君の瞳に
映った雲が
ああ
かたちを変えてゆく

さっきまで 熊
さっきまで うさぎ
さっきまで 馬のかたちを
していた雲が
君の瞳のなかで
かたちを変えて

夕立がきて
おひげが生えて
龍が生まれ
さらに
高いところへと
登っていったよ

ぼくの瞳には
何も 映らない
君のように
澄みわたる心を
前世に置き忘れて
生まれてきたんだ
君はなぜ
争わないの?
ぼくは 剣をもって
生まれてきたから
闘わなければならない
それが、
ぼくの使命だからさ。
ああ ほんとうに
君のような
澄める心があったならば
闘わなくても
ぼくは、生きられるのに。

ぼくのなかの暗黒という剣を
手放さないかぎり
ぼくは、
ぼく以外が 敵なんだ。
突き刺し、えぐり、
また、突き刺す
その繰り返しなんだ。
明日も また
ぼくは、剣を持つ。

ああ 痛い。
傷が傷む。
この傷は
ぼくのこの胸や腕の傷は、
いつ 傷ついたのだろうか。

「 君が 君を傷つけたの。 」
え?
ぼくが ぼくを?

「そう。君が 君を。」
そうだったのか、
ぼくは、敵と闘かっていると
思っていたのに、
ぼくは、ぼく自身を
斬りつけていたのだな。

教えてくれて ありがとう。
もう少し したら
ぼくが 息を吐ききったら
空に 帰るよ。
そうして、
白い龍の雲に生まれて、
君の瞳のなかを
自由自在に
駆けめぐるのだ。
澄みわたる
この平和の青空を
駆けめぐる。
君の澄んだ瞳のなかで。

闘いを望まず
平和な世界を望む
全てのかたがたへ、
第二次世界大戦の遺族として
この詩を捧げます。
そして このたび
パリで起こったテロの犠牲に
なられたかたがたへ
哀悼の誠を捧げます。
合掌