立会い出産ができない大学病院なので

出産間際にダンナサンは分娩室から追い出され、

待合いのベンチに座ってそわそわしているダンナサンを思い浮かべながら

「次で行くよー!」という助産師さんの声を聞いて、出産に集中・・・

「はい、来たよー!ゆっくりいきんでー!ゆっくりだよー!」


ゆっくり!???できない。むり。

出てくるもん、我慢できないもん!

あ~ごめん、ゆっくりいきめない!!!でちゃう。

いたい~~~~~!!!!!しぬ~~!


「オギャー!ウエッウエッ・・オギャー!」


ウマレタ・・・とうとうウマレタ・・・

ながかった。いつも泣いてばかりだった。

ごめんよ、おなかの中、苦しかったでしょう?

と、感傷にふけろうとしていたら、


カメラを預かっていた助産師さんが、先生に

「センセイ~持ち上げてください~写真取るから~!はやくかかげて~!

あ~それだとママのオマタが写っちゃいますよ~!

あ~、へその緒つながってる写真取るんだから!まだきっちゃダメ!」


「おいおい・・・ムードがないでしょ・・・笑」


へその緒切ってもらった天使が、胸の上にのせられた。

ムードのない分娩室の空気も忘れて

やっぱり涙があふれた。

目をつぶって手を握って私の胸にもたれてる小さな天使。

この子がおなかにいるのに、何度も自分を消してしまおうとした悪いママ。


産んでよかった。パパにそっくり。

パパの分身、もう一人産んでよかった。

かわいいこの小さな天使に、何度助けられただろう。


一人でオイオイ泣いていたら、

何故か照れくさそうな顔をした満面の笑顔のダンナサンが

分娩室に入ってきた。


「よくがんばったね」

そう言ってくれたダンナサンの笑顔は

これまでで一番優しくて暖かくて

愛情にあふれた、素敵な笑顔でした。


私はどんな顔でダンナサンを迎えたのかな?

きっとこれまでで一番の幸せな笑顔だったと思う。


それから1時間、気を利かせてもらったのかただの放置だったのか、

ダンナサンと2人きりにしてもらった私たちは

小さな天使を、見つめては微笑みあい、キスをして手を握り、

とてもとても幸せな時を過ごしました。