事実は小説より奇なり。
2万体以上の検死に携わった、
監察医の上野正彦さんの元には、
様々な難事件の検死や、
遺体の捜査に協力し、
監察医ならでは卓越した観察力と、
考察力で、迷宮入りと思われた難事件を、
多数、解決してきた。
ある時、ビルの屋上から転落し、
事故死と判断された遺体に、
両足の大腿骨頸部と肋骨が、
骨折していることに疑問を感じ、
上野さんが調べた結果、
転落死した人の死は、遺された家族へ、
災害保険が支払われるように、
仕向けられた自殺であることが分かった。
彼は死への恐怖を消し去るため、
後ろ向きのまま、ビルの屋上の床を蹴り、
自殺を図った。
そのため、両足で地面に着地したときに、
大腿骨の頸部骨折が起き、
尻もちによって背骨と腰椎が折れ、
前のめりになることで首が骨折。
打ち付けた反動で頭が振れ、
仰向けに倒れた、という、
上野さんが導き出した検死結果だそうです。
会社の経営が思うように行かず、
遺族にお金を残すため、死への恐怖に耐え
事故死に見せかけた自殺を装うという、
その覚悟を思うと、いたたまれなくなる・・。
事実は小説より奇なり。
沖縄に住む中学生、安室朝陽、
上間夏月、上間浩の3人は、
ある日偶然、入り婿の東昇が、
義父母を、崖から突き落とす殺人現場を、
カメラに収めてしまう。
3人は、昇に詰め寄り、証拠画像を手に脅し、
1千万円の大金をせしめようするが・・・。
残虐非道な殺人犯と、
したたかな少年たちとの心理戦。
それと、周りを取り巻く、
大人たちの陰謀が渦巻く。
『世界仰天ニュース』にありそうな、
リアルなフィクション映画。
中国の小説家、”ズー・ジンチェン”の代表作、
『The Gone Child』を基に、
『バッド・キッズ 隠秘之罪』の邦題で、
2021年に放送された、ネットドラマの、
クライム・エンタテインメントを、
沖縄を舞台にして、金子修介監督が、
邦画として映画化。
主演は岡田将生、羽村仁成。
共演は黒木華、羽村仁成、江口洋介ら。
冒頭から、風光明媚な沖縄の海をバックに、
あっと息を飲む、インパクトのあるシーンが・・。
一見、さわやかな好青年が、
完全犯罪を目論んだものの・・、
そこから、物語は進んでゆく。
沖縄という土地柄、産業は乏しく、
権力を持つものには逆らえない。
治安も、政治も闇を抱えていた。
少年たちも、貧困、虐待、両親の離婚など、
それぞれ家庭環境に、問題を抱え喘いでいた。
そんな中、掴んだ一攫千金のチャンス!。
彼らは警察に通報するのよりも、青年を脅し、
大金をせしめることを、選んだ。
美しい自然と、長閑な沖縄の街並みに蠢く、
完全犯罪を狙い、証拠隠滅のため、
殺人を重ねる犯人と、
その犯人を、したたかに追い詰める、
子どもたち三人組との攻防戦。
犯行は、収拾付かないほど、エスカレートし、
入り婿の昇と親族を知る、地元の刑事も加わり、
息を飲む、ショッキングなスパイラルは、
予想もつかない三つ巴の展開に・・。
”ダルビッシュ”に似ている岡田将生は、
『ゆとりですが何か』とはガラッと違って、
呼吸をするように、人を殺害する、
冷徹無比の凶悪犯を演じています。
子役の子達も、悪事を重ね過ぎて、
段々と倫理観が麻痺する様子がリアル。
沖縄の街で起こる、リアルで凄惨な殺人事件の、
一部始終を見せられて、観ているこちらも、
段々麻痺して、目を背けることも忘れる。
『モンスター』ばりの、悪行三昧に、
どういった心境が、彼をそうさせたのか、
感情移入すら出来ない程、後味悪い・・。
スティーブン・キングの小説に、
『ゴールデン・ボーイ』と言うのがありましたが、
これも、後味悪い。
もし監察医の権威、上野さんが沖縄にいたら、
このトリックを見破れたかも・・。
『死体は語る』の本にも書いてありましたが、
自殺か事故死か、ためらい傷かは、
専門家が見ると、わかるそうですが、
具体的に公表すると、悪用されてしまうので、
トップシークレットだそうです。
『仰天ニュース』の、再現ドラマを、
観ているようでしたが、
見応えはありました。
印象に残る、すごい映画でした!。