1月4日────────

正月が明け宿題に焦り始める男たち・・・
颯汰は冬休み前に使ったバッグをあさり宿題を取り出す
「うへーなにこれ 習字、テキスト、読書感想文、日誌・・・・・・   
    ・・・無理だ」
確信するのであった

直輝もまたバッグをひっくり返し冷や汗をかいていた
「え、ちょっと半紙ないじゃん!?・・・テキストってどれぇぇ!?」
頭をかきながらゼヨの怒る姿が目に浮かぶ
颯汰より焦りが激しいようだ

剣悟も・・・
「・・・日誌・・ないじゃん・・・」
焦りというより、絶望していた

そんな男たちとは違い効率的に宿題を進めるのが女子・・・

「習字、テキスト、感想文、日誌と、ノート・・・よし OK!」
バッグに荷物を整頓しているのは久美である
「直輝たち宿題やってるのかなぁ・・・」
察し方が鋭い久美であった。

そして奈美は・・・
「あれ、・・・あれっ!? ここやってなかったじゃん! あぁあぁあぁあぁあヤバい!」
女子の中でも別格だった。


そして迎えた登校日・・・

ゼヨ「おはようございまぁーす はい朝の会を始めます 起立、日直さん・・・今日は剣悟だな」
剣悟「えっ 俺!?」
ゼヨ「早くやれ」
剣悟「はぁ・・・やすめぇ きおつけぇ 今から朝の会をはじめます お願いします」
  「お願いします」
ゼヨ「はいストップ!」
教室がざわめく
ゼヨ「宿題をひとつでも忘れたやつ立てぇ」
颯汰「しまったぁ・・・」
剣悟「あぁ・・・」
直輝「はぁ・・・」
奈美「うわぁー・・」
久美「奈美!?」
奈美「英語のテキストなくしたぁ」
4人に加えてもう一人が起立した
砂藤 紗詠(さとう さえ)。
普段は大人しく、控えめなのだが本当は天然で唐突に爆弾発言をする
砂糖の如く、甘くのほほんとした性格をしている

ゼヨ「相変わらずの3人はいつもどおりだな」
颯汰「・・・」
直輝「・・・」
剣悟「・・・」
奈美「あれ? 紗詠も?」
紗詠「うーん 社会できてない」(苦笑)
ゼヨ「砂藤、珍しいな なに忘れた」
紗詠「社会のテキスト忘れました・・」
ゼヨ「そうかぁ、残念でしたねぇ」
紗詠「え それだけ」(苦笑)
ゼヨ「他の4人はなに忘れた?」
剣悟「習字」
颯汰「理科」
直輝「国語と数学」
奈美「英語」
ゼヨ「明日全部提出すること 難しい人いるか?」
奈美「はい!はい!英語のテキスト見つけるのは困難です!」
〝ないからできないよねオーラ〟をかもし出す
ゼヨ「問題コピーしておくから大丈夫です 心置きなくやってくださいね!」
あっさり切り捨てられる
奈美「あぁそーなの」
ゼヨ「出せなかったヤツ居残りな はい座って」

久々の学校にテンションがあがる皆。
颯汰「直輝、直輝」
直輝「ん?」
颯汰「焼き芋ってさ・・・」
直輝「あぁ、全部見ましたよーん♪」
颯汰「・・・」
奈美「あたしも久美に『焼き芋』ってメール着てた」
剣悟「焼き芋って?」
直輝「だーかーらー ───── ってわけよ」
剣悟「・・・まじで!?・・・もっかい言わせて まじで!?!?」
颯汰と奈美を見る
直輝「2回言う必要あったか?」(笑)
剣悟「・・・おぉ」
颯汰「お、おぉって何だよ」
動揺、というか照れている。
久美「まぁ、仲良くやんなよ」
直輝「そうそう」
剣悟「噂が実現化したな」
直輝「だれもが認める付き合いだな」
奈美「うーるーさーいー」
颯汰「それよりさ、俺らとはぐれたあと、何してたの?」
久美「・・・え? いや 別に」
剣悟「俺はサッカーがあるの忘れてて、急いで家帰っちゃったぜ」
直輝「んー そ、そうそう」
奈美「じゃあ久美と直輝が二人っきりになったんだ」
久美「そういうこと・・だね」
目が泳ぐ二人
剣悟「ほー で、何してたの?」
直輝「いや、何してたって言うか 何もしてないよ な?」
久美「う、うん」
純粋な質問なのだが自然と久美と直輝を追い詰めていく
剣悟「あ、そうだ 今日さ ※青公で遊ばん?   
※青公=青空公園 学校付近にある大きめな公園 クリスマスの時待ち合わせになった場所。 一般的に青公と略される
奈美「いいねいいね」
颯汰「おーおー あのメンバーで」
直輝「あのメンバー?」
剣悟「クリスマスの時のメンバー」
久美「あたしと、直輝と、剣悟と、颯汰と、奈美?」
奈美「そうそう」
久美「いいよ」
直輝「今日帰り早いしな」
剣悟「よしけってーい 帰ったらすぐな」
奈美「りょうかーい」

