颯汰たちとはぐれた後結ばれた二人。
二人の距離は颯汰たちと変わらないものだった
買ったばかりのペアの帽子をかぶる姿は颯汰たちと重なる印象がある。
直輝「・・・つかれた」
久美「・・・・あたしも」
時計は11時を指していた
商店街を出たところの歩道橋をわたる。
100mほど先にある商店街の入り口が見えた
久美「・・・お?」
直輝「ん?」
久美「あれってさ 颯汰じゃない?」
直輝「えっ?」
焼き芋の屋台に少し隠れているが確かに颯汰が確認できた
そのとなりにはベンチで座ってる奈美の姿が。
久美「・・・なーんだ やっぱりあの二人付き合ってんじゃん」
直輝「・・・っぽいな・・お、あの焼き芋を・・・?」
久美「おぉぉおぉぉ」
直輝「半分こしたぁぁ」
久美「・・・おぉ」
直輝「おぉ」
遠くで仲良く座り焼き芋を食べる二人を眺めて笑っているふたりを見て和む
すると
歩道橋にもたれかかっている二人の後ろから一人の男が声をかけてきた
「誰かと思えば・・・久美じゃねぇか」
久美「!?・・・」
目の色が変わった
直輝「・・? 知り合い?」
久美「・・・直輝」
直輝「ん?」
久美「逃げよう」
直輝の腕をつかんで走りだした
しかし腕をつかまれる
「ここで会えたのもなんかの縁だろ?」
久美「放して!!」
「放すかよ」
離れようとする久美の腕を強く握る男
その腕を直輝が男の腕をつかむ
直輝「おい」
「・・? 誰だお前?」
直輝「誰でもいいだろ 放せ」
「放すか 俺は久美に用があんだよ」
直輝「・・放せって言ってんだろ」
久美「・・・直輝、やめて」
直輝「は?・・うっ!」
振り飛ばされる直輝
ドカンという音が響く
久美「直輝ィ!!」
「フッ クズがでしゃばんな」
直輝「あんま・・ナメんじゃねーぞ」
何かの構えをとる直輝。
「あぁん?」
直輝「久美・・・伏せろ」
久美「え?」
その瞬間男の頬に直輝のハイキックが決まった
「ぬぁっ」
しりもちをつく男
久美はその隙に直輝の後ろに逃げる
久美「・・・直輝逃げよう!」
腕を引っ張り男から逃げた
商店街から遠ざかり街から離れた公園についた
久美「はぁ はぁ ここまで逃げれば・・」
直輝「はー で・・・あいつ誰?」
久美「・・・引っ越してくる前の・・知り合い・・」
直輝「・・・そうか・・ケガない?」
久美「うん それより直輝は大丈夫?」
直輝「あぁ、ちょっと擦りむいただけ」
久美「大丈夫? ごめんね・・・」
直輝「謝んなくていいよ それより俺がキックボクシングやってよかったな」
ニカっと笑う
久美「え!? 直輝、キックボクシングなんてやってるの!?」
直輝「ん・・まぁ」
久美「・・・す、すごい」
直輝「なんだよ」(照笑)
久美「・・ありがとね でも・・・」
直輝「でも?」
久美「あいつとは・・戦っちゃダメだよ」
直輝「・・ちょっと背が高いだけだ・・・」
久美「違うの」
直輝「・・・え?」
久美「・・・今まであいつとケンカして大ケガしなかったヤツはいない」
直輝「どうかね」
久美「ほんとだっ・・」
直輝「現役のキックボクサーの言うことが信じられないのかね?」
久美「だって・・・」
直輝「あいつは典型的な筋肉バカだ」
腕を組んで勝ち誇ったような顔で言う
久美「・・・な・・直輝」
直輝「ん?」
後ろの暗闇から出てきたのはさっきの男だった。
「お前『なおき』ってのか」
直輝「だからなんだよ ここまで追ってくるなんて物好きなヤツだな」
「人の怒りをあおるのは天才的な才能があるらしいな」
久美「やめて」
「久美、お前との話はこいつを潰してからだ」
直輝「・・やれるもんならやってみな」
構えをとる
「・・・」
沈黙の一瞬
「ウラァ」
左ストレートが直輝の腹部をめがけて飛んでくる
体をそらしてよけた が直後のひざが腹部を直撃する
直輝「うはっ」
腹を抱えて後ずさりをする
久美「直輝!!」
「おいおい さっきの勢いはどーした? まぐれか?」
直輝「笑わせんな」
一歩前に出て右ストレートを打つが腕でガードされる
その直後にミドルキックが直輝に飛んでくる
それを左手で受け後ろへ下がる
「なかなかやるじゃねぇか」
久美「直輝! やめて!!」
悲痛な叫びは直輝には届いてなかった
直輝「オラァ!」
