私たちが日々行う「噛む」ことを、専門的には咀嚼(そしゃく)と言います。

今日は最近注目されている咀嚼と認知症との関係、消化器官への影響、さらに全身疾患との関連性についてお伝えしたいと思います。

まず、咀嚼と認知症です。咀嚼するとき、口腔周辺の筋肉が動き、これが脳への血流を促進します。脳への血流が増えると、酸素と栄養素の供給が向上し、これが脳の機能、特に認知機能の維持に寄与します。また、咀嚼は口腔から脳への感覚信号を伝えることで、脳を刺激します。この刺激が、特に咀嚼時に活性化する脳の領域である前頭前皮質の機能を高め、認知機能を維持する可能性があるとされています。さらに、咀嚼能力の低下と認知症の関連性として、一部の疫学的研究では、歯の喪失や咀嚼能力の低下が認知症のリスクを高めることが示唆されています。これは、咀嚼の低下により脳への血流や刺激が減少し、それが認知機能の低下につながるようです。

次に、咀嚼と消化についてです。食事をよく噛むことは消化に大いに寄与します。咀嚼は食物を小さくするだけでなく、唾液と混ざり合うことで消化酵素が食物に行き渡り、胃と腸での消化吸収を助けます。そのため、食物を十分に咀嚼することで、消化器系への負担を軽減し、栄養素の吸収を最大化します。

最後に、咀嚼と全身疾患の関連性についてです。咀嚼不足は全身の健康にも影響を及ぼします。例えば、不十分な咀嚼による食物の不完全な消化は、肥満や糖尿病のリスクを高めるます。また、咀嚼能力の低下は口腔内の細菌叢（オーラルフローラ）のバランスを崩し、歯周病や虫歯のリスクを高めるとも言われています。これらの口腔疾患は、心血管疾患や一部の癌など、他の全身疾患とも関連しています。

これらを踏まえると、咀嚼は口腔だけでなく、脳から消化器系、さらに全身の健康に影響を与えるため、適切な口腔ケアにより咀嚼能力を保つことがより健やかな生活への近道であるため歯科医院への定期的な受診を強くおすすめします！！

歯科医師　井汲玲雄

咀嚼と病気の関係！？