朝の会のあと学年集会があり、すぐ下校となった

一番早く青空公園についたのは颯汰だった
颯汰「・・あれ青公って言ったよな」
ベンチに座り音楽を聴き始める
5分後奈美が到着
奈美「あー 颯汰」
颯汰「おぉ」
片方のイヤホンをとり奈美へ目をやる
自転車をとめて颯汰のもとへ駆け寄り腕に抱きつく
奈美「さすがに学校じゃ抱きつけないからね」
颯汰「よせよ」(照笑)
奈美「あははー♪ ・・・なに聴いてるの?」
颯汰「ん?聴いてみ」
外したほうのイヤホンを渡す
奈美「どれどれ・・・ふんふん~ふふんふ~ん♪」
2人は鼻唄を歌っているうちに、聴き入って眠ってしまった。
腕に抱きついたまま。

20分後 剣悟が到着
剣悟「あれ いない・・あ、いたいた」
ベンチの後ろから駆け寄る
剣悟「ごめん 遅れ・・・・・なにこれ 添い寝?」(笑)
奈美はとても幸せそうな微笑を浮かべていた
昔からの願いが叶った奈美は幸せの絶頂だった。
剣悟「・・あー 邪魔できんな」
すると久美と直輝が到着した
久美「遅れた~」
直輝「ごめーん」
剣悟「どうせお前らもイチャイチャしてたんだろー?」
久美「なぁんでよ」
直輝「意味わからん」(笑)
剣悟「見てみろよこれ」
久美「へ?」
直輝「お」(笑)
久美「お、これは写メを撮らないといけないですよね」
剣悟「そうだそうだ」
3人ケータイを取り出す
剣悟「OK」
久美「あたしもー」
直輝「俺も」
剣悟「お、こいつらケータイのストラップおそろいじゃん」
直輝「おぉ ほんとだ」
奈美「サンタのって絶対この前のクリスマスで買っただろ」(笑)
剣悟「右に同じ」
直輝「それ俺の十八番ね」
久美「とられてやんの ざまーみろ」(笑)
直輝「うるせー」
そうしているうちに颯汰が目を覚まそうとしていた
颯汰「ん~~~」
直輝「あ、起きそうだぞ」
奈美「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・ん?」
久美「おっはようございまーす」
奈美「ひぃっ あたしこのまま寝ちゃったんだ」
颯汰「ふぁ~~~~」
直輝「お、颯汰も起きた おーい愛しのフィアンセはもう起きてますよー」
颯汰「うりゅせー・・・はっ! 寝てた!」
剣悟「何だそのリアクションは」(笑)
奈美「まさか寝てしまうとは・・・」
久美「しかも2人そろってね」
直輝「お似合いですぞー」
颯汰「んー 眠い」
剣悟「あ、今からいつもの商店街に行こうと思ってるんだけどー・・・」
直輝「あぁそうなの」
剣悟「おまえも行くんだよ」(笑)
奈美「あぁだったらさ、だったらさ颯汰ん家の喫茶店行かない?」
直輝「そういえば颯汰ん家喫茶店だったよな」
剣悟「そういえば」
久美「へぇーそうなんだ」
奈美「あたしこの前行ったんだけど、すごいおいしいよ!」
颯汰「よせよ」(照笑)
久美「じゃー行こうよ お客として」
剣悟「客としてな」
直輝「客として」
奈美「客として」
颯汰「わぁったよ」

