5月8日(木)の日経朝刊一面に[日生・第一「逆ざや」解消]という記事が掲載されておりました。
かいつまんで言えば、2008年3月に、日本生命と第一生命が「逆ざや」(運用実績が、予定利率を下回る)状態を解消したことから、今後、契約者への配当を増やしやすくなるだろう、と言う内容です。
これだけ読めば、大手生保2社が企業努力によって「逆ざや」を解消して、これからは契約者配当が増えるという、日生・第一のイメージアップ記事になっています。
が、実際は、逆ざやの解消は、企業努力の結果ではありません。
むしろ、本来支払わなければいけなかった契約者配当を払わず、逆ざや解消のために利差損の補填に充て、ようやく経営失敗の結果であった逆ざやを解消しただけのことなのです。

そもそも、契約者配当(3利源)には、
利差益(運用実績が予定利率を上回ったときに支払われる)
費差益(経費が予定の経費を下回ったときに支払われる)
死差益(実際の死亡率が予定の死亡率を下回ったときに支払われる)
の3つがあります。
そして、上記の配当付商品の保険料は、多めにお預かりして、配当で還元するというイメージで設定しています。

したがって、それぞれの差(益)が出た場合、他が差(損)であっても、個別に還元されて良いはずなのです。
とすれば、利差損が発生していたときも、費差益と死差益はプラスだった(死差について言えば、ずっと死亡リスクは低下し続けています。結果として昨年4月に10年ぶりに生命表が改定され、掛け捨ての死亡保障の保険料が引き下げられています)訳ですから、個別に配当されるべきでした。
ところが、大手生保は、この3つの差益の内訳を、一昨年度の決算まで一切公表せず、一生懸命に「どんぶり勘定」をおこなって、正当な契約者配当を行っていなかったのです。
つまり、費差(益)と死差(益)のプラスを利差(損)のマイナス解消のために充当していたと言う訳です([費差+死差]ー利差)。

これを敢えて公表しなかったことを企業努力というのであれば、企業努力ではありましょうが、企業倫理としてはいかがなものでしょうか。
で、ようやく一昨年度の決算から内訳を公表した訳ですが、どう考えても株価が上昇し、このどんぶり勘定をしなくても良くなったから、公表を始めただけのことでしかありません。

以上のことを踏まえたうえで、今回の日経の記事をお読み下さい。
このような重要な前提・経緯を盛り込まず、「逆ざや」の解消で契約者配当が増えると言う?な記事を掲載する日経は、
・記者が生命保険のことを知らない
・広告主のイメージを大事にして、敢えて読者の知る権利を犠牲にしている
のどちらなのでしょうか。
少なくとも言えることは、「日経の生命保険記事は鵜呑みにしない」ことでしょう。


生命保険コンサルティングのご案内
http://www4.plala.or.jp/anshin/8_muryou_day.html


↓情報がお役に立ったらクリックをお願いします!
人気ブログランキングへ