毎年、12月25日にTBSラジオ、
「大沢悠里のゆうゆうワイド」の枠の人気コーナー、
「毒蝮三太夫ミュージックプレゼント」で、
聴いたクリスマスのお話。
実に毎年、クリスマスの日だけに、
一部の地域で、マムシさんが、
公開生中継で放送する中で、
語られた物語。
「昔々、とあるヨーロッパの、
寒い寒い国の町外れに、
貧しい病気がちなお母さんと、
小さな男の子が2人だけで住んでいました。
内職で生計をたて、
爪に灯をともす貧しい暮らしの一年のなかでも、
今日は特別な日、クリスマスイブです。
「ねえ、ママ。今日はクリスマスイブだね」
男の子がそう言うと、
お母さんは内職の手を休めて、
小さな声で「そうね」といいました。
「ねえ、ママ。今日はサンタクロースが来るんだよね。
サンタクロースが靴下の中に、
プレゼントをいっぱい持って入れて帰ってくんだよね。
ねえ、ママ。そうだよね。」
貧しい暮らしの中で、
オモチャも買ってもらえない坊やが、
どこで伝え聞いたのか、
期待に震えてひとしきりまくしたてると、
お母さんは「そうね」と力なくいいました。
「そうだ、サンタクロースが来るんだ。
じゃあ、今日はいい子にして早く寝よう。」
坊やは、嬉しそうに枕もとに靴下を置いて、
すやすやと寝てしまいました。
翌朝、坊やは靴下の中を見ました。
靴下の中にプレゼントは何も入っていません。
一枚の紙きれの手紙だけがありました。
「坊や、メリークリスマス。サンタさん来なかったわね。
来年はきっとくるようにお願いするから。
ごめんなさい・・・。ママより。」
がっかりした坊やは、
「なんだ、サンタクロース来なかったじゃないか。」
ねえ、ママ。来なかったじゃないか。」
「そうね、サンタさん忙しかったのかしらね。」
今にも泣き出しそうな、
お母さんの悲しそうな顔を見た坊やは、
急に叫びました。
「いやー来なくてよかったんだよ。」
「来なくてよかったサンタクロース。
サンタがさあ、僕より悲しい子や、
親のない子、家のない子、
飢えてる子のところへ行くんだろ。
だから僕のところへ来なかったんだ。」
「来なくてよかったサンタクロース。
来なくてよかったサンタクロース。わーい、わーい。」
小さな男の子は空っぽの靴下を握り締めて、
雪の積もっている庭に元気に駆け出して行きました。
作・演出・構成は、
毒蝮三太夫こと、マムちゃん。
さっきまで、公開中継に集まった、
地元のじいちゃん、ばあちゃんを捕まえて、
ジジイ,ババァと毒舌で、
爆笑を放っていたのに、
こんなシリアスな物語を聞かされたら・・。
クリスマスといえば、
孫にオモチャでも買ってあげたいと思うハズ。
飴玉も買えなかった、
貧しい時代を生き抜いてきた世代の人なら、尚更・・。
マムちゃんが、台本も読まず、
集まった皆の顔も表情をみながら、
淡々と肉声で語るので、
話の内容はその都度かわるので、
感情が籠ります。
さっきまで、破顔大笑していたばあちゃんが、
この話を聞いて号泣したことも・・。
年の瀬の、慌ただしい頃だから、
ふと、足を止めて、
ラジオに耳を傾けて、考える、
ひと時があってもいいのかも・・。