うし、太りやすい体質だろ」


「! ちょっと、ひどい……」


流輝「だから……結構努力してるんだろ?」


「えっ……」


(流輝さん、そんな風に思ってくれてたんだ……)


図星でなにも言えなくなってしまった私を、流輝さんはジッと見つめてきた。


流輝「お前の体は何度も触ってるから、オレにはわかるんだよ」


「!」


胸がドキドキ高鳴って、流輝さんにまで聞こえてしまいそうだ。


流輝「お前って」


「……」


流輝「いい女だよな


流輝さんはそう言うと、もう一度ギュッと強く抱きしめて私の体を離した。


「はっ、早く支度してください! 会社に遅れちゃいますよ…!」


流輝「わかったよ」


(まだドキドキがおさまらない……)


タジタジになりながらも、私は流輝さんを仕事へ送り出した。



☆☆☆☆☆☆



黒狐を出て自宅に帰ろうとした時、健至から電話がかかってきた。


「もしもし、健至?」


健至『詩菜、悪い! この前洗濯に頼んだ消防服の替えが急きょ必要になったんだ! 今から来てもらったりできるか?』


健至の声からすごく慌てているのが伝わった。


(めずらしいな…)


「わかった! すぐ行くね」


私は急いで健至の消防服を、自宅へ取りに行った。



☆☆☆☆☆☆



急いで消防服を届けに行くと、健至が笑顔で待っていた。


「はい、消防服」


健至「本当に助かったよ、ありがとうな!」


「どういたしまして。間に合ってよかった」


健至「詩菜、もしかして走ってきた?」


「うん、ちょっとだけ」


健至「ごめんな」


「ううん、健至のためだもん!」


健至「……」


突然、健至は私の顔をジッと見たまま黙り込んでしまった。


「どうしたの? 健至」


健至「…いや」


(どうしたのかな? 具合でも悪いのかな?)


すると、健至の顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「健至、顔赤いよ。大丈夫?」


健至「いや…」


「熱あるのかな?」


おでこに手を当てようとすると、健至がその手をギュッと握りしめた。


「健至?」


健至「ちょっとこっち…」


そう言って健至は、私をひと気のない建物の裏側へと連れて行った。



☆☆☆☆☆☆



すると突然、健至のたくましい胸板が目の前に迫り、そのままギュッと抱きしめてきた。


「!」


健至「さっきまで訓練してたから、汗臭かったらごめんな」


(健至…すごいドキドキしてる)


「……健至、突然どうしたの?」


健至「すげー元気出た!」


「?」


健至「詩菜の笑顔は世界一。いや……宇宙一だな!」


「もう、大げさだよ」


健至「大げさなんかじゃない。詩菜の笑顔にすげーパワーもらってる。いつもありがとうな!」


「そんなこと…私も健至の笑顔に励まされてるよ」


健至「ハハッ」


健至は照れたように私の髪の毛をグシャグシャっとすると、仕事に戻って行った。



☆☆☆☆☆☆



消防署を出たところで、今度は宙からメールがきた。


「!」


メールには、『僕を助けてほしいんだ』と書かれており、謎の地図も添付されている。


(助けてって、どういうこと!? まさか変な事件に巻き込まれたとか…!?)


私は地図が示すビルへ急いで向かうことにした。



☆☆☆☆☆☆



メールに添付されていた地図を頼りに、私はビルの前まできた。


(どうしよう…慌てて1人で来ちゃったけど、誰かに相談した方が良かったかな。で、でも、事態は一刻を争うかもしれないし! 宙になにかあったら……)


私は勇気を出して、ビルの扉をグッと開けた。



☆☆☆☆☆☆



ビルの中は、撮影スタジオだった。

たくさんの撮影道具が並べられていて、スタッフが慌ただしく動いている。


「えっ…!?」


(どう見ても監禁場所じゃ…ないよね)


呆然としていると、宙が私に駆け寄ってきた。


宙「来てくれてありがとー詩菜ちゃん!」


「宙! 大丈夫なの?」


宙「んー、なにが?」


「だって、『僕を助けてほしいんだ』って……」


宙「実はね、知り合いに頼まれてモデル引き受けたんだけど、急に絡み役のモデルさんがキャンセルになっちゃって! それで、詩菜ちゃんに、代わりにモデルになってほしいなって思ったんだ」


「私がモデル?」


宙「うん」


「ムリムリ、私になんて絶対無理だよ!」


慌てて撮影スタジオを出て行こうとすると、プロデューサーがやって来た。


プロデューサー「宙くん、もしかしてその子?」


宙「うん♪」


プロデューサーはジロジロと私を見てくる。


(どうしよう……なんか怖い!)


