いまだ終息の見通しが立たない新型コロナウイルス感染症。新興国、発展途上国を中心に感染拡大が続き、ピークを過ぎたと見られている国・地域においても感染の再拡大が確認されている。世界経済に与える影響も大きく、国際通貨基金(IMF)は7月17日公表の米国経済に対する年次報告書で、感染拡大を「最大のリスク」として景気の下振れを憂慮している。 感染拡大を抑制し、通常の経済活動を取り戻すための鍵が、ワクチンだ。世界中の企業や研究機関が開発中で、7月24日時点で160以上の候補品が存在し、うち25の候補品が人を対象として有効性や安全性を確認するための臨床試験の段階にある。また、数千~数万人の人々を対象にワクチンを接種し、その有効性や安全性を確かめる第3相試験の段階にも、複数の候補品が到達している。 世界がワクチン開発の早期成功に期待を寄せており、米国のトランプ大統領に至っては11月の米大統領選挙を意識してか、「年末までにワクチンが手に入ることを確信している」などとする旨の発言を繰り返している。果たしてそれは現実的なのだろうか。また、ワクチンが承認されれば直ちに万事解決となるのか。今後想定される課題について考える。◇有効率5割超で承認 ワクチンの承認には有効性と安全性の確認が必要となる。それを確認するための臨床試験が今まさに進行中であるため、承認・実用化の時期は「予測できない」というのが最も適切だ。第2相までの試験では実際のウイルスに対する防御効果は測られておらず、加えて第3相で多くの被検者に接種することで、これまで見られなかった副反応が見られることもある。有効性や副作用を確認するためには少なくとも第3相の試験結果を待つしかない。 ただし、現在承認されているワクチン開発にかかった期間が、おおむね10年以上、最短でもおたふく風邪ワクチンの4年ということを踏まえると、トランプ大統領が言う「年末まで」というのは楽観的と言わざるを得ない。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は3月の時点で「1年から1年半」と発言したが、これも十分野心的な発言だろう。