上段二段蹴りが炸裂する
「うっ!」
男が後ろに飛ぶ
「・・・チッ」
直輝「本気で行くぜ」
マフラーと手袋、上着を脱ぎ捨て、構えを取ってステップを踏みだす
それからは直輝のペースになっていった
30分に及ぶ薄暗い公園での殴り合いは直輝の勝ちとなった
「うわっ!・・・く・・」
直輝「フン」
久美「・・・」
「ちくしょう」
直輝「もうやめとけ」
「・・・本当の恐怖はこれからだからな・・・」
不可解な言葉を残し、負傷した左足を引きずるように去っていった
静かになった公園で久美が座り込む
久美「・・・こわ・・怖かった・・」
直輝「・・・俺が負けるかよ」
久美「直輝・・」
泣きながら直輝に抱きつく
直輝「・・・イテテッ」
久美「あっ ごめん!」
直輝「そこ蹴られたとこ」
久美「ごめん ・・全部話すね」
直輝「え?」
久美「・・・あいつがどんな人間なのか」
直輝「・・うん」
久美「名前は・・斎藤 星哉(さいとう せいや)っていうの。 年はあたしたちのひとつ上。
・・・あれでもサッカー部のエースだった 去年の・・6月ごろに・・あたし星哉に告白されてね 断ったの」
直輝「・・うん」
久美「それから・・変わったの 乱暴になって どんどん不良になっていって・・・」
直輝「・・・それで」
久美「・・まだあたしに気があるみたいで・・・ それで引っ越す前日にメールが来てね」
直輝「なんて」
久美「・・・・・『これで終わりと思うなよ』って でもまさか・・・ここまで来るなんて」
直輝「・・・でも俺がいれば 大丈夫だろ?」
久美「だけど・・直輝でも・・・敵わないと思う・・」
直輝「今勝ったじゃん いつだっ・・」
久美「星哉なんて・・いいほうだよ」
直輝「へ?」
久美「星哉のグループの中にはもっと強いやつがいる あたしは・・知ってるんだ たまたま今日は一人だったから勝てたけど」
直輝「・・・・久美・・」
久美「・・あ、違うよ 直輝が弱いとか そういうことじゃなくて・・・」
直輝「・・・でも俺が勝てないって言ったよな?」
久美「・・・それは・・でも・・・あたしは・・直輝にケガとかしてほしくないし あいつらとは極力関わらないでほしい 勝つとか負けるとかじゃなくて」
直輝「・・・わかった でも久美に手を出したら 容赦はしないから」
久美「うん・・」
直輝「大切な人を守れないで何がキックボクサーだよ」
久美「・・・直輝、大好き・・」
砂がついた直輝に抱きつく久美
直輝は心に誓うのだった
守り抜くと────────
その翌日
4人とも特に予定はなく
昨日の疲れから爆睡していた
朝9時・・・
颯汰が起床する
ケータイにメールが2件
1件は奈美からだった
『今日はありがと! ほんっとに楽しかった!! 前はなんだか微妙な感じだったけど仲良くやっていこうね またフレンチトーストお願いします!」
2件目は直輝から
『発見してしまったぞΨ(゜∀゜)Ψ 』
颯汰(・・ま・さ・か・・)
返信する
『・・・な、何を?』
返事が来る
『焼き芋・・・』
颯汰「・・・バレたぁぁぁぁぁ ・・・ってことは久美も多分知ってるよな・・」
そうしているうちに喫茶店の開店時間が近づく
両親は喫茶店の経営あたるので朝食は開店前に済まさねばならない
颯汰「母さん めしー」
一回に降りる
美冴「はいはーい」
ちなみに朝食は和食というのが颯汰のポリシーである
そうしている間に開店時間を迎えた
まもなく最初の客が入ってくる
なんと櫻井一家だった
修平「おっす お、颯汰じゃん おっはー」
颯汰「おっはー」
颯介「いらっしゃ・・ なんだ修平か」
風子「おっはようございまーす」
颯介「おおお なんだいそろいにそろって」
奈美「おはようございまーす お、颯汰じゃん」
颯汰「おう おは」
奈美「おっは」
美冴「お、なになに 一家そろっちゃって」
そして最後に入ってくる背の高い青年は奈美の兄の櫻井 剛(さくらい ごう)だ
吉崎高校1年生。 柔道部 奈美の2つ上で、颯汰とも仲がいい。 通称剛ちゃん
剛「うぃーっす お、颯汰がいるじゃないの」
颯汰「おお 剛ちゃんも着たんだ」
剛「久々に※WINGSのメシが食いたくてな」 ※WINGS=喫茶店の名前
4人テーブル席に腰掛ける
颯介「はい注文は?」
