水曜日、虎ノ門の語学学校に、医療通訳コースのサンプルレッスンを受けに行ってきた。

身体の各部や病気を英語でなんていうか。わかってはいたけど、そっち関係の語彙は弱い。身体の各部の名称については日本語でも曖昧だったりする。サンプルレッスンは肺関係だったのだけど、例えば気管支がどんどん枝分かれした先には肺胞っていうのがあって、そこで血液中の酸素と二酸化炭素の交換をする…というメカニズムは昔習ったけど、ほぼ記憶から抜け落ちていた。

もちろん肺胞に当たる英語も知らなかった。alveolar というらしい。肺 lungは知ってるけど、肺のという形容詞はpulmonary。これも初めて聞いた。肺胞もalveolarもpulmonaryも日常会話に出てこないもんね。

ということで、そのコースでは、背景知識として医学、薬学や生物学の勉強もかなりやらされるらしい。実はこのコースは、現役の医師、看護師や製薬会社の社員もよく受講するそうで、そういう人たちは、背景知識では一般人より何歩もリードしているから有利ではある。英語力や通訳スキルは別途身につけないといけないが。

ほかには担当分野を政治経済から医療にも拡げたい通訳の人も受講するらしい。こういう人は英語力、通訳スキルはすでにあるから、背景知識の勉強の比重が大きくなる。

そしてどっちもできない人は…先が思いやられる。わたし自身20年前ならチャレンジする気にもなっただろうけど。今回はあまり乗り気にならない。

それに、わたしは英語力はある方だと思うけど通訳スキルがない。逐次通訳のスキルで一番重要なのはretention 、つまり通訳の対象が何を話しているかを脳にキープすること、そしてそれを淀みなく訳すのである。何話してたか忘れたら当然訳せない。それが忘れちゃうんだよね。特に切れ目なく長々と話されると…スポーツ選手のインタビューなんかは短い受け答えなんでなんとかなるけどさ。

日本で医療通訳をするなら、外国人患者と日本人医師や看護師の橋渡しをする、というのが主な役割になる。英語のネイティブスピーカーだけでなく、東南アジアや中東の人も対象になる。日本語は全然ダメでとりあえず英語では意思の疎通ができるってことでね。だけど一般人はネイティブでも医療の専門用語は知らないから、医師が言った専門用語を噛み砕いてわかるように説明しなくてはならない。



思ったけど、日本の医療通訳は、医師とは日本語で話すし、外国人患者が自分の症状を訴える程度の英語は大体わかるから、やるなら日本の方が楽だな。逆にイギリスだと患者が日本人で、医師の英語を日本語に直すことになる。インド系医師がまくし立てたら、何言ってるかわからないだろうなあ。もちろんさっぱりretentionもできず、当然一言も訳せない…うーむ。

とにかく重い気持ちでレッスンを終えたのだが、レッスン自体はそれなりにためになった。一番「へー」と思ったのが、結核はtuberculosis といって、結核関係の言葉はtubercul- で始まることが多いのだが、tubercul- をローマ字読みすると…ツベルクル…おお、ツベルクリンはそこから来てたんだ!目からウロコ。もうツベルクリンとか若い人は知らないのかな?

あとこのコースは、(関空そばの)りんくうタウンの病院の依頼と協力で10年前に立ち上がり、今も継続しているそうである。学校自体も大阪が本校らしい。親しみは感じた。