アバズレゴキブリ不倫保育士ゆうこと夫の、ある夜のライン。
夫。
「奥さんの“大変だったアピール”を何十分も聞かされた。」
大変だったアピール。
「愚痴」のことである。
仕事と家庭そっちのけでライン三昧、あわよくば密会を企み実行するバカ二人。
私は仕事をしながら一人で家事、育児。
その日何が大変だったか、私は夫に愚痴をこぼしてはいけなかったらしい。
不倫女ゆうこはそれに対し、
「大変だったね。」
は?
大変だったね???
奥さんの愚痴を旦那さんが聞く。
旦那さんの愚痴を奥さんが聞く。
夫婦とはそういうものではないのか?
それともお気の毒なことに、ゆうこ夫婦は愚痴を言い合える仲ではないのかしら?
私はアバズレゴキブリ不倫保育士ゆうこへのメールにこう書いた。
私の愚痴を聞かされているバカに対して、あなた、「大変だね」って言ってましたけど、夫婦なんだから、お互いに愚痴を言い合ったり聞き合ったりって、当然のことではないですか?
もしかしてAさん(ゆうこの名字)、“ジュンくんに愚痴っていいのは、ジュンくんに愛されてるこの私。ジュンくんは愛してもいない嫁の愚痴を聞かされて、大変ね”ってことかな……とか、(以外省略)
更に夫。
「ゆうこちゃんの愚痴、いつだって聞くよ!」
私はもう、必要最低限の連絡事項と不倫のこと以外、話すのをやめた。
夫はそこでやっと気づいたらしい。
私が今までしてきた愚痴などほんの僅かで、どれだけ私が毎日楽しい話をしていたか、どれだけ夫を笑わせていたか。
夫は
「なんて酷いことを書いたのだろう」
「自分があまりにもバカで、失ったものの大きさにびっくりしている」
と言った。
では逆に、夫が私に愚痴ることはなかったのか?
夫はよく、私に仕事の愚痴や相談を持ちかけてきた。
しかしゆうこには、仕事の愚痴はしなかったらしい。
「話したって分からないだろうから。」
と夫は言った。
仕事の愚痴を言うには、仕事の内容から登場人物まで、一から説明しないと分からないだろう。
さすがにそれは面倒だったようだ。
私に言わせれば、面倒とかそんなことより、不倫が私にバレた時に「夏美にも話して墓場まで持っていく」などと言ったような頭の悪い女には、夫の仕事のことなど、話しても理解出来ないと思うよ。
これまで私は夫の仕事の愚痴を聞いて、アドバイスをすることもあった。
しかし私との会話が連絡事項と不倫の話だけになってしまった夫は、私からのアドバイスを受けられなくなってしまった。
それなのに夫は、仕事がどうにも大変で、私の意見が聞きたくて相談を持ちかけてきた。
優しい私は一緒に考えた。
「こうじゃない?」
「あーしてみたら?」
など、とにかく問題が難しくて、あまり良い考えは浮かばなかったが、思い付く限りの意見を出した。
……でも、フラッシュバックが起きる。
「大変だったアピール」という言葉。
私は夫に言った。
「ここのところあんた、なんか調子にのって色々相談してきたけど、私の愚痴や相談は“大変だったアピール”って言ってたよね?」
「嫁の愚痴は聞きたくない、ゆうこちゃんの愚痴は大歓迎!
そんなラインのやり取りが私にバレてるのに、自分の愚痴は私に聞いてもらおうってか?
ふざけんな!
“仕事が大変ですアピール”、しないでもらえます?」
「だいたいあんた。
あんたのことを分かってくれるのは、あの女だけなんでしょ?
頭の悪いあの女に聞いてもらえば?(笑)」
そう言いながら私は、夫がクソ女に仕事の相談をしなかったことには、なんだかほっとした。