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Anon.のブログ

いずれ闇に消えるものなら
夢や記憶の欠片を拾い集めて
その色彩をガラス玉にどろりと流して
トンボ玉をいくつもつくろう

母と伯母二人、姉、わたしの五人で登山電車に乗って山を登ろうとしている。母と一人の伯母は車椅子である。どうしたわけか母が急に機嫌が悪くなる。伯母たちはいつも磨きのかかったきれいな靴を履いているのに、自分は粗末な部屋履きであることが面白くないらしい。数十年前の子供時代にも、この姉妹の間には同じ場面があったに違いないとわたしは思う。

山に向かう電車の窓から、山の稜線の上に広がる瑠璃色の空が見える。空の中に巨大な白い円形の物体が浮かんでいる。それは月ではない。円の中心からパラソルの骨のように放射状に広がる筋があり、人工物だということがわかる。暮れ始めた空の中で、物体の表面の日の当たる部分は薄桃色、影になった部分は青白く見える。気象観測用の気球のようだが、稜線の上をボールが弾むように上下動を繰り返す物体は、視界を圧するほど大きかった。

家に帰ると宅配便の配達が来た。大きな段ボールの箱に人の頭ほどもありそうな果実がごろごろ入っている。乾燥して白い粉を吹いた硬い果皮のところどころが縦に裂けて、松脂のような蜜が滲みだしている。そのせいで、両手に抱えたボール箱の底が濡れてべとべとしていた。

誰がこんなものを送ってきたのかと、伝票に書かれた送り主を確かめると、それはAからの荷物であり、メキシコから発送したものだった。Aはメキシコに渡航し、現地でパンデミックに巻き込まれて帰国できなくなっているらしい。いつかAに会うことがあったら、ソル・フアナの話をしようと思う。