「星々の舟」 | 物語の庭

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最近読んだ本。
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「星々の舟」
村山由佳 著
文春文庫


個人的な好みとしては、どしんと重い本が、けっこう好きですよ。
読んでいる間は、内容の重さに少しどんよりしてしまいますが、
人生とか、いろんな人の想い、幸福について、、普段考えないことを考えるきっかけになりますね。

この本は、少し複雑な運命をもったひとつの家族の物語です。

短編連作集となっており、一章毎に次男、長女、次女…と主人公が変わっていきます。
それぞれの目線で語られるそれぞれの人生の物語であり、家族の歴史の物語。

そして最終章の父の目線で語られるのは、ひとつの家族の歴史を超えた、もっと深い人生観。

自分たちの感情に振り回されて、人生がなかなかうまくいかないと感じる兄妹たちに比べて、
戦争という、個人ではどうすることもできない大きなものに人生を狂わされた父親の傷、体験からくる言葉には、それまでの物語を圧倒するものがあります。

「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」

という父が最後に抱いた感慨。

またゆっくりと物語を思い返しながら、この言葉について考えてみたいと思いました。