風子「あたしモーニングセット」
剛「俺はフレンチトーストで」
奈美「あたしもフレンチトースト」
修平「じゃあ俺は・・・」
颯介「えーっと モーニングセットとフレンチトーストが2つね」
修平「ちょーっと ちょっと 俺忘れてるよ?俺!」
颯介「え?」
修平「俺モーニングトーストセット」
颯介「了解~ 美冴ー モーニングセットよろしくー」
美冴「はいはーい」
颯介「颯汰はフレンチトーストな」
颯汰「うぇ!?」
奈美「おー 颯汰が作ってくれるんだ」
剛「ほー 楽しみだなぁ」
颯汰「・・・わぁったよ 作ればいいんだろ」(笑)
剛「待ってました!」
牛乳、卵、バニラエッセンス、砂糖などなどを加えたボールにパンを浸したあとフライパンでこげ色がつくまで焼き、トッピングをしたらWINGS特性フレンチトーストの完成。
5分あまりで出来上がる
颯汰「お待たせ」
奈美「おおー 前よりうまそうじゃん」
一瞬沈黙が走る
颯介「え? これつい最近出したメニューだけど奈美ちゃん食べたことあるっけ?」
焦る奈美と颯汰
颯汰「あ、俺がメニューに提案したじゃん その前に試作品一回奈美に食ってもらったんだ」
奈美「そ、そうそう!」
颯介「へぇ そうだったの」
美冴「そうしてるうちにモーニングセットできたよー」
風子「おおー いつになくうまそうじゃない」
美冴「なーに言ってんのよ いつもうまいわよ」
風子「こりゃまた失礼」
剛「いただきまーす」
風子「それじゃあたしも」
奈美「いただきまぁす」
風子「んー この目玉焼きいいね」
奈美「え!? 母さん目玉焼きにはソース派じゃなかったっけ?」
風子「ん? しょうゆの良さがわかったのよ ふふふ」
剛「ほー 俺は前からしょうゆだったけどな おい颯汰 これめっちゃうまいな」
奈美「うん すっごいおいしくなってるよ」
颯汰「そりゃあそうだ 俺が作ってるんだからなー」
颯介「颯汰が俺に料理の味で勝てるのが唯一フレンチトーストだからな」
颯汰「そのうち父さんの倍腕のいい料理人になってやるよー」
美冴「どうかなー?」
愉快な朝を迎えた。
カーテンを開けると朝の光がまぶしく差し込む
奈美「今日は気持ちよく晴れたね」
颯汰「そうだなー」
颯介「ほい モーニングトースト」
修平「きたきたー うまそうだねぇ」
すると客がもう一人入ってきた
颯汰とも親交がある常連さんで大森 大吾(おおもり だいご)という25歳の会社員。
明るく、まわりを和ませる性格で週に3回はWINGSで朝食をとる。
大吾「ウィス」
颯汰「おお 大吾くん」
大吾「おっす・・あ、クリーニング屋さんの・・・」
修平「あぁ 大森さんか おはよう」
大吾「おはようございます」
颯介「修平んところのクリーニング行ってるんだ」
大吾「あぁ うん たまにね 櫻井さんとは友達なんだね」
美冴「中年4人はみんな小、中学校の同級生で、その女の子と颯汰が同級生なの」
大吾「おおー そうなんだ あ、じゃあいつもので」
颯介「へいよ」
大吾「そうそう、スタンプカードが12枚目今日で終わるよ」
修平「12枚って 相当来てるんですね」
大吾「えぇ 週に3回はここで朝食食べますからね」
颯介「この前なんて彼女連れてきたからね」
美冴「そうそう、『ここおいしいんだよ』なんて言っちゃって」
大吾「やめてよー」(笑)
奈美「あーおいしかった」
剛「おせーよ」
奈美「味わって食べてたもん」
颯汰に目をやる
目が合う
微笑みを贈る
奈美「颯汰、フレンチトーストおいしかったよ」
颯汰「何言ってんの 当たり前だろ」
美冴「そうそう、前から気になってたんだけどさ」
颯汰「ん?」
美冴「あんたたち付き合ってるの?」
颯介「俺も前から思ってた」
修平「同じく」
風子「あたしも」
奈美「・・・え・・・・・」
颯汰「・・ん・・・・・」
風子「どうなの!?」
二人目を合わせる
奈美「ん・・・ まぁ・・・うん・・・」
颯汰「・・・ん・・・ん・・」
颯介「こりゃあ図星だな」
修平「図星だ」
美冴「そうみたいね」
大吾「そうなんだ」
颯汰「やめろよ大吾くんまでー」
修平「ま、颯汰なら安心だ 仲良くするんだぞ」
この一言がなんだか嬉しかった。
家族にも認められた関係を築けた瞬間だったから・・・。