ある日、事件が起こった。


朝ご飯を終えて、食器を下げに台所へ行った私は

ビニール袋に嘔吐していた。

ふと人の気配を感じて振り返ると、

祖父が立っていたのである。

祖父はただただそこに立っていた。

私は、一瞬何が起こったのか理解できずに

自分の部屋に駆け戻った。


布団をかぶって、がたがたと震えた。

消えてしまいたいと思った。

死にたい死にたい死にたい

その言葉ばかりが頭の中で連呼される。


私は思わず、その言葉を、友人にメールした。


駅までは毎日祖父が車で送ってくれていた。

その日も、祖父はいつも通りに車に乗った。

私の嘔吐には触れず、何もなかったかのように

普段通りに振る舞うのだった。


駅から同じ電車に乗る友人は、

私のことが心配でたまらない様子で待っていてくれた。

ここで、私は初めて、

友人に自分の病気を打ち明けることになる。


私の話を聞き終えた友人は、

気づかなくてごめん、と言った。

彼女の家は代々医者だった。

しかし彼女は親の敷いたレールの上を歩くのは嫌だと

医者にだけはならないと断言していた。


その彼女が

私、医者になる

と言った。


医者になって、華を絶対に治してみせる。


そう言ってくれたのだった。