倉庫のようなところで星哉と直輝が向かい合って立っている。
直輝「・・・それで、久美はどこだよ」
星哉「さぁ? どうかね」
直輝「・・・」
久美「んー!んんんー!」
口をふさがれた久美の声が聞こえた。
直輝「久美!」
駆け寄ろうとする直輝
久美「んんんんー!!」(助けてー!!)
後ろから出てくる5人の男たち その一人が縛られた久美の腕を掴んでいる
5人のなかには雄悟もいた。
直輝「久美を放せ」
雄悟「この前の借りは返すぜ」
直輝「興味ねぇんだよ」
雄悟「・・・うるぁ!」
殴りかかってくる
それをかわす直輝。
雄悟「ちっ おいやっちまえ!」
周りの男どもが直輝によってかかってくる
直輝「邪魔だぁ! くっ!」
押さえつけられる直輝
直輝「くはっ」
久美「んんんー!!」(やめてー!!!)
ボッコボコにされる直輝。
直輝「ぐあっ ぬぅっ」
久美が口に巻いてあるガムテープをなんとか自力で剥がす
久美「やめて!! それ以上暴力は・・・」
泣き出す久美
星哉「それぐらいにしとけ」
星哉のひとことで5人が暴行をやめた。
ボコボコにされた直輝が気を失い倒れている。
直輝「・・・」
星哉が直輝に近づきむなぐらを掴む
星哉「久美は渡さねぇよ」
後ろから叫び声。
久美「誰がアンタみたいな男に!!」
直輝「・・・っ」
星哉「まだ気があるか」
倒れたまま星哉の足を払った
星哉「ぬっ」
ゆっくりと立ち上がる直輝。
立ち上がり背筋を伸ばしたとき
バン!・・・ 銃声がした。
直輝が後ろへ倒れこむ
星哉「・・・やっちまったな」
直輝のまわりから血が流れ出る・・・
銃口から煙が出る
撃ったのは雄悟だった。
久美「っ・・・・直輝ーーーーー!!!!!」

久美「はっ!」
飛び起きる
久美「・・・夢か」
時計を見る
3時14分
あたりはまだまだ暗い。
久美「変な夢みたな・・・」
ずいぶんうなされていたのだろう。
額は汗でぬれていた。
夢が衝撃的だったので手がしびれているような、体が重いような感じがしている。
久美「・・・」
カレンダーに目をやる。
今日は土曜日。
学校は休みだ。
久美「・・・ふぅ・・変な夢だった」
台所へ行き水を飲む。
深呼吸をする
落ち着いてから耳を澄ますと外では雨が大降りのようだ。
雷もなっている様子。
久美「・・また雨か」
寝室に戻りベッドに横たわると、すぐに眠りについた。

再び起きると8時30分だった。
台所へ向かうと久美の母、小林 絵里(こばやし えり)がいた。
絵里「おはよ ずいぶん寝たわね」
久美「うん なんか変な夢見ちゃって、夜中に目が覚めちゃって」
絵里「そうなの 早くご飯食べちゃいな」
久美「うん」
絵里「あとこれ」
箱を渡される
久美「え」
絵里「久美がほしがってたもの」
久美「あぁ! そうかそうか ありがとう」

颯汰は7時に起きて喫茶店を手伝う。
颯介「おい颯汰ー トースト大丈夫か?」
颯汰「うん いい感じ」
美冴「玉子焼きできたよー」
颯汰「俺もってくわ」
いつもより慌しい朝。
というのも、大吾が社員旅行の近くにWINGSがあったからといって団体を強引に詰め込んだからこうなったのだ。
店内は大吾の会社の人でほぼ満員状態。
  「おじさーん このフレンチトーストおいしいね!」
  「ホットドッグうまい!」
  「フレンチトーストうまいなぁ」
  「このセットいいねぇ」
料理は大好評であった。

直輝は早くから家を出て青空公園で久美と待ち合わせ。
プレゼントを買うべく、早めに家を出たのだ。
そう、今日は久美の誕生日。
直輝もプレゼントスタンバイOK。
9時半、約束の時間。
青空公園にて────
一足先に着いたのは直輝だった。
噴水前のベンチで座って待つ。
ケータイでメールをする
  「まだ?」
返信「まだだよ~」
ケータイに釘付けになる直輝
後ろから忍び寄る影・・・
肩をたたかれる。
直輝(まさか・・・)
2秒ほどあと後ろを振り向く。
直輝「・・・久美かぁ びっくりした」
久美「てへへ♪」
直輝「今日は思いっきり楽しむつもりだからな」(笑)
久美「もちろん」
公園を出発する。
商店街に入る。
久美「あ、あれカワいい」
まさかの猫耳グッズ。
直輝「・・・いや、かわいいんだけどね」
久美「え?・・・ほら かわいい」
直輝「ぶっ」(笑) (めっちゃかわいいじゃん!!)
久美「どう?」
一回転して見せた
直輝「うん・・めっちゃかわいい」
久美「買いだぁ」(笑)
値札を見る
200円
久美「・・・安っ」
即レジへ持っていった。
直輝「いいじゃん かわいい」
久美「えへ♪」
腕に抱きついてくる。
直輝「それつけたまま行くの?」
久美「あ・・・どうかなぁ いいと思う?」
直輝「さすがにだめだと思う」
久美「だよね」
猫耳をはずす。

商店街を出た。
久美「どこ行くの?」
直輝「ひひひー 映画」
久美「映画!?」
直輝「映画」
久美「映画!?」
直輝「映画」
久美「何を見るの?」
直輝「It will break my heart」
久美「あー 奈美が小説読んでないてたやつか」
直輝「そうそう」
久美「いいねー♪」
直輝「行こ」
久美「うん」

