これまで、1回目では問題は表面的ではなくその「システム全体のつながりにあること」、そして2回目に人が何かをみる時には必ず偏見、バイアスがかかる事、3回目として、個人、組織として進めていくためにも目的、パーパスドリブンが大切だとお伝えさせていただきました。

 

第3回までは、ビジネスのベース、基本となる考え方を中心にお伝えしてきましたが、4回目からの3回分は自分と相手の感情や関係性、パワーが持つ影響力や、相手へ伝えるをテーマにお伝えしていきます。

 

まず第4回目のテーマは、「自分と相手の気持ち、感情を正しく理解する」ためには何が必要かをお伝えしていきます。

 

  自分の感情とはそもそも何か?

初めに自分自身である「あなた自身」にフォーカスして話をしてみましょう。まずは何より「自分自身を知ること」(Self Awareness)が相手を知る事への第一歩となります。

 

ここで、「感情」「気持ち」の違いについてお伝えします。

「感情」とは突発的に起こる心情で本能的に発生します。システム思考でいうところのシステム1の直感的に近い状態です。「感情的になって怒る」とはまさに突発的であり本能的であると言えます。対して「気持ち」は時間をかけて芽生えていくものです。時間の経過と共に変わることもあります。初めて会った時はいい人だと思った(という気持ち)けど、最近はちょっと...というのも変化した気持ちですね。突発的ではない部分も考えるとシステム2の思考に近い状態です。

 

※システム1、システム2の復習は第1回をご覧ください。

 

続いて「感情」には種類があります。1980年にロバート・プルチック英語版)は「感情の輪」をというものを提示しました。これは8つの基本感情と16の強弱派生、及び8つの応用感情(ダイアド)から成り立っています。

上の図を見て、皆様自身がよく感じている感情はありますか?例えば「怒り」や「恐怖」といった感情は、日常でもあるのではないでしょうか?

 

先ほどお伝えした通り感情はより直感的です。よって何かの内的、外的な影響によって自分自身の感情が変化します。これを感情の俊敏性(Emotional Agility)と言います。人間怒る事もあれば、嬉しい時も、また動揺することもあります。

大事な事は、自分自身が今どの感情を抱いているか、それを客観的に理解する事です。

 

自分自身の感情を理解するには・・・

1. 自分自身の感情にラベルを張る(怒り、悲しみ、憎悪など)

2. その状態を自分自身で認識する(今自分はこの状態なんだと理解する)

3. 目的が何かに立ち返る(なにがしたかったのかを把握)

4. 判断する(正しい行動を判断する)

 

が一つのステップとも言えます。

 

  「感情」に影響を与えているものは「価値観」

それではその「感情」は、自分自身の何に影響されているのでしょうか?それは自分自身の「価値観」(Value)です。価値観とは自分が大切にしている、軸としているものであり、自分を正しい道に示してくれるものです。

 

 

例えば、「自由」という価値観を軸に持っている方がいます。その方が上司から、仕事を細かく指示されたらどういう感情が芽生えるでしょうか?自由にさせてもらえない事での「怒り」や、信用されてないんだなという「不安」、そういった感情が芽生えるかもしれません。

 

ですのでこの自分の中で軸としておいている価値観が自分の感情に直結するという事になります。

 

この大切な「価値観」ですが、これまで私が接して来た方は自分自身の価値観(Value)がわかっていない方が多い印象があります。ぜひこの機会にご自身の中にある軸、価値観が何なのかを探ってみてください。

 

まずは自分自身を正しく理解することが、相手をしるための第一歩となるのです。

 

 

  相手の感情を理解するためには?

それではここでようやく、対象を「相手」に変えたいと思います。ここまで自分自身にフォーカスをしてきたのは、自分自身のことを正しく把握できていない状態では、「相手」の事は絶対にわからないためです。

 

そして相手の感情を理解するために、最も必要なスキルは「共感」です。一言で言っても共感にもいくつかの種類があります。

 

 認知的共感(Cognitive Empathy)

相手の話を受けて自分の経験に基づき判断、感情を理解している状態。アドバイスに近い共感。

 

 感情的共感(Emotional Empathy)

相手対して「感情移入」する、またはしている状態。映画を見て涙するなどの共感に分類。

 

 共感的関心(Empathic Concerm)

相手に対して、自分がなにかしてあげたい、助けたいと思う気持ちの状態。

 

このように共感にも、いくつかの種類があります。共感の種類を状況状況に応じて使い分けていきましょう。

 

  相手への共感で気を付ける事

皆様は相手の感情を決めつけている事はありませんか?私はあります(笑)

どうしても相手の感情を理解する上で、自分の経験則(ヒューリスティック)思考の偏り(バイアス)のある状態で相手を見てしてしまっています。

 

相手への共感の第一歩は、「相手の感情を決めつけない」という事です。そしてもう一つ、相手の感情や気持ちが「なぜそうなっているのか?」その背景を考える事も共感として非常に重要であり、相手を理解する第一歩となります。

 

ここでお気づきの方がいらっしゃるかもしれません。まさにこの経験則やバイアスは第2回目、そして感情を引き起こした原因を構造的に、つながりとして見る事を考えるのは、第1回目のシステム思考そのものです。

 

 

このシステム思考は全ての前提となる考え方ですので、ぜひご参考に!
 

そして最後に、「相手の感情を理解する必要がない、自分の意思だけでよい!」という考え方も一理あると思います。ここではすべてのケースで感情を理解するというのではなく、場面場面での使い分け、そのバランスが必要だと考えています。

 

例えば、全体での意思決定であれば、認知的共感を主体に会話するほうがよいでしょう。逆にメンバーとのワンオンワンでは感情的共感をメインに使うと思います。このように状況や場面で使い分けるのも共感の一つだと思います。

 

  まとめ

 自分自身の価値観を正しく理解する事が相手を理解する第一歩

 

 自分自身の感情がどの状態にあるかを正しく把握する

 

 相手への共感は決めつけない、状況により共感を使い分ける

 

これが相手とのより関係性を築く一歩目だと思いますので、ぜひ実践してみてください。次回は、組織がもつパワーダイナミクスのメリット、デメリットを中心にヒエラルキー型の組織の注意点や、心理的安全性の担保についてお伝えします!