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Anon.のブログ

いずれ闇に消えるものなら
夢や記憶の欠片を拾い集めて
その色彩をガラス玉にどろりと流して
トンボ玉をいくつもつくろう

監督・脚本 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー


食い詰め者が集まる南米ベネズエラのラス・ピエドラス。向こうには何かがある。そんな思いに駆り立てられて、一攫千金を求めてヨーロッパや北米から来た男たちは、そこには何もないことを知る。職も得られず、故国に帰る金の工面もつかないまま、はげしい照り返しを避けて、日影に屯する毎日。


フランスから来たマリオは、同郷のジョーと知り合う。ジョーはアメリカ人の仲間とつるんで麻薬の密売で儲けていたが、今は老いを迎えつつある。仲間のアメリカ人、オブライエンはベネズエラで石油会社の経営者になっていた。マリオとジョー、それに肺病やみのイタリア人ルイジ、正体不明のビンバたちは、酒と喧嘩に明け暮れる。食堂で働くリンダはマリオに惚れていた。


ラス・ピエドラスから五百キロ離れた油田で大火災が発生した。経営者のオブライエンは、ニトログリセリンを使って火災を消し止めることを思いつくが、わずかな衝撃で爆発する爆薬を運搬する特殊装備の車両もなければ人員もいない。ラス・ピエドラスに屯する食い詰め者たちをドライバーとして雇い、通常装備のトラックでニトログリセリンを運ぶしかなかった。


マリオ、ジョー、ルイジ、ビンバの四人が採用される。報酬は二千ドルである。四人はニトログリセリンを積載した二台のトラックに分乗し出発する。闇の中、目を光らせたイノシシのような車体がサイレンを唸らせて進む。向かう先の道路は、そのほとんどが未舗装路である。


マリオはジョーと組み、ジョーがハンドルを握るが、背後の荷台に積まれたニトログリセリンから受ける恐怖と緊張から、竹林の中で体調を崩してしまう。マリオはルイジとビンバを先行させ、ジョーに代わってハンドルを握る。


路面に刻まれた襞が、風の向きによって風紋のように変化する。ともすればバランスを崩しそうになる悪路を慎重に進む。二台のトラックは高地に至る。狭い幅員の山道で、方向転換のために設けられているのは崖の上に張り出した木の跳ね橋である。トラックをバックさせ、跳ね橋の先端まで後退し発進させる。跳ね橋の木材は老朽化して、ところどころに穴が開いている。目の下は広大な乾いた斜面である。


マリオとジョーのトラックは、腐朽してふかふかになった木の床にタイヤを取られて立ち往生する。バックするトラックを誘導していたジョーは、危うく跳ね橋から転落しそうになる。恐れをなして逃げ出し、斜面の岩陰に隠れるジョー。残されたマリオは、小枝の束を後輪に挟み込み、それを取っ掛かりにしてトラックを山道に前進させる。トラックの背後で斜面を崩れ落ちて行く跳ね橋。


マリオは何もしないジョーを詰るが、ジョーは二千ドルの報酬は恐怖に対する報酬でもあるのだと呟く。山道をさらに進むと、途中に巨大な落石があり、路を塞いでいる。先行していたビンバとルイジは、荷台のニトログリセリンを使って落石を爆砕しようとする。岩に深さ八十センチの穴を穿ち、ニトログリセリンを流し込む。穴の上にハンマーを吊るし、導火線に火を転じる。導火線を伝って這い上った火がハンマーを吊るした紐を焼き切り、穴の上に落ちたハンマーが岩を叩く。その衝撃でニトログリセリンが大爆発を起こす。吹きあげられた石片が降り注ぎ、退避させたトラックのニトログリセリン容器を掠めて落ちる。緊張が解けて、崖の上から並んで立ち小便をする男たち。


ビンバは助手席で髭を剃る。彼は戦争中、ナチスの捕虜となり塩山で働かされていた。ビンバの父はナチスに処刑されるとき、シャワーを浴びさせろと要求した。いつも清潔にしていろというのが家訓だった。無様な顔で死ぬわけにはいかないと、ビンバはルイジに言う。


ジョーは助手席で煙草を巻く。開いた車窓からいきなり風が吹き込み、ジョーの手元から煙草を吹き飛ばす。白い閃光が走り、前方で大爆発が起こる。黒煙と火柱が高く上がる。飛行機が離陸した後のように、ビンバとルイジのトラックの轍が途切れていた。前方には壊れた送油管があり、石油を間歇的に噴き出して油の池を作っていた。


石油の池を通過しようとするマリオ。池に腰まで浸かって深さを測りながらトラックを誘導していたジョーが木の枝に足を挟まれて動けなくなる。停車すればトラックはねばつく池にはまってしまう。マリオはジョーを轢き殺す覚悟でトラックを前進させる。ジョーはトラックに片足を轢き潰されてしまう。マリオは自ら油の池に入り、ロープを使ってトラックを池から引き出すことに成功する。


油まみれのマリオとジョーが油田に近づく。油田から吹きあがる火炎を見ながらジョーは死ぬ。巨大な火の壁と格闘する人々の喧噪の中、マリオのトラックが到着する。


マリオの帰還を知ったリンダは歓喜して酒場の男たちと踊り狂い、気を失う。マリオは報酬を獲得し、有頂天になって帰路につくが、その途上でトラックごと崖から転落して死ぬ。


パリの第五区に、ギャランド通りという古い通りがある。マリオとジョーは、かつてそこで暮らしていたことがあった。その頃、ギャランド通りには街路に沿って高い石塀があった。石塀の向こうに何があるのか、ジョーは知らなかった。マリオは子供の頃、石塀に上ってみたことがある。石塀の上に立ったマリオの目の下に広がっていたのは、殺風景な空き地だった。