小野薬品

過去最高売上収益を更新も次期は減収減益と予想

 

 2024年3月期の連結業績は、売上収益が前年同期比12.4%増の5026億7200万円で、9期連続で過去最高を更新した。営業利益も6期連続での増益で前年同期比12.7%増の1599億3500万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同13.5%増の1279億7700万円だった。研究開発費は、前年同期比17.7%増の1121億7400万円となった。

 製品別の売り上げでは、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病を適応症とするSGLT2阻害薬の「フォシーガ」(ダパグリフロジン)が前年同期比34.7%増の761億円と好調だった。主力製品の抗PD-1抗体の「オプジーボ」(ニボルマブ)については、ほぼ横ばいで1455億円(前年同期比2.2%増)だった。

 また、オプジーボに関連する米Bristol Myers Squibb(ブリストル マイヤーズ スクイブ、BMS)社からのロイヤルティー収入が979億円、Merck社からの「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)に関連するロイヤルティー収入が530億円だった他、AstraZeneca社との特許関連訴訟の和解による一時金収入170億円を計上したことも売上収益増に寄与した。

 ただし、2024年度の売上収益は527億円の減収を見込む。オプジーボの薬価引き下げと、BMS社や米Merck社からのロイヤルティーの料率が低下するためだ。2025年3月期の連結業績予想について、売上収益は前年同期比10.5%減の4500億円、営業利益は同23.7%減の1220億円、当期利益は同28.8%減の912億円としている。

 小野薬品は、2031年5月(一部の適応症については3月)の、オプジーボの特許満了を見据え、新たな収益の柱を育てることに注力している。

 2024年4月、米バイオ企業Deciphera Pharmaceuticals(デシフェラ・ファーマシューティカルズ)社を子会社化する買収契約を締結。相良暁代表取締役会長CEOは「今回の買収は、オプジーボが売上収益に占める比率を下げる、1つの方策だ」と述べた。早ければ2024年6月に買収が完了すると見込み、完了次第、今後の経営への影響などを精査する考えだ。

 また、今後発売にこぎ着け、成長を期待する製品として、米国で開発しているBTK阻害薬のチラブルチニブ(ONO-4059)、商業化権を取得している米Equillium(エクイリウム)社が開発中の抗CD6抗体「itolizumab」や、韓国SK Biopharmaceuticals(SKバイオファーマシューティカルズ)社から導入し、てんかん部分発作を対象に国内第3相試験を実施している抗てんかん薬のCenobamate(ONO-2017)などを挙げている。

 ただ、自社開発品については、グローバルで第1相試験を実施している段階のものが多い他、フォシーガや「グラクティブ」(シタグリプチン)の段階的な特許切れも控えている。相良代表取締役会長CEOは「2025年から2028年までのマイナスを補うことは難しいと考えている」として、他製品などの新たな導入も視野に入れる。がん領域の他、ニッチな領域、イノベーティブなものであれば積極的に導入を検討していく考えだ。

 オプジーボについては、2023年度に、悪性中皮腫(2023年11月承認)、上皮系皮膚悪性腫瘍(2024年2月承認)、尿路上皮がん(ファーストライン化学療法併用、24年3月米国で承認)――などの進捗があった。

 オプジーボ以外では、がん領域で、抗CCR8抗体ONO-7427をBMS社と共同開発中だ。固形がんを対象とした国際共同第1相試験に日本からも参加し、パイプラインに加わった。

 2021年2月に米Ribon Therapeutics(ライボン・セラピューティクス)社から導入していたPARP7(ポリADPリボースポリメラーゼ7)阻害薬のAtamparib(ONO-7119)は、国内で第1相試験を実施していたが、戦略上の理由で開発を中止した。固形がんを対象にBMS社と共同開発していた、TGF-β阻害薬ONO-7122と抗ILT4抗体ONO-7226は、BMS社主導の国際共同第1相試験に参加していたが、BMS社が開発中止を決定した。

 がん領域以外では、糖尿病性多発神経障害に対する、シュワン細胞分化促進作用を有する開発品ONO-2910について、米国で健康成人を対象とした第1相試験を開始。国内では、糖尿病性末梢神経障害患者を対象に第2相試験を実施中で、近く結果が得られる予定とした。

 また、S1P5受容体作動薬ONO-2808について、多系統萎縮症患者を対象に第2相試験を米国で先行して開始していたが、日本も加わったとの報告があった。同試験は2025年度中に完了する予定だとしている。