プロデューサー「君いいね! さすが更科くんの紹介だ」


宙「でしょ~♪」


2人は私そっちのけで、あっという間に出演の話を進めてしまった。


宙「ねえ、プロデューサーさん。詩菜ちゃんの今着ている服も、イメージぴったりで可愛くないですか?」


プロデューサー「確かに!」


宙のアイディアで私服のまま撮影をする方向で話が進んでいく。


(こんな格好だし、やっぱり無理! 私にモデルなんて…)


「宙、私…」


宙「大丈夫、大丈夫! 僕がリードするから」


「……本当?」


宙「うん! 僕を信じて! それに…詩菜ちゃん、最高に可愛いから自信持って大丈夫」


上目づかいにのぞき込まれ、思わず顔が赤くなる。


(宙がそこまで言うなら…)


戸惑いながらも、撮影に臨むことになってしまった。



☆☆☆☆☆☆



無事に撮影が終わった後、宙がジッと私を見つめてきた。


宙「今日は急にごめんね! でも、詩菜ちゃんとっても可愛かった。出会った時も可愛かったけど、今はもっと可愛い」


チュッ。


「!」


宙がほっぺにキスをしてきた。


宙「詩菜ちゃん、お肌もキレイにしてるよね。お手入れとか大変だよね。だってすべすべしてキモチいいもん」


宙はまじまじと私を見ると、キスしたばかりの自分の唇の感触を確かめるように触った。


宙「どうしよう、もっとすごいコトしたくなってきちゃった」


(えっ! すごいコト!?)


宙「詩菜ちゃん、僕……」


「ひ、宙?」


宙はいたずらっぽく笑うと、さらにぐいっと近づいてくる。


宙「僕、ガマンできないかも」


「だっだめだめ!」


慌てて宙にバイバイをして、撮影スタジオを出ていった。



☆☆☆☆☆☆



モデルの仕事を終えて宙と別れた後、緊張が取れたせいかお腹が空いてしまった。

ふらっと黒狐へ向かうと、集さんが出迎えてくれた。


集「いらっしゃい、詩菜ちゃん。お腹ペコペコって顔してるね」


(ばっ、ばれちゃった)


集さんは夜の仕込み中だった。


「忙しい時にごめんなさい! 私、手伝います」


集「簡単なものだったらすぐに作れるから座ってて」


「でも…」


集「いいからいいから。ゆっくりしてて」


集さんは手伝おうとする私を、席に促した。


「ありがとうございます」


集「ちょっと待っててね。詩菜ちゃんのために腕ふるっちゃうから」



☆☆☆☆☆☆



集「はい。詩菜ちゃんお待たせ!」


目の前に、ジャージャー麺が置かれる。


いつものジャージャー麺と違い、野菜がいっぱい盛られている。


「わぁ、すごい! お野菜がいっぱい」


集「名付けてジャージャー麺スペシャルお野菜盛りパージョン!」


「すごーい! おいしそう」


集「毎日遅くまで働いて、それで家に帰って家事もきちんとこなしてるんだろう? 本当にお疲れ様。ちゃんと栄養あるもの食べないとね」


「そんな…」


(集さん、そんな風に思っていてくれたんだ…。当たり前のようにがんばっていたことを褒められるって、なんだか嬉しいなぁ)


集「さ、食べて」


「いただきます」


パクッ。


「おいしい!」


集「本当? 良かった」


「拓斗さんが知ったら、オレにも作れって怒っちゃいますね」


集「ははは。たっくんも栄養足りてないだろーから今度作ってあげるよ」


優しく微笑みながら私が箸をつつくのを見守っている集さんに、思わず照れながら話を続ける。


「これ、今度マネして作ってみます。こんなにうまくは作れないと思いますけど」


集「そんなことないよ。詩菜ちゃんはお料理もすっごくうまくなったし、いいお嫁さんになるよ」


「そんな、まだ全然です!」


集「詩菜ちゃんは謙虚だなぁ。この前作ってくれたハンバーグも、すごく美味しかったし。あれで胃袋捕まれない男はいないよ」


集さんの笑顔につられて、私も笑ってしまう。


(集さんって、私のテンションを上げるのがうまいなぁ)


