与えるものは
いまは
なにもなくて
ふりだした雪を
見つめる
両ひざをかかえたら
ぼんやりと
すりきれた
裸足のつま先が見える
君に与えたものは
なにもなくて
ふりだした雨を見つめている

君に与えられたものは
私という器に
あふれるばかり
いつか 私も
いつか 私も
与えられるかな
いつか 誰かに
君が
無私の君が
私に 命まるごと
与えてくれたように
いつか私も
与えられるかな
君のいない世界で
惜しみなく
限りなく
与えてみたい
海辺の観覧車から
君と見た景色が
命のファインダーに
くっきりと
やきつけられ
やがて
ふたたび
雪は
地上に降り立ち
生命を
まっとうする

惜しみなく
限りなく
与うるほどの心を
私は持ちているか
君に与えられたものは
あふれるばかり
君との思い出の中で
傘をささず
しゃりしゃりしゅうと
重なりあう雪の声を
聴きながら
ひとり 歩く
いつか私も
与えられるかな
君から与えられた以上の
ものを
いつか 誰かに

惜しみなく
限りなく
天から雪が
降りてくる
惜しみなく
限りなく
いつか私も
