最近、ますます映画を観る機会が増えまして、
今回も、観るつもりのない映画を、
期待しないで観に行ったンですが、
これが、なかなか良かったですよ。
東日本大震災をきっかけに夫(光石研)が失踪。
親の介護を押しつけられ、
ストレスを溜めた妻(筒井真理子)は、
それを機に、新興宗教にのめり込み、
夫の親も他界し、息子(磯村勇斗)も、
家を出て自立し、ひとりで慎ましく、
穏やかに暮らしていた。
そんなある日、10年以上失踪していた夫が、
何事もなかったように、
ヒョイと帰ってきた。
しかも、癌を患っていると言う・・。
さらに、息子が結婚相手を連れて、
帰省し、その彼女は、障がいを持っていて、
しかも、妊娠していると告げられる・・。
パート先でのトラブルや、
近隣の住民とのトラブルなど、
次々と降りかかる葛藤が、
”波紋”のように波立つ・・。
現代社会に潜む、
対人関係、夫婦感、介護、
新興宗教、障害者差別など、
ある女性の日常を通して省みる、
サスペンスフルな人間ドラマ。
なのですが、結局、
大きな事は何も起こらない日常が続く。
役者さんが実力派だらけなので、
絶望的な状況なのにも関わらず、
なぜか可笑しく笑ってしまい、
穏やかなシーンなのに、
最悪な事を想像して緊張してしまう。
特に、新興宗教の集会で、
踊るシーンは、コミカルなのに、
不気味で恐怖を感じました・・。
庭一面の、見事なガーデニングが、
ガラッと、枯山水に変わるのも、
心境が、180度変わった事を、
表現してるのかな?。
登場する女性たちは、
みんな何かと闘っている。
それでも、映画を見に来た、
主婦の皆さんが共感を持つ、
密かな逆襲をするシーンでは、
クスクス笑う声が聞こえ、
シリアスなのに、
なかなか楽しめる作品でした。
そして、ゴミ屋敷のシーンは、
東日本大震災を彷彿させ、
ハッとさせられる。
あの当時は、何よりも恐れていた放射能。
家の近所の自販機の水も、
すべて売り切れてましたから・・。
コロナでも、震災でも、
初期の頃は差別問題、ひどかったですよね。
喉元すげれば、なんとやらで、
今は、マスクすらしない人も増えました。
劇中に登場する、
耳の不自由な息子の彼女さんは、
本当の聴覚障害者の、
津田絵理奈(つだ・えりな)さん。
先天性の難聴ながら、
女優を目指し、
多くのTVドラマにも出演する実力派。
耳が聞こえないから、
演技は無理だろうと言う、
意見をはねのけ、
映画では、常に笑顔でいる反面、
義理のお母さん(筒井真理子)の、
心に亀裂を入れる”波紋”を、
テポドンのように叩きつける、
したたかな女を演じていました。
さすが!。
劇中になぜか流れる、フラメンコの音楽。
”パコ・デ・ルシア”の、
「広い川」が聴きたくなった・・。
波紋・・・日常は同心円を描きながらも、
波紋によって、少しづつ変化し、
ぶつかり合い、重なり合い、
相殺したり、増幅したりして、
やがて、穏やかなステージに向かう!。
「絶望を笑え!」
まさにそんな映画でしたね!。