一昨日、プティ・セナクルの2024年新春初講座を開催しました。

 

テーマは、今、新宿のSOMPO美術館で開催中の「ゴッホと静物画 伝統から革新へ」。

ひまわりで有名なゴッホのそれ以外の花の絵、そして、そこに至るまでの美術的な変遷を美術評論家の西岡文彦先生がお話し、

淑女が愛し、用いてきたアンティークのなかの花の変遷を私がお話すると言う対談形式の講座です。

 

17世紀のオランダでは、いち早く宗教改革でカトリックの代わりにプロテスタントが台頭しました。

それとともに、それまで一番アカデミックであると考えられてきた

歴史や肖像画の代わりに静物画が描かれるようになりました。

プロテスタントは偶像崇拝をしてはいけないのですが、

そんな彼らが好んで描いたのが骸骨で、これはメメントモリ(死の時を思え)と言う意味。

キリスト像を掲げる代わりに骸骨を描いて

祈りの必要性を説いたのです。

 

そんなオランダで誕生したゴッホが静物画を描くようになったのは納得いきますよね。

彼は1886年パリに移ります。

その時に、愛する弟のテオが画家アドルフ・ジョセフ・モンティセリの花の絵が一面にかかったレストランで

パリへの到着を祝ってくれるたのです。

 

西岡先生がひまわりの絵の中で、もっとも素晴らしいものとイチオシする損保ジャパン所有のひまわり、またその一連のひまわりは

ゴーギャンが南仏に来たことを弟テオが自分にしたように祝ってあげたい、その気持ちから描かれたそうです。

しかしながら、そんな優しさはゴーギャンには伝わることはありませんでした。

敬虔なカトリックのゴーギャンとプロテスタントのゴッホは、やはり相交わることはなかったのですね。

 

ひまわりの絵は黄色のグラデーションで描かれいます。

その黄色は太陽に近い色で神々しい色とされていました。

ゴーギャンが描く絵は全て伝道。

南仏の空、麦畑、そして花。。。。

僧侶が敬虔に祈りを捧げるように、

世の中に存在する様々な素晴らしきものの美しさを発見し、人々を目覚めさすために描いたので、

決して自分の絵の技量を誇らしげに見せるために描かれたものではなかった。

それが先生の見解です。

 

一方、私はロココの時代に窓ガラスが大きくなり、室内に光が入ることによって微妙な色合い「パステルカラー」が人気になったことについてお話しました。

それにはヴェニスの女流画家ロザブラ・カッリエーラがパステルという、

画材を用いて

ロココの時代に重要視された「瞬間の美」を描くのに

油彩でも水彩でもなく、パステルという直接キャンバスに絵を描くことができる

いわば即効絵画の誕生が大きく役立っていたのだと思います。

 

花はいつの時代も心を癒し、生活に悦びを与えるもの。

気分が落ち込んでいてても、生の花の芳しい香りを嗅ぐと気持ちが高揚します。

 

18世紀、デュドロやダランベールの書いた「百科全書」によって職人が作る装飾美術に注目が当たった

そんな時代に、セーヴル磁器の絵付けに微妙なパステルカラーの花がモチーフになったというにはとても納得いくことだと思います。

 

それにしても、ジョセフィーヌ皇后が愛した細密画家ルドゥーテによって、花のモチーフは大きく開花するのです。

ルドゥーテについて初めて知ったのは、

46X33cmの紙ではなく薄く透明で白さが際立つ羊皮紙を用いて絵を描いていたということ。

その白さがあってこど、自然の植物の持つ微妙な色が出せたのだということを初めて知りました。

 

 

 

マリーアントワネットの姪で、ルイ14世の嫡子の末裔であるルイ・フィリップ王と結婚したマリー・アメリー・ブルボン・ド・シエクルが暮らしたノルマンディのユ城にも行ってみたいなあ。

あまり見ることができない19世紀初めのフランスの装飾美術が展示されている美術館だそうです。

そこには、シノワズリーの派手な色合いを投影した様々な花のモチーフの装飾美術が溢れているそうです。

(したのでお皿はマリーアントワネットの時代の自然主義のモチーフ)

 

 

そうそう、

5月から世田谷美術館で「民藝」の展覧会も開催されます。

その前に読んでおきたいのが、

西岡先生が15年かかって書き上げた新刊本『柳宗悦の視線革命』。

読み応えあって勉強になりますよ。