細胞の増殖に関与するとされるタンパクHER2に対する抗体医薬として、トラスツズマブ(ハーセプチン®)が世界中で使われており、乳がんや胃がんの患者で高い効果を示しています。その一方で、正常細胞に対して高い反応性を示すため、特に心臓に対する副作用が報告されており、HER2に対するがん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬の開発が臨床現場で求められていました。

東北大学大学院医学系研究科抗体創薬学分野の加藤幸成教授の研究グループは、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬(CasMab)の開発を行っており、近年、HER2を標的とするHER2-CasMabの開発に成功しました。本研究では、HER2-CasMabの抗腫瘍効果のメカニズムの解明を行い、HER2-CasMabが上市抗体医薬品のトラスツズマブよりも有意に高いCDC活性を持つことがわかりました。また、HER2高発現腫瘍に対し、トラスツズマブよりも高い抗腫瘍効果を示したことから、乳がんや胃がんなどのHER2陽性がんに対する副作用のない治療法の開発が期待されます。

 本研究結果は、令和681日、欧州の科学誌International Journal of Molecular Sciences に掲載されました。