なんと1937年作の映画です。
もうすぐ80歳! うーん、スゴイ…!
主人公のペペを演じるジャン・ギャバンも知っているのは名前だけで、その顔を拝見するのも初めて。
それと驚いたのは、この時代、すでにサイレント映画じゃなかったんだという事。
内容としては、マァそれほど面白いものではありません。
そもそもこの時代の映画で、いま観て“面白い!”と思える映画は少ないと思います。
その後の映画製作に影響を与えた表現を顧みて、部分的に“望郷”的喜びを感じるのが関の山では。
見所は、イネス(リーヌ・ノロ)の女心かな。
最後、彼女はスリマン刑事(リュカ・グリドゥ)に「ペペは船へ乗ろうとしている」と密告します。
愛するペペが他の女を追いかけるのを止められないので、逮捕されてでも傍に留めたいという思いからでしょうが、一方では「彼を行かせてあげて」と矛盾する事を言っています。
彼を引き留めたい思いと、愛した男に幸せになってほしい(たとえ他の女とでも)という思いが交錯しているのです。
結果、ペペは愛するギャビー(ミレーユ・バラン)と出会う直前で御用となります。
去り往く客船の彼女に向かって「ギャビー!」と叫ぶペペ…。
もしあの叫び声が汽笛にかき消されずに彼女の耳に届いていたら…。
彼は自害しなかったと思います。
ギャビーの向こうに見えるフランスに恋し、自分を愛し、受け入れようとしてくれたイネス、つまりカスバを拒絶したペペは、結局はその望郷心によって自らの命を縮めたのです。
“郷に入っては郷に従え”
“自業自得”
そんな言葉が思い出された映画でした。