歩いて5分ほど
映画館にたどり着く。
上演時間まで後10分
そこまで人は多くなかった。
久美「そんなに待たなくてよさそうだね」
直輝「よかったよかった」
ポップコーン、飲み物を用意し、順番を待つ。
久美「キャラメルポップコーンおいしい!」
直輝「んー」
久美「やばい」
直輝「おいおい、食べすぎだろ」(笑)
久美「すっごいおいしい」
口にポップコーンのくずをつけながら話す子供っぽさが久美の魅力なのかな と思う直輝であった。
上映時間になり、ブザーが鳴り響く。
ほかの映画の宣伝が終わり、とうとう始まった。
久美「・・・」
久美がバクバクとポップコーンを食べる音がよく聞こえる
直輝「・・・」
だんだん見入ってくる二人。
主人公歩美が、元彼の章吾との復縁を描いた物語なのだが、涙なしには見られないくらいに悲しい話らしい。
案の定後半になると久美から涙が流れていた。
久美「うぅぅぅぅ」
直輝「泣きすぎ」
久美「だってぇ かわいそうじゃん歩美!」
直輝「んー 悲しい話ではあるけど」
久美「ほら! ほら! いけ!」
いい感じのシーンで興奮する久美。
直輝「・・」(笑)

キスのシーンで急に久美が静かになった。
静かに大号泣していた。
直輝「久美?」
久美「グズン」
鼻をすする。
  「好きだよ」
テーマソングが流れハッピーエンドを迎える。

映画館を出る。
目が腫れてる人が多い。
それほど感動の映画なのだった。

直輝「泣きすぎでしょ」
久美「はぁー 泣き疲れた」
びしょ濡れのハンカチを手に取る。
直輝「これ使えよ」
自分の青のハンカチを取り出す。
久美「ありがと」
この後、しばらく青空公園の噴水前で休むことにした。
久美「ふぅーっ」
やっと目の腫れが治まってきた。
ケータイを開く直輝。
直輝「・・・」
久美「あぁー 疲れた」
直輝「・・・ちょっとトイレ」
久美「うん」
小走りでトイレに向かう直輝。

直輝「・・・なんでここにいんだよ」
星哉「たまたま・・な」
トイレの裏には星哉の姿が。
直輝「今やる気か」
星哉「・・・フン・・やってもいいんだぜ?」
近寄ってくる
直輝「チッ」
星哉「・・それ以上久美に近づくんじゃねぇよ」
直輝「言ってろ」
星哉「今現在も・・・続いてるんだぞ?」
直輝「・・・何が」
星哉「・・まぁ せいぜい楽しめばいいさ その分だけ・・犠牲が生まれる」
その場を去る直輝。
星哉「・・まだわかってないみたいだな」
戻る直輝
久美「おぉ 遅かったね」
直輝「あぁ ちょっとね」
久美「これからどうする?」
直輝「あぁ・・・うん」
久美「どうかした? おなか痛いの?」
直輝「いや 大丈夫 どこいこうか」
微笑みでごまかす。
久美「うーん 直輝ん家行きたいなー・・・なんて思ってたりしなかたり・・・」
直輝「俺ん家!?」
久美「・・だめだよね」
しょんぼりする
直輝「いや ぜんぜんいいよ!」
久美「えっ ほんと!?」
直輝「あ、でも・・・」
久美「でも?」
直輝「・・・親」
久美「お母さんいるの?」
直輝「父さんもいる」
久美「・・・あちゃ」
直輝「俺は久美ん家行きたい」
久美「えぇ!?」
直輝「久美ん家・・・」
久美「いいけどー・・・」
直輝「誰かいるの?」
久美「・・・この際さ、親にも知らせない?」
直輝「うん・・・・ わかった」
久美「どっちから?」
直輝「まずは俺ん家いこう」
久美「わかった」
ゆっくりとした歩幅で自転車へ向かう
自転車にまたがり直輝の家へ走る

10分後 2階建ての直輝宅へ到着。
久美「・・・なんか緊張する」
直輝「緊張しないでいいよ 遊びにきたんだからさ」
久美「うん」
直輝「俺先に入るわ」
玄関を開ける
直輝「ただいまー」
家に声が響く
右の方の部屋から声が聞こえる
  「おかえりー」
母の声。
遠山 響子(とおやま きょうこ)だ。
響子「ずいぶん早かったね」
玄関に顔を出す
響子「あれ?」
久美「あ、こんにちは」
緊張した微笑みを浮かべる
直輝「俺ん家で遊ぶことになった」
響子「・・ふーん」
2階へ上がる。
階段を上がり、廊下を歩き、2番目の部屋のドアに「NAOKI」と書いてあるボードがぶら下がっていた。
ドアをあけると、平凡な部屋があった。
ベッドの横に机、ベッドの下にタンス。ベッドの横の壁には大きめの窓。
机の前には小さな窓。ドアの左には2人がけのソファがあった。
すこし広めのごく平凡な部屋だった
机には冬休みの宿題が開いてあった。
直輝「まだ終わってないんだ」
久美「やらないとダメじゃん」
直輝「はぁー」
久美「座っていい?」
直輝「あ、いいよ」
久美「よいしょっと」
直輝「・・・俺の家来るのはよかったけど・・なにするの?」
久美「うーん・・・考えてなかった」(苦笑)
直輝「ははは」
ドアをノックする音が聞こえる。
響子が顔を覗かせた
響子「お菓子持ってきたけど 食べる?」
久美「いただきます!」
直輝「あぁ ちょっとまって」
クローゼットからローテーブルを出す。
直輝「ありがと」
響子「ごゆっくり」
久美「どうもぉ」
緊張して微笑む。
テーブルの上にはクッキーとオレンジジュース。

とても幸せな時間が過ぎた。
悪夢を忘れて・・・。