僕はコストコが大好きだ。
あの巨大な建物の中は、日本のスーパーにないワクワク感がある。
とはいえ、全ての量が多すぎるし、そんなに安くないので、あまり買うモノはなく、フードコートのホットドッグやピザを食べに行ってるみたいなところはある。
その日のコストコもサクッと買い物は終わり、レジで待っていると、僕の後ろにアメリカ人の夫婦が並び始めた。
年齢は僕と同じくらいか、少し下くらいの感じで、ガタイの大きさから横田基地の米兵さんが非番で買い物に来たのだろう。
その日は少し涼しかったので、男性はかなり年季の入ったくたびれたパーカーを着ていたのだが、その胸には【NO USE FOR A NAME】というロゴが書かれている事に、僕はすぐに気が付いた。
知らない方の為に、この【NO USE FOR A NAME】というのは、アメリカのパンクバンドの名前であって、今から30年くらい前に良く聴いてきて、僕も少し思い入れもあった。
現在は活動してないが、僕と同世代の方は知ってる人も多いだろう。
僕の経験だけでいうと、今まで知り合ったアメリカ人達は、僕と音楽の趣味が合う人はあまり居なくて、仲良くなって『どんな音楽を聴くの?』と質問すると、みんなR&BやHIP HOPを好み、僕が聴くようなパンクロックはアメリカだとマイナーな部類のようで、今まで分かり合えた事がほぼない。
今でもこそ聴く事はあまりないが、その男性の年齢から推測するに、同じ年代のパンクキッズだった事は容易に想像が出来た。
だからこそ、僕はそのパーカーのロゴを見た瞬間にテンションが上がってしまい、いきなりその男性に拙い英語で『僕もそのバンドが好きなんだ』と伝えてしまった。
そう伝えたつもりだが、僕の英語力だと『I like this band too!!』みたいな。そんなレベルだ。
男性は最初はかなり驚いた様子で、目を丸くしていたが、言ってる意味が通じたみたいで、ニコッと微笑んた。
その笑顔に安堵した僕は止まらなくなった。
オタク特有の共通の好きなモノを話す時に、急に早口になる、あの感じだ。
『ラグワゴォーン、ノゥーエフエックスゥー、ハイスタンダァドォー』指を折りながら、思いつくままにバンド名を言う。
その男性も同じようにバンドの名前を言ってくる。『グッドリダーンスゥ、フェイストゥフェーイス、ブラケットォー』お互いにイエスイエス頷きながら、バンド名を言い合う時間が続き、その様子を奥さんはニコニコ笑いながら見ていた。
僕の会計が終わり、あとは帰るだけだった。
でも、どうしても伝えたいことがあり、その夫婦の会計が終わるのを待った。
会計が終わったその男性と目が合い、僕は近づき思いの丈を伝えた。
どこまで伝わったかはわからないけど、自分の中から溢れ出た熱い思いは伝えた。
『僕はアメリカの音楽が大好きだ。あなた達の国が産んだラモーンズやバッド•レリジョンは最高のバンドで、僕は彼らのお陰で救われたし、アメリカのカルチャーが大好きだ。いつかライブハウスで一緒に暴れられる日が来るのを願ってる』と。
その男性と握手をして別れた。
彼と友達だったら…
僕がアメリカで産まれてたら…
僕がもっと英語が喋れたら…
実際、もう二度と会う事はないだろう。
こんな偶然はなかなかない。
それでも、たしかにこの時分かり合えた。
音楽は国境を超えたんだ。
そう、超えた…僕の脳内で。
レジで彼が着ているパーカーを見て、一瞬でここまでは想像したが、英語もロクに話せない人見知りの僕が話しかけれるワケがない。
いや、頑張ったんだよ、何度か目を合わせようとチラチラ見たけど、目は合わなくてさ…
レジが終わって、店を出る時がラストチャンスだと思い、後ろを振り返ったら、彼らはフードコートに並んでいた。
『そうそう、そのホットドッグは最高だよね!君たちの国が産んだソーセージをパンで挟む食べ物はなんでこんなに人々を魅了す…』脳内で伝えた(黙れ)
僕はこんなアメリカ人ひとりにも話しかける事が出来ない臆病者なのに、今W杯で戦ってる若者達は世界相手に堂々としている。
だからもっと日本代表を応援したくなったっていう話でした。ガンバレ! ニッポン‼︎
