独立行政法人国民生活センターから、4月19日付けで、次の注意喚起情報が発表されました。


(以下 引用)

銀行窓口で勧誘された一時払い終身保険に関するトラブル
- 高齢者への不適切な勧誘が急増中 -


■実施の理由

保険商品の銀行窓口販売は2007年12月22日に全面解禁がなされ、現在、銀行では多様な保険商品が販売されている。銀行窓口販売全体に関するトラブルは、2008年度をピークとし、2009年度以降は減少か横ばいの傾向にある。

そのような中、2011年度に入り、終身保険などの死亡保険の銀行窓口販売における販売件数の急増とともに一時払い終身保険のトラブルの増加が目立っている。
2009年度は21件であった相談が、2010年度は42件、2011年度は99件と急増している。

一時払い終身保険は2005年12月22日に銀行窓口での販売が解禁された、契約時に保険料を全額払い込むタイプの保険商品である。
経過年数によって死亡保険金や解約返戻金が増加していくという、死亡保障とともに貯蓄性をも有する商品である。

このような特徴から、「預金より利回りの良い商品」などと勧められるケースが多い。
しかし、終身保険は元本割れを起こさない定期預金とは異なり元本保証の商品ではない。
中途解約を行った場合、経過年数によっては解約返戻金が一時払い保険料を下回ることがある商品でもある。

相談事例を見ると、高齢者がトラブルに遭うケースが多い。
消費者は保険であることを理解できず、預金と誤解したまま契約が結ばれているケースが目立つ。
また、経過年数によっては、中途解約時の解約返戻金の金額が元本を下回るというデメリットについての説明不足のトラブルも見られる。
そもそも保険契約を望んでいない消費者や契約内容を理解できない消費者に販売が行われるなど、適合性の観点からも不適切と言えるケースもあった。

そこで、早期にトラブルを未然防止する観点から、一時払い終身保険の銀行窓口販売に関するトラブルの問題点や契約時の注意事項について、注意喚起を行うこととする。


■PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)にみる相談の概要

一時払い終身保険の銀行窓口販売に関する相談は、銀行窓口での一時払い終身保険の販売が解禁された2005年12月22日以降、総件数が187件に及んでいる。

また、生命保険の銀行窓口販売の相談件数と、そのうち一時払い終身保険の銀行窓口販売の相談件数の割合を見ると、2008年度は2.6%であったが、2009年度は4.0%、2010年度は7.5%、2011年度は17.4%となっており、割合についても急増傾向が見られる。
件数でも2011年度は99件で、前年同期の35件を上回り、約2.8倍となっている。


■主な相談事例

【事例1】元本保証で利率が良い商品と説明されて契約したが、一時払い終身保険だった
10日程前、銀行の窓口に出向いたら、担当者より「誕生日プレゼントを渡したい」と言われ、2階へ案内された。
そこで別の担当者から「3年経過すれば利息が出て、しかも元本保証」という商品を勧められた。
数年前に別の金融機関で勧められるまま投資信託の契約をし、損失を出した経験があり、預金以外は契約しないと窓口の担当者に何度も伝えていたので、預金のつもりで契約した。
通帳を持っていないと言うと、通帳を取りに行くついでという理由で担当者が車で自宅まで送ってくれた。
自宅に保険証券が届き、初めて生命保険の契約だったとわかった。
銀行で生命保険を勧誘するとは知らなかった。
解約したい。
(2011年10月受付 2011年9月契約 契約者:70歳代 女性 家事従事者 石川県)

【事例2】震災のためすぐに使えるお金が必要という消費者の意向とかけはなれた契約
今までの預金を定期にしようと銀行に出向いたところ、「こっちのほうが得」と5年過ぎると少し利息がつくという商品を勧められた。
その時は定期預金の一つと思ったので、書類を書いて手続きした。
しばらくして届いた証書を見ると、一時払い終身保険契約であることがわかり、保険料を500万円分支払ったことになっていた。
保険に入った覚えはなかったため、とても驚いた。
震災で壊れた屋根の修理や病院代などすぐにお金が必要だったので、解約をしてほしいと銀行の担当者に伝えたが、「今解約すると20万円の損になる」と言われた。
支払ったお金を全て返してほしい。
(2011年11月受付 2011年3月契約 契約者:80歳代 女性 無職 福島県)


■問題点

銀行窓口販売特有の問題点
・預金と誤解するような勧誘
・最初の勧誘時に保険であることを告げない
・クーリング・オフに関する説明不足
一時払い終身保険の販売で見られる問題点
・事実とは異なる「元本保証」という説明
・解約返戻金が支払った保険料を下回るおそれがあることについて十分な説明がない
・消費者の意向に合致していない商品を勧誘
その他の問題点
・しつこい勧誘
・判断不十分者等への勧誘


■消費者へのアドバイス

●保険と預金を誤解しないよう十分注意すること
現在、銀行は預金や貸付業務だけでなく、一時払い終身保険を含む、全ての保険商品を窓口で販売している。
そのことを知らない消費者は保険の契約を新たな預金と混同しがちである。
そのため、保険を預金と誤解をしないよう十分注意すること。

●一時払い終身保険が本当に必要かよく検討すること
一時払い終身保険は元本保証の商品ではなく、中途解約を行った場合、経過年数によっては解約返戻金が一時払い保険料を下回るおそれのある商品である。
今後お金を使う予定があるか、万一の時にすぐに使える余裕資金があるかなどを踏まえて本当に必要な契約であるかを慎重に検討すること。

