最近読み返した本・・・
2度読むなんてよっぽどのお気に入りですね。
桜庭一樹さんの「私の男」。
私の男とは、この本の中では主人公・花の父親のこと。
あってはいけない内容ですので、
特にお嬢さんをお持ちの男性は
読まないほうが良い本です。
傑作ですが、まず映画化できない内容かと思います。
この小説は、初めに結末ありきで
主人公の花が結婚式を挙げるところから始まります。
父との断絶。
そして、章が進むに従って、過去にさかのぼっていく。
「ばらばら死体の夜」でも同氏が使った手法です。
最初の章だけでも相当なインパクトなのに
時間を遡るほど、絶望的な事実が明らかになります。
また、章によって語り手が主人公の花、
父親の淳悟、婚約者の美郎と変わります。
違う人物からの視点が、客観的に見た
花と淳悟の関係の恐ろしさをより際立たせています。
私も、環境は違いながらも
どんなに「あなたは自分を大切にしていない」と
諭されても、「私が選んで今こうしている」と
思いこんでいる時期がありました。
そのあたりの少女の自信や、
男に対する優越感、そういった感情が
極めて緻密に表現されていると思います。
そして、人間が育った環境によって
どこまでも堕ちていく動物だと改めて思います。
どこか、ドストエフスキーを思い出させます。
第138回直木賞受賞。
桜庭一樹さんが女性だったという事にも驚きました。
女性ではないと、ここまでの内容は
書けないのかもしれません。
この作家の他の作品に特筆すべきものはありませんが
「私の男」は、浅田次郎氏が「文句なしに推挽」
したのも納得できる筆力です。
明日も素敵な一日をお過ごしください。