自転車でWINGSへと向かう

颯汰「ただいま」
美冴「おかえ・・あらいらっしゃい」
颯汰「俺が作ることになりそう」
美冴「何を?」
颯汰「フレンチトースト」
颯介「颯汰のフレンチトーストはうまいぞぉ」
直輝「期待していいですか?」(笑)
颯介「もちろん!」
颯汰「それ俺のセリフね」(笑)
剣悟「じゃあ僕はそのフレンチトーストで」
奈美「あたしも」
直輝「俺も」
颯汰「俺も」
颯介「自分で作れ」(笑)
颯汰「・・・気が乗らんなぁ」
といいつつも渋々厨房へ足を運ぶ

いつもどおりの時間にいつもどおりのフレンチトーストが出てきた。
颯汰「おまちどうさま」
颯介「・・・ひとつ多くないか?」
颯汰「・・・俺の分!」
満面の笑みを浮かべる
直輝「とりあえずいただきます」
久美「いただきまーす」
剣悟「・・ます」
颯汰「あれ?剣悟くん、いただきますが聞こえないな」
剣悟「いただきます」
颯汰「よろしい」
久美「・・・うまっ」
颯汰「うまっ」
奈美「自分で言うな・・うまっ」
剣悟「うまっ」
直輝「右に同じ ってかうまっ!」
奈美「右に同じって略した意味ないじゃん」(笑)

美冴「なんか楽しそうなのね中学生って」
颯介「俺らのときと変わんねぇだろ」
騒ぐ5人を見て微笑む2人。


剣悟「あ、そうそう、「YAMMY」って店知ってる?」
直輝「あぁ、久美ん家の近くだろ?」
久美「そうそう、あそこって確か紗詠が手伝ってるんだよね?」
一同「えぇっ!?」
久美「・・え?知らなかったの?」
颯汰「知らんなぁ」
直輝「しらんわぁ」
奈美「知らんねー」
剣悟「それは俺も知らなかった」
久美「あ・・・そういえば・・秘密って言ってたな・・・」
直輝「え・・・」
奈美「秘密じゃないし」(笑)
久美「テヘ 内緒で」
颯汰「ほぉ」
剣悟「チーズケーキが美味くってさぁ~」
颯汰「ほぉ」
剣悟「店のイチオシはショートケーキなんだ」
颯汰「ほぉ」
剣悟「素材にこだわってるらしくてさ、イチゴも新鮮なの使ってて」
颯汰「素材だけじゃぁ意味がない」
剣悟「いやぁスポンジ生地からクリームまで最高だねありゃ」
颯汰「・・ほぉ? それで?」
剣悟「・・・え?」
颯汰「どっちが美味い?」
剣悟「・・・ふぇ?」
颯汰「俺のフレンチトーストとどっちが美味い!?」
奈美「っていうか、剣悟よく喫茶店でほかのケーキ屋の話ししたね」(苦笑)
直輝「しかも子息の前で はははっ 傑作!」(笑)
直輝は腹を抱えて笑う
剣悟「それは確かにミスでした」(苦笑)
颯汰「んで?どっちが美味い?」
直輝「めっちゃ張り合ってるし! 一人で!! あははははっ!!」
笑い転げる
颯汰「お前笑いすぎ」
剣悟「んー・・いい勝負だな ジャンルが違うから判定しにくいけど」
奈美「へぇー そんなにおいしいんだ」
剣悟「うまいぞぉ」
直輝「そうなんだ・・・」

そんな話をしている間に4時を過ぎた

直輝「あぁー しゃべりつかれた」
久美「のどかわいたぁ」
颯汰「ジュース各種90円」
メニューを出す
剣悟「商売上手なやつめ」
直輝「じゃあ俺ミカンジュース」
久美「あ、あたしも」
剣悟「俺コーラ」
奈美「あたしリンゴジュース」
颯汰「はいはーい」
また話し始める

