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5年前の夏。
私は親に勧められるまま、自転車に跨がっていた。
行く宛もない放浪一人旅。
でも、何となくわくわくしていた。
引きこもりの私にとって、学校以外の場所に行くなんて事は一切無かったし、ましてや自転車に乗って近所を散歩するのも無かった。
自転車に乗るのも緊張した。
乗れなかったらどうしようって。
無事に乗れて喜んでいたのも束の間。
近所なんて行ったことないし、地図も読み方がよくわからない。
だから、どうなったかというと………。
「道迷ったぁぁぁぁ!」
「うるせえ!」
思いっきり叫ぶと、間髪入れずに誰かの声がした。
後ろを振り向く。
知らない人だ。
眼鏡をかけたその黒髪の少年は、迷惑そうに片耳を抑え、私の横を自転車を押して歩いていく。
「ちょっと待ちなさいよ。
普通、何事も無かったかのように通り過ぎるか?」
「面倒だから無視したんだ。
こっちは用事がある。
厄介事はごめんなんだよ」
「なん………ですって」
誰が面倒だ。
こんなに勇気を出して言ってんのに、無視する?
まあ勇気を出したとは言っても、引きこもりの勇気だから大したことないのだろうけど。
「アンタはどこに行くの?」