「ありがとうございます。お料理ますますがんばる気になりました!」


集「またオレのために作ってね」


「はい」


集「うん、約束」


集さんと指切りげんまんをした。


(集さんといると、すごく癒される…)


そんなことを思いながら、私は黒狐を後にした。



☆☆☆☆☆☆



黒狐からの帰り道。

なにやら宝石店の前に人だかりができていて、騒がしい。

近寄ってみると、人だかりの中心に見慣れた顔がいた。


達郎「詩菜」


「達郎! なにか事件が起きたの?」


達郎「ああ。宝石店に強盗が入った」


「そうなんだ…犯人は捕まったの?」


達郎「いや、まだ逃走中なんだ」


(ここから博物館って近いよね……大丈夫かな)


心配になり、勤務している博物館に連絡をいれてみた。


プルルッ。


「もしもし、鴨野橋くん?」


近くの宝石店に強盗が入ったことを伝える。


「犯人はまだ捕まっていないみたいだから、充分に気をつけてね。それじゃ…」


電話を切ると、達郎が微笑みながら私の顔をポンッとなでた。


達郎「相変わらず仕事熱心だな」


「ちょっと心配になっちゃったから…」


達郎「博物館も心配だけど、オレはお前の方が心配だ。送っていけないけど、気をつけて帰れよ。なんかあったらすぐに連絡しろよ?」


「うん、ありがとう」


(達郎って刑事としても幼なじみとしても優しくて頼りになるなぁ)


達郎「オレも刑事としてお前を見習ってもっとがんばるよ。じゃあな」


「うん、がんばって!」


達郎はさっそうと仕事に戻って行った。


(私、昔から達郎のことあこがれてたんだよなぁ)


去って行く達郎の背中を見つめながら、そんなことをしみじみと思った。



☆☆☆☆☆☆



自宅へ帰ろうとしたところ、拓斗さんから『そっこー来い!(`・ω・´)』というメールが来た。


(拓斗さんらしいなぁ)


相変わらずなメールに、思わず頬が緩んでしまう。

私は足早に、拓斗さんの家へと向かった。



☆☆☆☆☆☆



インターフォンを鳴らすと、すぐに拓斗さんが出てきた。


拓斗「来んのはや……!」


「だって、私も拓斗さんに会いたいと思ってたから…」


拓斗「!」


拓斗さんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。


拓斗「パーカ、オレの方がぜってー思ってたし」


拓斗さんはそのまま口ごもってしまった。


(ふふっ拓斗さん、かわいい。なーんて。こんなこと言うと、怒られちゃいそうだけど…)


「拓斗さん。前よりそういうことちゃんと言ってくれるようになりましたよね? 嬉しいです」


拓斗「う……うっせー」


拓斗さんは照れながら、グイッと私の腕を引っ張り、自分の体に収めた。


「!」


拓斗「遠いんだよ、距離が。もっとこっち来いよ」


「…はい」


拓斗さんと私は向き合う形で抱き合った。


拓斗「詩菜、顔上げて」


「なんか…恥ずかしいです」


(この状態で、拓斗さんの顔見れないよ)


拓斗「オマエの顔、見たいんだよ」


「……でも」


戸惑っていると、拓斗さんは私の頬に手を当ててグッと顔を上げさせた。


「!」


拓斗「やっと見れた


「……」


拓斗「……」


しばらく見つめ合った後、拓斗さんは私の髪の毛を優しく触った。


(まるで壊れものを扱うみたいに、拓斗さんはいつも私に優しく触れてくれる)


「私、拓斗さんに触られるの好きです」


拓斗「ばっ……突然なに言い出すんだよ!」


「すいません、つい……」


(思わず本音が出ちゃった…。ちょっと、大胆だったかな)


拓斗「なんだよ、それ……スゲー、可愛い」


拓斗さんがギュッと強く抱きしめてきた。


拓斗「オレ、すげー考えんの」


「?」


拓斗「オマエのこと」


「……私も、拓斗さんのこといっぱい考えちゃいます」


拓斗「オレの方がぜってー考えてるし」


「私だって負けません! ……って、さっきと同じ会話してません? 私たち」


拓斗「……そうだな」


思わず笑ってしまうと、拓斗さんもつられて笑ってくれた。


拓斗「初めてなんだよ」


「えっ?」


拓斗「自分からメールしたいとか、今すぐ会いたいとか思ったの…詩菜が初めて」


「拓斗さん……」


拓斗「だから、詩菜のこと考えてると、胸のこの辺がポカポカしてくるっつーか……」


「……」


拓斗「つまり、詩菜ってスゲーってこと!」


「そんなことないです! すごくなんてないです」


(拓斗さんがこんな風に思っててくれてたなんて。いつもあまり本音とか聞かせてくれないから嬉しい…)


