先日大阪に行って妹に会ってきたが、その時、妹が預かってくれていたものを受け取った。



わたしの臍の緒と母子手帳である。


両親は2世帯住宅で長男である弟一家と暮らしていたが、コロナ禍が始まった2020年の初めに相次いで世を去った。父は脳内出血、母はよくわからない衰弱で急死した。半年ほどして、弟は両親が住んでいた1階部分が空っぽになった家を売却し、大阪市内のマンションへ引っ越した。わたしの臍の緒と母子手帳は、両親の持ち物を処分している際に弟夫妻が見つけ、妹に託してくれたものだ。


臍の緒と母子手帳をいまさら貰ってもどうしていいか正直わからない。旦那にわたしの臍の緒が出てきたんだよ、というと、そんなもんどうするんだ?と聞かれた。でも捨てる訳にもいかない。


さらに、母の日記も見つかり、それがわたしの誕生に関するものだったので、それも妹が預かってくれていた。


母は綺麗な字を書く人だったが、日記もわかりやすい字で綴られている。病院から実家へ行ったり、婚家へ戻ったりそういうことも書かれている。実家にはほぼ1カ月滞在していたようだ。



東京オリンピックが始まったという記録もあった。



日記はたったの3ページ。11月11日で終わっている。忙しくなって書く暇がなくなったのだろうか。


これも今さら貰ってもどうしようもない。でも捨てるわけにもいかない。母が生きていたら、なんで11月でやめたのかとか、夜泣きは酷かったかとか、いろいろきけるのに。日記はそもそもプライベートなもので、母はこれをおそらく箪笥の奥にしまいこみ、でもわたしが母になった時にでも見せるつもりだったのだろうか。わたしは結局子供を産まなかったし、母はそのうちアルツハイマーで記憶を全部失くしてしまった。亡くなって初めて日の目を見た日記だ。


わたしが死んで、誰かが持ち物を処分していたら、臍の緒と母子手帳と日記がクローゼットの奥から見つかる。おそらくすでに旦那は先立っているし、日本にいる弟妹やその子供たちが立ち会うこともないだろう。イギリス人の業者が箱に放り込み、日本語が読めないから、それにどうみても金銭的価値はないから、あっさりゴミとして捨ててしまうかもしれない。それが一番罪のない処分の仕方になるかと思う。