母御の見舞いに通う日々。

気が付けば


遠回りなのに

母と共に歩いた

懐かしい道を

歩いている。



「あの可愛い桃色の花は何かしら?」

好奇心旺盛な母が尋ねる声が風に乗って聞こえてくるような気がする。



血圧も熱も 不安定。
食事の量も 激減。

一日中 口を開いて寝ている。
口の中が乾き切っている。

時には痰が口の中に溜まりに溜まっていたり


何かひとつするのにも

医師や看護師の許可が要る



家に居たら・・・

家に居たら・・・


もどかしい

ただ もどかしい

既に覚悟を覚えているのか

家に帰りたいとも言わぬ母


もう一度

この道を通って

家に連れ帰りたい


今は

このままでは 連れて帰れぬ

叶わぬ想い



【この道】 北原白秋

この道はいつか來た道、
 ああ、さうだよ、
あかしやの花が咲いてる。


あの丘はいつか見た丘、
 ああ、さうだよ。
ほら、白い時計臺だよ。
 
この道はいつか來た道、
 ああ、さうだよ。
お母さまと馬車で行つたよ。
 
あの雲もいつか見た雲、
 ああ、さうだよ。
山査子の枝も垂れてる。