「建てて、いい?」 | 物語の庭

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カフェと図書室、わたしの人生。

家って
なんでしょうね。

こどものころ、
不動産屋のチラシにのってる間取り図が好きで
よく妄想して遊んでましたが、
今でも街の変わった建築やステキな外観の家を見るのが楽しみだったりします。

それでも、家を建てたいと思ったことはなかったな。

家を建てる、って、
結婚して、こども産んで、家建てて、
の、
あの家ですよね。

わたしにとっての家は、
実家、もしくは一人暮らしのアパートでしたから。

わたしが自分で建てる家、という考えはなかった。


そんなことを、考えた人がいたんです。

最近読んだ本。
photo:01


「建てて、いい?」
中島たい子 著
講談社文庫

この本は、30代、独身の女性主人公が、
自分1人で住むための家を、1人で建てようとする物語です。


著者は、独身女性のあるあるな心情を描くのがうまい作家さん。

主人公はある日、
一人暮らしのアパートの外階段から落ちて腕を骨折。

それをきっかけに
現在の生活に不安を覚え、衝動的に婚活に走ります。

ここまではまあ、よくある展開。笑

しかし、この主人公の面白いところは、割とあっさりと婚活をあきらめ、

家を建てよう、という考えに至るのです。
自分が今求めているものは結婚ではなく、自分の居場所なのだ、と。
家を建てれば、解決するのではないかと考え、
それからはもう家のことしか考えられなくなる主人公。


しかし、この画期的な考えに世間は厳しいのです。
新築の見学会では奥様と呼ばれ、
独身であることを告げると空気が冷え切ってしまったり、
両親や親戚を巻き込んでの騒動になったり。

独身女性は家を建ててはダメなのか?


作中、何度も繰り返されるこの疑問。



女性が社会で自立し、活躍している世の中、
マンションを買う女性はいても、
一軒家を建てる女性はめずらしい。

どうしてなんでしょうか。

家を建てる、
このことは、
主人公がこの先もずっと自分らしく、社会で堂々と生きていくために、
どうしても必要なことだったのだな、と思いました。


現に、
最初平凡だった主人公は
物語が進むにつれてどんどんイキイキと動き始めるのです。

自分の居場所であり、
街を作る一員になる、
家を建てるという行為は、自立した自覚のある大人になることでもあるんですね。


さて、彼女が建てた自分らしい家は
どんな家でしょうか。


自分なら、どんな家を建てるでしょうか。


家を建てる楽しさも一緒に味わえる物語。

興味のある方はご一読をニコニコ