拓斗さんは、さらに力を込めて私を抱きすくめる。


(どうしよう。ますます拓斗さんのこと、まっすぐ見れないよ……)


すると耳元に、拓斗さんの唇が近づいてきた。


「!」


拓斗「こんなキモチ教えてくれて……アリガトな


そう言うと拓斗さんは、私の耳にそっとキスをして、照れた笑顔で私を見た。



~HAPPY END~





感想で~す♪

約1ヶ月ぶりのレポになりまーすo(〃^▽^〃)o♪

実は、怪盗自体も1ヶ月ぶりぐらいにアプリ起動しました(^o^;)

「今夜アナタと眠りたい」のシーズン2に手を出して、1人攻略してやめるわ、残り2週間もないのに「恋の続きはハネムーンから」に入会するしと、私の気持ちと一緒でゲームも模索しておりました。

実は、もうゲームもやめてもいいかも…とか思ってた時もありましたが、改めて久々に怪盗やると、やっぱりまだまだやめれないな~と感じてしまいました(-^□^-)

今回の褒めカレは、全員と付き合ってる設定なので、違和感はありましたが(達郎に関しては付き合ってる設定ではないような気がする…)、やっぱりたっくんと流輝はよかった~(///∇//)

これはゲームの話ではありません。

近況と
震災関連のお話ですので、読みたくない方はスルーして下さい。
















お久しぶりです。詩菜です。


祖母の死から2週間が経とうとしています。

通夜や告別式などをして、私の気持ちも落ち着きました。

今回の事ではたくさんのお悔やみのお言葉をいただき、ありがとうございます。

コメントの返信など、今しばらくお待ちいただければと思います。

実は、祖母の死は割りと早く、落ち着いたのですが、通夜後から風邪をひいてしまい…疲れがたまっていたのか、1週間近く微熱状態の生活をしておりました。

今は風邪も治り、レポこそしないものの、乙女ゲーもしっかりやっております(^_^;)


「今夜アナタと眠りたい」に入会してしまいました!

私、シーズン1を相葉くんだけクリアしてエピもやらずに一度退会してるんですよね~。

で、再入会してシーズン2の三島秀を先読みでクリアして、相葉くんのエピを細々とやっております。



なのに、気持ちがまだレポという気持ちに向かないので、もうしばらく見守っていただければと思います。

……まあ、リアルが子どもたちの学期末などで忙しかったりするのも理由ではありますが(><;)














前置きが長くなりました…。

東日本大震災から今日で2年が経ちました…


全国のニュースでは2年というこの日、特集が組まれています。

でも、私の県ではこの2年、震災関連のニュースが流れなかった日は一度もありません。



私の住んでる地域は内陸部のため、津波の影響はありませんでした。

それでも壊れてなくなった建物もありますし、新しくできたお店もあります。

私の住んでたアパートも震災で壊れ、退去後、新しくなりました。

でも、車で20分も走れば、そこにはまだ津波のために壊れた家屋がそのまま残されていたりします。


この2年…復興はどこまで進んだのでしょうか…

まだまだ残されたままのがれきや、基礎だけが残ったままの土地などを見るたびに、復興はまだ始まったばかりだと思います


私の主人の実家も津波の被害に遭い、家は残ったものの、コンテナが家に突っ込み、柱がやられ、取り壊しました。

現在、もうすぐで新しい家が同じ土地に建ちます。



震災時のあの恐怖は今でも思い出すことができます。

無我夢中で家にいた2人の子どもと一緒に外に逃げて、地面でうずくまっていたこと

雪の降る中、小学生の娘を迎えに行ったこと

家の中は足の踏み場がなく、車の中で落ち着いたこと



復興と、行方不明の方が見つかることを祈りたいです…







大変申し訳ありませんが、私の母方の祖母が亡くなったため、しばらくブログを休止させていただきます。


レポなど中途半端にしてしまい、心残りではあるんですが、大好きだった祖母の死を覚悟はしていたものの、やはりショックで、どうしてもレポをする気持ちになれないのです。



気持ちが落ち着くまで、しばらく待っていただければと思います。

よろしくお願いします。