「だって、私の能力知らないでしょ?
つまり、君の能力も完璧じゃないんだよ。
だったら、大丈夫なんじゃない?」
私はにっこり笑ってやった。
私も同じことで悩んだ過去がある。
だから、安心させてあげたかった。
おこがましいような気がしたけれど、何となくほっておけなかった。
「お前って不思議な奴だな」
「あ、照れた照れた」
粽は不意に私から顔を逸らした。
そむけた顔を見て指さしてまた笑う。
と同時に自転車が揺れる。
「おうっと」
あわてて体勢を立て直す。
ふう、びっくりした。
「大丈夫か?」
「まあ、大丈夫よ。あと何分で着く?」
「あと、10分くらいか」
粽は時計を見ながら器用に片手運転をする。
もう30分も走っていたのか。このくそ暑い中。
我ながらよくやるよ。
それにしても、片手運転ができるとかうらやましいな。
未だに怖くてできないからね。
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