映画などの業界用語に、

 「提灯なめ」という言葉があります。

 

 

昔、まだ無名だった頃の、遠藤恵一さんが、

 インテリタイプの、暴力団組員の役をもらい、 

  ただセリフを言うだけでは、

   物足りないと感じた遠藤さんは、

 

「あの~監督、シーンのメリハリを出したいので、

  その辺の若手をドツいて良いですか?」

 

 と提案したところ、監督は激怒し、

  さらに監督から

 

 「お前なんかに言われる筋合いないんだよ!、

   お前は提灯ナメてろ!」と言われ、

 

本来は、遠藤さんのアップシーンだったのが、

 急遽、物陰に小さく映り込むだけの、

  出番になってしまったそうです。

 

「ナメ」とは、モノ越しに対象を映す撮影法だそうで、

  提灯をなめるように、小さく映り込む、

   脇役以下の扱いでした。

 

そんな遠藤さんも、この映画では、

 ある意味主役級の、

  相当な存在感を出していました。

 

ヤクザの抗争を題材にした、

 『アウトレイジ』三部作を完結させ、

   北野武監督としては、6年ぶりとなる,

           新作映画で、『座頭市』以来の時代劇。

 

 

北野武監督が、構想30年を経て、

 戦国時代の本能寺の変を、

  誰も思いつかない独自の解釈で、

   バイオレンス満載で描く、歴史超大作。

 

天下統一を掲げる織田信長(加瀬亮)の、

 忠実だった家臣、荒木村重(遠藤憲一)が、

 突然反旗を翻し、戦場から失踪し、

  行方をくらました。

 

 

信長は羽柴秀吉(ビートたけし)や、

 明智光秀(西島秀俊)ら、配下の武将を集め、

   自身の跡目相続をちらつかせ、

   村重の捕獲を命じる。

 

 

そんな中、

 軍司・黒田官兵衛(浅野忠信)に、

  捕らえられた、村重は、

   光秀に引き渡されるも、

    

 信長路の確執から、

  光秀は村重を匿い続け、

 

 秀吉ら、天下を狙う家臣たちによる、

  信長の跡目狙いの醜い争いが、

   火ぶたを切る。

 

 

閑静な田園風景をバックに、

 残酷で壮絶な、容赦ない殺戮シーンが、

  

 『プライベート・ライアン』のように、

   これでもかと、展開し、

    思わず目を背ける!。

 

 

断頭シーンでは、首を落とす土壇場まで再現してる!。

 

やってることは、『アウトレイジ』と同じで、

 残虐非道な悪人たちの、熾烈な権力争い。

 

 人間の残虐性、暴力性満載の、

  北野武ワールド炸裂!。

 

 

また、人脈の多い北野監督が集めた、

 個性あふれる、キャストが超豪華!。

 

 

 

一際目立つのが、加瀬亮演じる、

 信長のネジのぶっ飛んだ狂気!。

 

 

『永遠の僕たち』で、

 特攻隊の英霊を演じた頃の、

  加瀬さんとは、想像できない、

   暴君ぶり!。

 

 

『アウトレイジ』の、石橋蓮司さんや、

  中尾彬さん、ピエール瀧以上に、

   エンケンさんを、容赦なくイジメまくる、

    迫真の演技!。

 

 

北野武さんの、「野球やろうか?」で、

 壮絶な殺され方された、反動かな?。

 

 

 

 

 

 

『湯けむりスナイパー』で、”源さん”を演じた、   

  エンケンさんも、すごい演技!。

 

 

 

とにかく顔が怖くて、眼力があって、

 西島さんとのボーイズラブや、

  ヤキモチやく、お茶目な演技もグー!。

 

 

 

 

『MOZU』で、武さんと共演して、

  酷い目にあった、西島さんも、

   

 この中で、一番マトモかと思いきや、

  やっぱりぶっ飛んじゃってる!。

 

 

『座頭市』で、敵役だった浅野さん。

 

羽柴秀長役の大森南朋との、

 息のあった漫才みたいな掛け合いが、

  コミカルで、エグい描写の中で一服できた。

 

 

最後に喋るまで、誰だかわからなかった、

 大竹まことさん、良い声だった。

 

千利休の、岸田一徳さん、

 はまり役だった。

 

 

家康は、この人しかいない!、

 と思わせる飄々とした演技の、

  小林薫さん。

 

 

影武者、何人おるんじゃい!。

 

”チコちゃん”の声の人、木村祐一さん演じる、

 元忍者の芸人、曽呂利新左衛門と、

 

 

中村獅童さん演じる、侍大将を夢見る、

 元百姓、難波茂助を語り部にして、

 

  

 庶民の目から、戦国武将たちの、

  浅ましさと狂乱ぶり、

   

 現代の世も通じる、権力者たちの、

  欲と猜疑心に塗れた、

    時代の闇を浮き彫りにしています。

 

そして、漫画のようなあのラスト・・。

 

 

 

北野監督ならではの編集で、

 映していないシーンから、

  見せないシーンから、

   

 その後の事を、観た人其々が、

  想像しながら、ゾッとしたり、

   クスッと笑ったり、

 

 まさに歴史の解釈を、

  映画の真意を想像しながら、

   楽しめる作品でした。