●販売員の説明だけですぐに契約しないこと
「定期預金より良い商品」「元本保証」などの販売員の説明だけで判断せず、販売員から交付される「契約概要」や「注意喚起情報」を必ず自分で確認すること。
資料の内容が理解できなければすぐに契約せず、一度自宅に帰って家族とよく話し合うなどしてよく検討をすること。
また、一時払い終身保険の銀行窓口販売の契約は、トラブルになると「言った、言わない」の水掛け論になることが多い。
このような場合、銀行や保険会社は消費者が署名押印した書面をもって「消費者には説明した」「消費者は契約を理解の上契約した」と主張し、双方が平行線となる場合が多く見られる。
そのため、理解せずに勧められるまま署名、押印をすることは絶対しないこと。

●トラブルにあったら消費生活センターに相談すること
トラブルにあったら、最寄りの消費生活センター等に相談すること。
また、銀行で販売される一時払い終身保険の契約のほとんどは、契約申込日を含めて8日間はクーリング・オフが可能である。
断り切れず契約してしまったり、契約内容に不安、不明な点があれば、すぐに契約先の保険会社にクーリング・オフを申し出ること。


情報提供先
・消費者庁 消費者政策課
・消費者委員会事務局
・金融庁 総務企画局 企画課 保険企画室
・金融庁 監督局 保険課
・社団法人生命保険協会
・一般社団法人全国銀行協会

本件連絡先 相談情報部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。

*詳細な内容につきましては、下記の「報告書本文(PDF)」をご覧下さい。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20120419_1.pdf

(以上 引用終了)


銀行も大手生保も、一時払終身保険が、今や一番の稼ぎ頭。
銀行は、預金者のお金を口座から保険料に移し替えるだけで、数%もの手数料が手に入る。
しかも、運用先のない預金残高を抱えずにすむという、一石二鳥。
大手生保は、この商品のお陰で何とか、保有契約高減少に歯止めがかかっている。
一時期、変額個人年金を勧めていたが、リーマンショックの煽りから、元本保証の商品へニーズが移ったため、一時払終身保険が主流となった。
もっとも、契約者から預かった一時払終身保険の保険料の運用は、この環境では非常に厳しいと考えられ、金融環境が早々に好転しないと、いずれはこの契約が経営の大きな重しになってしまうことは間違いない。
つまり、生命保険会社にとっては「劇薬」であって、「特効薬」でないことは確か。
まともな生保なら、この金融環境で一時払終身を売りまくることは考えない。
売れるものがない大手生保ならではの窮余の一策。
http://anshintaro.blog14.fc2.com/blog-category-6.html

実は、変額個人年金が一世を風靡押したときにも、この手の相談が急増したことがある。
そのため、それまでなかった「意向確認書」という書類が、金融庁の指導でつくられた。
ようは、「あなたの加入する商品は、保険商品ですよ。預金ではありませんよ」という確認書類なのだが、それでもこのようなトラブルが起こるとは。

根本の原因は、銀行に生命保険を取り扱わせたことにある。
預金者の懐具合(預金残高)を知っていれば、それに合わせたセールスはいくらでも可能である。
例えば、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を分けたのも、それが本来の目的の一つ。
あるいは、証券会社が銀行をつくるのも、ようはお客の懐具合を知りたいから。
だからこそ、メイン・バンクからの預金以外のお勧めに、ホイホイ乗ってはいけないということ。
これは、銀行・保険・証券分離の逆行ともいえ、金融行政の重大な失敗である(もっとも、金融庁は、銀行や銀行員のせいにするだけだろうが)。

次の原因は、銀行員は2~3年すると転勤があること(簡易的に銀行員と読んでいるが、もちろん、ゆうちょ銀行や信金、信組、農協などの職員すべて含む)。
つまり、売りつけさえすれば、あとは後任がフォローするだけのこと。
お客の5年後、10年後には全く興味がない。
自分のボーナスのために、必要としていないものを売りつけるだけである。
もし、一生、お客の担当者として活動しなければいけないとしたら、本当にそんな無責任な商売ができるだろうか?

もう一つの問題は、実は銀行員は保険を知らないということである。
もちろん、セールスする銀行員は生命保険を販売するための資格は取得している。
していても、その知識だけでは、お客のためになる提案は簡単にはできない。
というか、銀行は銀行員にお客のためになる提案は求めていない。
求めているものは、そう、いかにたくさん手数料を保険会社から払わせるかである。
この点は、保険を知らない生保レディーが、一生懸命、保険を売っている姿にかなり似ている。

この相談事例を見ても、銀行員を信じすぎ。
銀行員がうそをいうわけがない、なんてことはない。
うそではなくても、本当のことはいわない、なんてことは生保レディー並みにあり得る。
相手は、あなたの財布の中身を知ったうえで、手数料をふんだくろうと、あの手この手と考えて待ち構えているというのに。

以上からの教訓。
懐具合を知っている、銀行(金融機関)から、生命保険は買わない。
転勤があり、一生のお付き合いができない担当者から、生命保険は買わない。
大きな銀行だから(あるいは郵便局だから)、なんてことだけで信用しない。

それなら、一時払終身保険はどうなのかといえば、私は勧めない。
どうしてもというのであれば、以下について十分に考えてほしい。
あるいは、勧めてくる銀行員に、納得できるまで確認してほしい。
おそらく、きちんと答えられる銀行は、ほとんどいないのではないか(このメルマやブログ等をまめにチェックしている人なら分かるかもしれないが)。
●一時払と全期前納の違いが理解できているか?
●終身保険にも、様々な種類があることを理解できているか?
●生命保険会社の財務内容(格付、ソルベンシー・マージン比率、決算)を十分理解できているか?
●予定利率と預金金利の違いを理解できているか?
●いつ必要になる資金なのか確認できているか?
●一時払保険料によって手元の資金が減っても大丈夫か?

そこまで考えれば少なくとも、その場で契約する(申込書に自署・捺印する)ことはなくなるのではないかと思う。



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