そこはベッドが一台と、付き添いの為のパイプ椅子が置かれていた。
置かれているのは、それと隣に飾ってある花の無い花瓶のみで、その他には私物も何もない。
近寄ると、一人の少女が横たわっている。
茶色の髪に、活発そうな顔。
後ろで息を呑む気配がした。
リンを紹介したばかりだけど、何となく分かって貰えただろうか。
目の前に横たわる少女は、リンその人なのだから。
にしても、絶対興奮混じりに追求してくるかと思ったのに、律儀だね。
予想外だよ。
その時、夏目の後ろのドアが開いた。
誰かが入ってくる。
誰かと言っても、入ってくる人は殆どいないからある程度絞られるけどさ。
「お前ら、見舞いに来たのか」
「…………粽?」
入ってきたのは、病院には不釣り合いに見える、粽太一だった。
花瓶に入れるのだろうか、小さな花束を手に持っていた。
「まあ、大したこと出来ないが、ゆっくりしていけ」
「いや、私達はそろそろ帰るよ。
鈴が元気か見に来ただけだから」
夏目に目配せする。
よく分かっていない様子だったが、ゆっくり頷く。
「じゃあ、また明日ね」
「ああ、そうだな」
どこか気まずい雰囲気の中、私たちは病室を出た。