『粛正の扉から5』 | another☆quality

『粛正の扉から5』


2001/1/10

葛西に着いたのは 
風が冷たさを増し始めた薄暮の中…

数分遅れてやってきた君は 
駅前の交番脇に車を止めると
そこから 俺に電話を掛けてきた
『このまま あたしの車で台場まで行かない?』

誘われるまま俺は 
GTSの助手席に乗り込んだんだ

やけにシンプルな車内は 君の香りで満ちていて
街灯の真下を擦り抜ける度 
浮び上がる笑顔と共に匂い立ち
R357の渋滞に溢れかえる喧騒さえ 
愛しさに変えていた

パレットタウンの 観覧車正面に車を停めると
洋服が見たいと言う君に付き合い 
俺達はヴィーナスフォートまで歩くことにしたんだ

少しだけ尖った風の肌寒さに 
お揃いのコートを着込むと
軽く君の手を握り 俺のポケットに滑り込ませた
握り返す君の体温を左手に 
絡み合う指先に君の柔らかさを感じていたんだ
これが ある意味ずっと俺が探し続けていた 
優しさってものに一番近しい
感情なのかも知れないなって…
そんな風に考えながら 
君の手を引いていたんだ…

お気に入りの店を巡り 
楽しそうにはしゃぐ君を見ていると
なんだか 俺まで嬉しくなってきちゃって…
俺とあまり変わらない 
長身の君があてがう服は
どれもが似合い過ぎていて
俺には 何故かそれが誇らしくさえ思えたんだ

錯覚だと一言で片付けられはしない この感情

今確かに ここにいるふたり
出来る事なら…

優しい雰囲気のアウターを 数点買い求めた君を
俺は食事に誘ったんだ

レインボーブリッジを見下ろす 
アクアシティ〇階のレストラン
絶え間なく交差する光の群れを見つめながら 
俺達は互いを語り合い
何度目かの視線を交差させると 
撓いもなく素直に微笑み合えたんだ

ほんの僅かでも解り合えたこの現実が 
君の笑顔を素敵に映し出す様で…

石畳の歩道の上

ショーウインドーの中のふたり 

繰り返すくちづけ

誰の干渉も在り得はしない 
君との… 初めての夜…

匂い立つ君の香りが 
変わらずそこにありますよう…