一昨日の午後、先月葬儀をされた家族の紹介で来館したのは、若い夫婦とその家族と
思える数人で、いつものように祖父母が危ない事前相談であろうと思っていましたが、
思える数人で、いつものように祖父母が危ない事前相談であろうと思っていましたが、
生後一か月の赤ちゃん・・・すでに亡くなっており、突然死の為、警察の検視が入って
司法解剖になると聞かされる。 通常司法解剖は家族の了承が必要なのに、司法解剖に
なるって事は、警察と医師がともに死因究明が必要と判断して裁判所に許可申請をした
のだろうか!? 一瞬虐待!?の文字が頭をよぎり、それ以上突っ込む事はできません
でした・・・すぐに気を取り直して、我が子を亡くした両親・・・特に母親目線だけを
最重視した打ち合わせを始めます。 両親の名誉もあるので、先に結論を言うと突然死
ではありますが、両親にやましい事は一切ありません。
過去に何度か、妊娠5か月を過ぎてからの死産火葬をしている経験から、いくつかの
事を家族に伝えておきました。 皆さんの周囲でも起き得る事ですから、これから書く
ことを頭に入れておくと、心の支えになってあげられるでしょう。
□下手な慰めの言葉は母親を傷つけるだけだという事
早く忘れて、また次の子をつくれば・・・といった類の言葉をくちにする人は以外に
多く、悪気はないのですが「早く忘れる」など考えられるはずありません。
時が経ち今回の悲しさから少し癒えたとしても、もしかしたら、また同じような事が
起きるのでは?と考えるのが母親の心理ですから、現時点で次の子の話など、とても
考えられる精神状態ではないのです
□亡くなった子供の顔を見られる母親もいますが、見られない母親もいます。
周囲が無理強いせず、母親の感性に任せることです。 ただし、今回のように生後1
か月の子供の場合、洋服やおしゃぶり等は、全て処分する事をお勧めします。
□遺骨は49日まで自宅に置き、納骨すると祖父は言いましたが「納骨する日は49日に
拘らず、母親の精神状態と希望で『すぐ納骨』でも『暫し自宅に置く』でも良いと、
伝えておきました。でも今回の場合、新盆までに心の整理がつくよう周囲の協力を
お願いしますと伝えておきました。
□心の整理に特効薬はありません。 『時』が最高の薬となってくれるはずです。
漢方薬のようにゆっくりですが、確実に効いてくれるでしょう。 問題はその期間に
夫を始めとした家族がどう対応するかです。
□今回家族は遺影を作って斎場に持ってきました・・・が、僕は賛成できません。
拾骨後、家族が母親に遺影を持たせました。 外で父親が挨拶を終えると母親はその
場にうずくまって泣き出しました。 すぐに遺影は受け取り家族に渡しました。
今回のような場合一般的な葬儀感覚より母親目線の見方が必要なのです。
来館翌日の夕方、2.5尺(75㎝)の小さな布棺を霊柩車に積んで、隣接市の警察署まで
赤ちゃんのご遺体をお迎えに行きました。 少し待つと家族も来て、引き渡し手続きが
済むと警察署裏にある安置所前に霊柩車をつけます。
普段は裸で引き渡されるご遺体ですが、警察官が産着を着せてくれたようです。
ステンレス台の上に小さなご遺体があり「なんとも言えないですね・・・」と言う僕に
「ほんとですね。こうして見ても可愛いですよね」と優しい顔で答えていました。
警察署を出発する際、千明に「顔の周りに入れる花を用意し、式場の電気と暖房を入れ
ておくよう伝えておき、前橋あんしん館に到着すると祭壇前の台座に小さな棺を乗せ、
切開したであろう頭部の幅広絆創膏を全て隠すように菊の花と、赤、黄、紫の花々で
飾り、線香具と末期の水を用意して家族の到着を待ちました。
式場、生花、は勿論、可愛い絵の描かれた4寸の骨壺など一切の追加品は、僕の独断で
行っているので、当然全て無料サービスです。
翌日の火葬では火葬炉に火が入るまで、その場で待って貰います。 母親は泣いていま
すが、この場面だけはどんなに辛くても見せる必要があるからです。
「3月11日4年前のこの日、東日本大震災で突然家族を亡くした人達は、いまでも海を
眺めて、もしかしたら波にさらわれて何処かの孤島で生きているかもしれない・・・と
考えるのが家族なんです。 両親は誰より辛いでしょうが、この現実だけはしっかりと
受け止めてください」と火葬炉にゴーッと響く火の音を聞きながら話しました。
話す僕の目から涙が溢れ、涙声で話す僕の姿を家族も同じような涙を流しながら聞いて
いました。 斎場の係りの人に「火力弱めですか!?」と聞く僕に「そうですね。強い
火力での火葬は出来ませんからね」と優しい顔で伝えてくれ、それを待合所で家族にも
伝えました。 小さな身体でしたが約60分間の火葬中父親にこんな話しをしました。
「遺骨を箸で渡すのは、土葬から火葬にかわった時、この世から、あの世への橋渡しだ
って語呂合わせで言ったらしく、特別な根拠は無いって、いつもお世話になってる住職
が言ってるから、今日は箸でなく、嫌でない人は手で入れてあげようね」と伝える。
拾骨後、父親は斎場前で来てくれた親族に挨拶をすると、僕の手を取り深々と頭を下げ
「本当に色々ありがとうございました。温かく送って頂いてありがとうございました」
と奥さんの肩を抱きながら帰っていかれました。
最後に見せてくれた父親の反応で、我々も救われた気がします。
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