直輝「あ!」
剣悟「うぇぁ びっくりしたな」
直輝「思い出した」
久美「何を?」
直輝「さっきさ、「YAMMY」って店の話、剣悟がしてたじゃん」
颯汰「うん」
直輝「そこのライバル店って言われてるケーキ屋があったんだよ・・・」
剣悟「ほぉ どこ?」
直輝「どこだったか・・よく覚えてないんだけど 確か、名前が・・・ドリーム・・」
奈美「ドリーム?」
直輝「ドリーム・・・せ・・」
颯汰「せ?」
直輝「せ・・っぷ・?」
久美「せ、接吻!?」
笑いがおこる
奈美「接吻ってぇ」(笑)
久美「だってぇ そう聞こえたんだもん」
剣悟「接吻はないな」(笑)
直輝(・・接吻・・・・久美と・・)
ひとり直輝だけ興奮しているのだった

颯汰「んで、ほんとは?」
直輝(接吻・・キス・・えぇ だってまだねぇ・・)
剣悟「おーい」
直輝(んー でもなぁ)
奈美「おーい」
久美「おい」
直輝「はっ」
颯汰「ほんとは?」
直輝「えーとフレンドシップだっけ」
颯汰「え? はじめドリームじゃなかったっけ」
奈美「そうそう」
直輝「あ、そうだそうだ あ! そうだそうだ ドリームシップだ!」
久美「夢の船・・・だよね」
颯介「「DREAM SHIP」知ってるの?」
厨房から颯介が尋ねてきた。
直輝「聞いたことあるだけですけどね」
颯介「あの店は・・・吉田ん家の店だよな?」
美冴「うんうん」
颯汰「母さんたち知り合いなの?」
美冴「知り合いも何も、あたしたちと奈美の両親と同級生よ」
奈美「えぇぇぇ!?」
颯汰「まじで!?」
颯介「マジマジ」
奈美「・・・すごいね」
颯汰「すごいすごい」
剣悟「あ、そっか 颯汰の両親と奈美の両親って同級生だっけ」
奈美「そうだよ」
颯汰「奈美、今度行こうぜ」
奈美「いいよっ♪」
剣悟「ひゅー」
颯介「ひゅー♪」
颯汰「うるせー」(笑)

このとき、なぜか久美だけが小さくため息をついた
が、気づくものはいなかった。

剣悟「仲いいな2人は」
直輝「ほんと」
奈美「それほどでも♪」
颯汰「そのノリ疲れる」(笑)
久美「ハァ」
直輝「っていうかすげーよな イヤホンしたまま寝るとか」
奈美「あんたらが遅いからでしょー!」
直輝「知ィりィますェ~ん」
剣悟「なんだそれ」(笑)
奈美「あれ?久美どうかした?」
久美「・・いや別に」
視線を落とす。
直輝「どうかしたの?」
久美「なんでもないって 気にしないで」
直輝「ん・・あぁ」
颯汰「・・・?」
奈美「・・・?」
颯介「・・・?」
美冴「・・・?」

ガンッっとした音がする
颯汰「イッテェェェエエ!!」
剣悟「どした」(笑)
颯汰「ってぇ なんで笑ってやがる」(苦笑)
直輝「以上なりアクションでしたので」
颯汰「奈美に足蹴られた」
奈美「あ やっぱりあれ颯汰の足だった?」
颯汰「モロ足でしょー」
奈美「いやぁ パッと見ゴミがあるように見えて」(笑)
颯汰「俺の足はゴミですか」(笑)
笑いが起こる

久美「・・ごめん 今日は帰るわ」
奈美「あ、そう?」
直輝「そっか」
剣悟「じゃあな」
久美「いくら?」
颯汰「あぁ 合計450円」
久美「ごちそうさま それじゃね」
直輝「おぉ・・」

バタン! カランカラン

ドアが閉まる
奈美「・・なんかさ、久美変じゃない?」
剣悟「そうか?」
奈美「どう考えても変でしょ!」
颯汰「何か不機嫌っぽかった」
奈美「そう、んでなんか・・んー落ち込んでるって言うか」
剣悟「・・・」
奈美「絶対変だよ」
直輝「・・・俺追っかけてくる」


久美は────

  何を思うのか。